前回は、ドライコンディションのグラベル(未舗装路)ステージでは、出走順が早い選手ほど不利になる理由について説明したが、そうならない場合もある。
グラベル路面が大量のダストで覆われていると土煙がもうもうと上がり、風がない時はしばらく視界がクリアにならない。森の中の風が抜けにくい道では、各車のスタート間隔が3分であったとしても土煙がおさまらない時もあり、しかも太陽が低い位置にある朝晩はダストで光が乱反射して状況がさらに悪くなる。
そんな時は、ルーズグラベルによって路面が滑りやすくとも、クリアな視界で走れる出走順トップの選手が有利だ。
大雨で地面がぬかるんでいる時も、やはり出走順が早いほうが有利なケースが多い。クルマが走れば走るほど泥の路面がぐちゃぐちゃになったり、逆にタイヤで磨かれてツルツルになることもあるからだ。
ここしばらくWRCのカレンダーに含まれていないが、 天候が不安定なラリーGB(グレートブリテン)では、このような泥状の路面になることが多かった。
■だんだんと汚れていくターマック
ターマックラリーでは、出走順が早い選手が基本的には有利だ。ヨーロッパの舗装路は路肩部分に砂利や土があり、直線的なラインどりのために路肩をショートカットする“インカット”を多用する。
しかし、インカットによって路肩の砂利や土が舗装路に掻き出され、ラリーカーが走れば走るほど路面はどんどんダーティになっていく。だから、1番手スタートの選手が有利なのだ。
ただし、2021年に初めてWRCイベントとして開催されたイープル・ラリー(ベルギー)は、農道のターマックが多く、最初から路面がうっすら土で汚れていた。この場合は、インカットがあったとしても、クルマが2、3台走った後のほうが道の表面がクリーンになり、タイヤのグリップ力が増す。
以上のように、路面のコンディションによって早い出走順が不利になることも、有利になることもある。5月19日(木)にスタートしたWRC第4戦ポルトガルの路面はグラベル。ドライならば出走順が遅い選手たちがやはり有利だ。出走順と路面コンディションの関係を考えながら各ステージのタイムを追うと、面白さがさらに増すに違いない。