4月17日、岡山国際サーキットで開催されたスーパーGT第1戦。序盤こそアクシデントなくレースが進んでいったが、GT300クラスを中心にレース後半はたくさんの“事件”が起きた。あの瞬間、何が起きたのか。スーパーGT第1戦・GT300“事件簿”をお届けする。
■表彰台にわずかに届かず……。PACIFIC Hololive NAC Ferrari
公式練習から絶好調。オフにこの岡山で行われたGT3特別スポーツ走行で徹底的に走り込み、パフォーマンスを上げていたのがPACIFIC hololive NAC Ferrariだ。今回木村武史の代役を務めた横溝直輝がスタートから上位を守った。
「岡山はなかなか抜けないコースなので、燃費をマネージメントしつつケイに渡しました」と横溝はしっかりとコッツォリーノに繋いだ。
コッツォリーノはずっと3番手を走り、2番手のUPGARAGE NSX GT3を追う展開となっていたが、終盤「残り15周くらいまでは良かったんです。しかしタイヤを見なければ分かりませんが、ピックアップなのか摩耗なのか。タイヤが厳しくなり、最後は白旗を揚げるような状況でした」と急激にペースを落とさざるを得なくなり、LEON PYRAMID AMGにかわされ4位に。レース前は「今回はぜったいに表彰台を獲りたい」と語っていたコッツォリーノは悔しさをみせた。
「トップの2台は速かったですね……。タイヤマネージメントしながらでも彼らについていけないと。ただこの領域で岡山でテストはしていなかったんです。ロングランもまともにはできていなかったので……。今週は公式練習からFCYテスト、予選Q1とすべてトップで、横溝選手も良い走りをしてくれた。フェラーリのすごさをアピールできたと思うのですが。今後レースを考えた取り組みをしなければいけませんね」
また代役を務めた横溝は「ロングランが見えていなかったので、そこがスーパーGTの難しさですね。次にまたドライブするときは、しっかりデータを活かし、より上で走りたい」と振り返った。次回は木村のELMS参戦のスケジュールから、第3戦鈴鹿の参戦が濃厚だ。
今回、表彰台を逃す結果となってしまったコッツォリーノだが、「富士はまかせてください(笑)。ホームコースですから」とチームオーナーの木村の帰りを待つ。今季、PACIFIC hololive NAC Ferrariはカラーリングだけが注目ポイントではない。ライバルが一目置く存在だ。(RH)
■まさかのエンジン再始動ならず。SUBARU BRZ R&D SPORT
予選ポールポジションから決勝でもスタートを決め、レース序盤をリードしたSUBARU BRZ R&D SPORT。しかし徐々にペースが苦しくなり、23周目にはリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの先行を許してしまう。
35周目、2番手のポジションをキープしたままピットインし、井口卓人から山内英輝へとドライバー交代。しかしここでエンジンがかからず、大きくタイムロス。静止時間は60秒を超えてしまった。
レース直後、チームに聞くと「エンジンがかからなかったことはたしか。その理由は、まだはっきり分かりません。その“かからなかった”状況も、スターターが回っていたのかどうか含め、まだ正式に掴めていません。原因はこれから探ります」(R&D SPORT澤田稔氏)。(KN)
■一度あったかどうかのトラブル発生。埼玉トヨペットGB GR Supra GT
10番手スタートだった埼玉トヨペットGB GR Supra GT。序盤はポジションをキープできていたが、次第に集団の中で苦しいレースを強いられることになる。前半を担当した川合孝汰が振り返る。
「前にいるクルマより単独ならペースが良かったと思うんですが、今年のBoPがかなり厳しくて、レースになるとストレートで離されていってしまい、バトルっていうものができないのがなかなか悔しいです」
ミニマムでピットインし、吉田広樹へと交代。しかしその後、吉田は再びピットへと戻ってきてしまった。
「じつは僕から吉田さんに代わって数周走ったくらいからシフトが落ちなくなりまして。まだ原因ははっきりとはわかっていないのですが、おそらくコンプレッサー関係じゃないかという話はしていて。ピットに入って一度リセットをかけたらとりあえず走れたので、完走ポイントを狙う形で走行を続けました」
川合によれば「練習で1回あったかどうか」というトラブルとのことで、詳細な原因の究明が待たれる。(KN)
■ピットでまさかの事態に。muta Racing GR86 GT
加藤寛規がステアリングを握り、序盤から中団グループで戦ってきたmuta Racing GR86 GTは、今回がGR86にスイッチしての初めてのレース。ただ28周目、ピットレーンでなぜかクルーが切り返しているシーンが映像に映し出された。いったい何が起きたのかと加藤に聞くと「僕も分からなかったです(苦笑)」という。
「20号車(シェイドレーシング GR86 GT)にウチが入るよ、と伝えていたのですが先にピットに入っていて、ピット停止枠を超えて停まっていたんです。で、僕はピットから『ダイブだ』と言われたのですが、あまりに狭くダイブするすき間がなかったので、止まってしまっただけです(苦笑)」
狭い岡山国際サーキットでは、ピットインの際に両隣、さらにふたつ隣あたりまでのチームに声をかけピットタイミングを聞き、タイミングをずらすのが一般的。ただ今回はなぜかタイミングが重なってしまった。
作業エリアに入れないmuta Racing GR86 GTをクルーは一度切り返し、ようやく停止位置に。思わぬタイムロスとなってしまった。(RH)