5月20~22日、京都府京丹後市を中心にJRC全日本ラリー選手権の2022年シーズン第4戦『YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg(ラリー丹後)』が開催され、最高峰のJN1クラスに参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは、勝田範彦/木村裕介組(トヨタGRヤリスGR4ラリー)が総合3位で表彰台を獲得した。また、チームメイトの眞貝知志/安藤裕一組(トヨタGRヤリスGR4ラリー)が総合6位入賞を果たした。
前回ラウンドのJRC第3戦久万高原で勝田組が今季初優勝を飾ったTGR。この第4戦では2022年シーズンから導入された新規定“サクセスバラスト”のルールにより、勝田組のトヨタGRヤリスGR4ラリーには規定最低重量にプラス50kgのウエイトが追加された。
トヨタチームはこれに対し、車両バランスを考慮しながら重量を調整。それでも重量増の影響は避けられず、勝田はラリーを前に「やはりクルマに色々と影響を感じています」と述べた。
そんななか迎えたラリー初日、勝田はスムーズなターマック(舗装路)が特徴であるラリー丹後のステージでミスのない走りを披露し、総合2番手の奴田原文雄(トヨタGRヤリス)から2.8秒差、同3番手につけた福永修(シュコダ・ファビアR5)とわずか0.1秒差の4番手で続く。
翌日の最終日、表彰台を狙う勝田/木村ペアは午後のループに設定されたSS10でステージ2番手タイムを刻み総合3番手に浮上。残る2本SSでも後続を引き離し、総合3位表彰台を獲得してみせた。
初日を総合6番手で終えたチームメイトの眞貝/安藤組は、SS9でステージ3番手タイムを記録する走りをみせつつ、初日レグ1の順位を守って総合6位入賞という結果でラリーを終えている。
「同じGRヤリスをドライブする奴田原文雄選手/東駿吾選手(総合4位)とは、初日の段階から2.8秒差という接戦でしたね」と語るのは、4戦連続ポディウムフィニッシュを決めた勝田。
ディフェンディングチャンピオンは逆転を果たしたレグ2でのペースアップについて、ドライビングの変化によりクルマに掛かる負担の軽減が影響したとみている。
「気温が上がった最終日は、走らせ方を変えて挑みました。なるべく高いギヤを使うことを心がけ、ギヤチェンジを極力減らしたことでクルマにかかる負担が軽減され、タイムにつながったのかもしれません」
「前戦(久万高原ラリー)の勝利により50kgのウエイトを課されていましたが、チームの皆さんが可能な限り低重心になるよう、バランスを考えて搭載してくれました。今回の3位は、その努力の賜物だと考えています」
■再走ステージでのペースアップが今後の課題
チームメイトの眞貝は、「2日間、天候やコンディションが安定するなかでトップ6の選手と競った展開に持ち込めたことは、私自身にとって収穫になりました」とコメント。
「1年前のこのラリーも同じく6位でしたが、内容はとても良くなっており、チームやサプライヤーの皆さんと一緒にクルマの開発を続けてきたことの成果が、良いタイムとして表れていることに充実感を覚えています」
「ただ、同じSSを2回走る場面では、トップ6の選手の皆さんが2回目の走行で大きくタイムアップをするなか、私はそれについていくことができていませんでした。これは今後への課題としてとらえています」
この他、TGRチームの升田メカニックと新井エンジニア、さらにGR Garage京都伏見より今戦のチームメンバーに加わった西田メカニックのコメントは以下のとおりだ。
■升田孝輔(勝田号メカニック)
「現在は勝田選手の車両整備をするメカニックとしてチームに参加しています。今大会では勝田選手のクルマにウエイトが搭載されましたが、50kgという重さを、いかにドライバーやクルマに負担をかけず、バランス良く配置すべきなのかを考えました」
「もともとは試作部という部署で開発車両の外板やボディを組み立てたりする板金関係の業務に携わっていましたが、今ではエンジンや足まわりの整備もフォローしています。チームには色々な専門分野をもつスタッフがいるので、さまざまなことを吸収し、次のメンバーにもそれらを伝えられるようにしていきたいと思っています」
■新井政行(エンジニア)
「4WDの制御、クルマ全体のデータ解析を担当しています。今大会勝田選手は、プラス50kgのウエイトハンデでの走行となり、ドライバーにもクルマにも非常に厳しい環境でした。事前評価で良かった4WDセッティングが本番ではさらに違ったものが合っていたりと、ラリーという道や環境が刻々と変化するレースの奥深さをさらに感じました」
「眞貝選手に関しては、クルマとのマッチングが良くなっているという実感があります。勝田選手とドライビングを比較し、走らせ方も変化を続けている点は、データをシェアできている強みと言えるでしょう。もっといいクルマづくりに向け、天候や道の環境などにしっかりと適応すべく、今回得られたデータを解析し、次につなげていきたいと考えています」
■西田匡嗣(GR Garage京都伏見)
「眞貝選手の車両整備を行うメカニックとして、主に左後輪のブレーキや足まわりの点検を担当しました。弊社もTGRラリーチャレンジに参加しているので、競技のおおまかな流れを理解したうえでチームに合流できましたが、実際の作業は点検ひとつにしてもレベルが高く、オイル交換なども素早く確実にできるよう、ノウハウが確立されていました」
「また、ドライバーの方々は、クルマに対する些細なことでも気づかれます。それらを素早く情報収集して、作業できるよう準備していた点が印象的でした。私たちも普段から心がけてはいますが、たとえばお客様から指摘された不具合を直すだけでなく、再発防止や予防的にももっとやるべきことがあると感じました」
「今回のような機会は、もっと若い人たちにも経験してもらい、彼らの視点で感じたことを伝え、今後に活かしてほしいと思います」