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こりゃ失態!? 海外ではちょいとマズい名前だったクルマたち

 数え方にもよるが、世界には5000を超える数の言語が存在するという。それだけあるなら、発音が同じでもまったく意味が異なる言葉があってもおかしくない。そしてコレがクルマの名前となると事情は複雑になる。今回は、本国と輸出先で名称の異なるクルマを紹介し、どうして本名(?)がマズかったのかを解説していこう。

文/長谷川 敦、写真/三菱、ホンダ、スバル、スズキ、トヨタ、ヒョンデ、ランボルギーニ、フォード、フォルクスワーゲン、FavCars.com、Newspress UK

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天下のパジェロもスペイン語圏では…… 「三菱 パジェロ」

こりゃ失態!? 海外ではちょいとマズい名前だったクルマたち
学名「レオパダス パジェロ(パンパスキャット)」と呼ばれる南米のヤマネコから車名をとった三菱 パジェロ。初代モデル(写真)の登場は1982年のことだった

 ベストカーウェブの読者なら、知らない人はいないであろう日本が誇るSUVの三菱 パジェロ。惜しまれつつも昨年生産が終了されたものの、今でもその知名度は高い。

 そもそも「パジェロ(Pajero)」とは南米に生息するヤマネコの名称に由来する車名で、野性味を感じさせるSUVにふさわしいもの。だが、このパジェロは英語であって、スペイン語ではまったく違った意味になってしまう。

 パジェロという発音は、スペイン語では「嘘つき」や「怠け者」のほかに、さらにここでは紹介できないような下品な意味のスラングとよく似ていて、クルマの名称にするには問題があった。

 そこでスペイン語圏の国では、パジェロは猟師を意味する「モンテロ(Montero)」の名称で販売されている。パジェロの由来となったヤマネコが住むチリやアルゼンチンがスペイン語の国だというのも残念さに拍車をかけている。

 ちなみにイギリス仕様のパジェロは「ショーグン」と呼ばれていたこともあった。武士の最高位である「将軍」をクルマの名称にしても問題ないと思うのだが、日本語を母語にする人間にとって、少々気恥ずかしさを感じさせるのはナゼだろう?

フィットはフィットじゃなかった!? 「ホンダ フィット」

こりゃ失態!? 海外ではちょいとマズい名前だったクルマたち
日本ではフィットの名でお馴染みのこのクルマ。ナンバープレートを良く見ると「jazz」の表記が……。そう、フィットは海外ではこの車名で販売されていたのだ

 国産コンパクトカーの代表格とも言えるホンダのフィットだが、実は初代モデルの発売直前まで別の名称になることが決まっていた。これは同じホンダのシティ(懐かしい!)にフィットというグレードがあり、このクルマとの混同を避けるため。

 こうして生まれた名称が「フィッタ(Fitta)」。しかし、ギリギリのタイミングになって、スウェーデンなどで使われるスカンジナビア系の言語ではこの名前が女性器を表すことが判明したのだ。これではヨーロッパでの販売がやりにくくなるということで、急きょフィットに差し替えられた。

 日本国内をはじめ、北南米や中国・台湾ではフィットの名称が使われたが、それら以外の国では「ジャズ(Jazz)」の名で販売。これがボツネームの影響かどうかは不明だ。

歴史を尊重して名前を変える 「スバル レガシィ」

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スバル レガシィツーリングワゴン。写真は1993年に登場した2代目で、レガシィは名称どおりスバルの歴史に名を残すシリーズとして多くのユーザーに支持された

 4WDセダン&ワゴンのスバル レガシィは、1989年の登場以来長年にわたって世界のドライバーに愛されてきた。現在はクロスオーバーSUVのレガシィアウトバックのみが継続販売されているが、根強い人気を保っている。

 そのレガシィだが、実はオーストラリアでは「リバティ(Liberty)」に改名されていたのはご存じだろうか?

 オーストラリアの公用語は英語であり、レガシィ(後世に伝承すべきもの)に特に問題のある意味はない。ではなぜ改名したのかというと、それには少々特殊な事情があった。

 オーストラリアは、第一次世界大戦で戦死した兵士の遺族を支援するため「Legacy Week(レガシィウィーク)」という慈善団体を設立し、この団体は現在までさまざまな紛争で亡くなった兵士の遺族を支援している。そこでスバルはこのレガシィウィークに敬意を表し、オーストラリアではモデルの名称を変更した。

地域によって名前はいろいろ 「スズキ ジムニー」

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1970年に販売が開始されたスズキ ジムニー。写真の初代モデルは名称の由来にもなったジープのイメージを色濃く残しているのがわかる。エンジンは360cc

 スズキが販売するSUVの「ジムニー(Jimny)」は、Jeepの小型版ということから「Jeep」「Mini」「Tiny」の言葉を合わせた造語が名称になったというのは比較的有名な話。そのジムニーは、海外ではより日本をイメージさせる名称に変更されている。

 北米で販売されるモデルは「サムライ」、インドネシア生産モデルは「カタナ」の名称が用いられている。これらはいかにも日本車と言ったところだが、なぜか同じインドネシア生産車でもタイでは「カリビアン」と命名されている。

 インドでは日本国内と仕様の異なるジムニーを「マルチ・ジプシー」の名で販売するなど、どこでも自由に走れるジムニーらしく、その名称も変幻自在だ。

まだまだある! 国内外で名称の異なるクルマたち

こりゃ失態!? 海外ではちょいとマズい名前だったクルマたち
初代トヨタ ヴィッツ。新世代のリッターカーとして1999年にデビューしたヴィッツはコンパクトカー市場に衝撃をもたらすほどのセールスを記録している

●トヨタ ヴィッツ
 英語の「Vivid(光り輝く)」とドイツ語の「Witz(機知)」を合わせた造語の車名がヴィッツだが、英語圏、特にイギリス英語ではとある良くない表現を連想させるということで、日本以外ではギリシャ神話の神に由来する「ヤリス(Yaris)」の名で販売。日本でも現行型からはグローバルネームのヤリスに統一されている。

●アルファロメオ 164
 イタリアのアルファロメオがかつて販売していたセダンモデルの「164」。これは型式がそのまま車名になったのだが、中国語で164を発音すると、同音異語で「死に至るまで」という縁起の悪い言葉を連想させてしまう。そこで香港とマレーシアで販売する164は、「繁栄に至る道」と似た発音になる「168」の型式が用いられた。

●ヒョンデ コナ
 韓国のヒョンデ(ヒュンダイ)がリリースした「コナ(Kona)」はハワイの地名に由来した名称を持つSUVだが、こちらのコナがクセ者で、ポルトガル語では女性器を表す下品な言葉になる。そのためコナは、同じくハワイの地名に関連した名称の「カウアイ(Kauai)」としてポルトガル市場で展開されている。

意味は悪くとも名称変更はしていないクルマ

こりゃ失態!? 海外ではちょいとマズい名前だったクルマたち
猛り狂う牛のイメージそのままのハイパワーエンジンを搭載したランボルギーニ レヴェントン。スペイン語圏の人でも、すぐにパンクを連想しないだろうが……

●ランボルギーニ レヴェントン
 イタリアのランボルギーニは、自社のモデルに闘牛関連の名称を与えることで知られている。6.5リッターV12エンジンを搭載する「レヴェントン(Reventón)」も闘牛の名前にちなんだものだが、このレヴェントン、スペイン語では「パンクする」や「吹き飛ぶ」といった意味になりあまり縁起が良くない。とはいえ、スペインでこの名が変更されたという話も聞かない。

●フォード クーガ
 フォードの「クーガ(Kuga)」は、フォードヨーロッパで生産されるクロスオーバーSUV。これは猫科の猛獣・クーガー(Cougar)にちなんだものだが、フォードではすでにCougarの名称を持つモデルがあったため、つづりが変更されている。

 しかし、このKugaは、スロベニア系の言語でペストなどの「疫病」を意味する言葉でもあった。そのためにスロバキアやクロアチアなどの地域でクーガの販売成績が振るわないという話もあるとか。

●フォルクスワーゲン ジェッタ
 ジェット気流に由来した「ジェッタ(Jetta)」の名を与えられたフォルクスワーゲンのセダンモデル。かつては日本でも販売されていたが、現行モデルは北米市場だけで展開されている。

 いかにも速そうな名を持つジェッタだが、これがイタリアにやってくると、「連敗」や「不幸の連鎖」を指す「ietta」の発音とよく似てしまう。さすがにこれが理由で名称変更を受けることはなかったが、イタリアでこのクルマに乗るのはジンクスなど気にしない勇者だけに限られたかも。

 クルマの命名にはさまざまな理由があり、良い意味を付与することを目的としている。しかし悲しいことに、それがすべての国や言語に通じるワケではない。数字や記号だけの型式なら無難かもしれないが、先に紹介したアルファロメオ 164のような例もあるから油断はできない。

 これからも新しいクルマは次々と誕生してくるが、メーカーの命名担当者は細心の注意を払って意味や発音の確認をする必要があるだろう。

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