話題のミニバン、トヨタの新型ノア/ヴォクシーは2021年12月に先行受注をスタートし、1月12日までの事前予約数は3万1500台と好調だ。
対してライバルであるホンダの新型ステップワゴンは今年2月に先行受注をスタート、発売までに2万台を目標としている。日産セレナは年末頃にフルモデルチェンジとなる。
このミニバン三つ巴販売競争の行方について、流通ジャーナリスト 遠藤徹氏が各社セールスマンの証言も踏まえながら予測、またそれぞれの魅力について紹介する。
文/遠藤 徹、写真/TOYOTA、HONDA、NISSAN、ベストカー編集部
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■好調な滑り出しを見せたトヨタ 新型ノア/ヴォクシー
新型ノア/ヴォクシーは1月13日に発売したわけだが、昨年12月8日に事前の予約受付をスタートさせた。公表された月間販売計画はノアが8100台、ヴォクシー5400台、合計1万3500台だった。
これに対して1月12日までの事前予約実績は3万1500台と月販計画の2.3倍強であるから、まずは好調な滑り出しといえる。
昨年12月上旬現在時点の納期は今年3~4月(ガソリンNA車3月、ハイブリッド車4月)であったのが、今年1月下旬現在で6月とさらに先送りとなっている。
発売1カ月後には5万台以上に達する見通しとなっている。現在までのところはノアとヴォクシーの受注割合は6対4と、ノアがリードしている状況にある。
新型ノア/ヴォクシー好調の要因となっているのはトヨタの新しいクルマ作りの考え方である「TNGA」を採用した新開発のプラットフォーム、クォリティアップ、使い勝手の向上、最新のデバイス採用によるトヨタセーフティセンスの進化、1.8Lハイブリッドに従来の2WD車のみに加えて4WD車を設定、エクステリアデザインではフロントマスクを中心に各々さらに強い特徴分けをしたことなどが挙げられる。
■ホンダ ステップワゴンは2万台の先行受注達成を目指して値段や車両詳細を少しずつ公開
これに対して新型ステップワゴンは昨年12月にアウトラインを公表し、最近までに少しずつ商品内容を明らかにしているが、2月4日には先行受注をスタートさせた。
正式な発表、発売は5月末になる見込みである。発売までに2万台の事前受注台数達成を目指している。
新型ステップワゴンの価格はエアーのガソリン車が299万8600円(2WD)/324万600円(4WD)、ハイブリッド車が338万2500円(2WD)で、スパーダのガソリン車が325万7100円(2WD)/347万7100円(4WD)、ハイブリッド車が364万1000円(2WD)。
プレミアムラインはガソリン車が346万2800円(2WD)/365万3100円(4WD)、ハイブリッドが384万6400円(2WD)。
これ以外に8人乗り仕様で金額が異なるほか、オプション装備や諸費用が加算された価格が総支払額となる。
現在までわかっている商品概要は、全車の全幅を1750mmと3ナンバーサイズに拡大、クォリティアップ、使い勝手の向上、安全対策強化、前モデルで売りのひとつとなっていた「わくわくゲート」を廃止し、リアデザインの改善、パワーユニットは1.5Lターボ&2Lハイブリッドを継続、ハイブリッドは引き続き2WD車のみで4WD車の設定はない、などとなっている。
シリーズ構成は標準が「エアー」、上級&スポーツは「スパーダ」でスパーダのさらに上級バージョンとして「スパーダプレミアムライン」を設定する。
このスパーダプレミアムラインは昨年末に生産中止になったオデッセイの代わりになる上級バージョンで2列目シートにシートヒーター、オットマンを装備、タイヤはエアー&スパーダの16インチに対して17インチを履いている。
■唯一シリーズハイブリッドを搭載する日産 セレナは4WDを追加しフルモデルチェンジへ
これに対してセレナはどうなるのか。
今年9月頃のフルモデルチェンジと見られていたが、先にエクストレイルの一新があり、こちらと重なるのを避けるため、年末か来年早々にずれ込みそうだ。
次期型の商品内容は明らかになっていないが、全車全幅1750mm程度の3ナンバーサイズ化、クォリティアップ、使い勝手向上、安全対策強化、自動運転支援システム「プロパイロット」の進化、e-POWERの改良などが予想される。
e-POWERは現行モデルでは1.2Lエンジンを発電に使い、モーターで走らせる仕組みであるが、これを1.5Lに拡大し、モーター&バッテリーの容量拡大でよりトルクフルな走りと静粛性向上を図っているといわれる。
また、e-POWERはこれまで2WD車のみだったものを4WD車も設定する。従来は2Lのマイルドハイブリッドも搭載していたが、次期型ではこちらを廃止し、e-POWERに1本化する可能性もある。
ノア/ヴォクシー、ステップワゴン、そしてセレナまで含めた新型4車の大きな違いはパワーユニットである。
中心となるハイブリッドはトヨタが1.8L、ホンダは2L、日産はエンジンを発電に使いモーターで走行するシリーズハイブリッドのe-POWERである。
これによって乗り味に大きな違いが生じるが、どちらを選ぶかはユーザーの好みによるといえるだろう。
■日産営業マンは好調なスタートを切った新型ノア/ヴォクシーに対して焦りなし!?
先頭を切って発売になり、初期のマーケット評価が出ている新型ノア/ヴォクシーに対して日産の営業マンはどう見ているか。
「ノア/ヴォクシーは膨大な代替え母体があるうえに強力なセールスパワーを持っているので、滑り出しの受注台数が断トツに多くなっているのは当然といえる。
ただ、メインとなっている1.8Lハイブリッドはクルマの重さに対して非力だから、トルクフルなe-POWERに対しては物足りない面がある。
安全性についても車線変更で後方から来るクルマが死角に入った際、ブラインドスポットモニター警告だけで危険だが、セレナだと現行モデルでもぶつかりそうになったら、ハンドルを修正してくれるので安全性は高い。
リアのハッチゲートもセレナはガラス部分を分けて開閉できるので、狭い場所での小物荷物の出し入れが便利だが、ノア/ヴォクシーはフルオープンなので、後ろが狭いと開けられない不便さがある」(首都圏日産店営業マン)
と、セレナの優位性を強調する。
■ホンダ営業マンも新型ノア/ヴォクシーの「欠点」を指摘
新型ステップワゴンはどうか。ノア/ヴォクシーの滑り出しでの好調な販売ぶりに対しては、日産の営業マンと同じ見解である。
走りに対しては、同じハイブリッドだと、
「ステップワゴンは2Lで静か&滑らかで、かつトルクフルであり、走りは抜群だが、ノア/ヴォクシーは1.8Lだから、高速や上り坂では物足りなさを感じるのではないか」(首都圏ホンダカーズ営業マン)
と指摘する。
■トヨタ営業マンから見たライバル車の課題は?
ただ、トヨタの営業マンから見ると反論材料もある。
「e-POWERは平坦な一般道や高速道路を走行する時のパワフル感は快適だが、坂道や人、重い荷物を積んだ時の加速性やエンジンがかかった時の騒音に課題がある。1.5Lにエンジンの排気量を拡大した際にどこまで改善できているかだ。
ステップワゴンのハイブリッドは2Lで走りはいいだろうが、次期型でも4WD車の設定がないのがネックになっている。ノア/ヴォクシーのハイブリッドは1.8Lでも充分に走るし、燃費がいいのが売りだ。
2Lハイブリッドはレクサス車ですでに存在するので、いずれはノア/ヴォクシーにも積まれるはずだ」(首都圏カローラ店営業担当者)
とコメントする。
いずれにしろ今後4車種の次世代モデルが出揃えば、徐々に正式なマーケット評価が下されることになるのは間違いない。
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