もっと詳しく

 緊迫の接近戦が期待された2022年のスーパーGT開幕戦は、ポールシッターの14号車ENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也と山下健太が、アクシデントも絡んだ終盤戦の3メーカー“三つ巴”のファイナルバトルを制し、2年連続で岡山国際サーキットを制覇。2019年チャンピオンコンビが磐石のシーズンスタートを切り、2位にはホンダのエースカーたる100号車STANLEY NSX-GT、3位にはデビュー戦の23号車MOTUL AUTECH Zが後半スティントの猛追で喰い込むなど、3車種が表彰台を分け合う結果となった。

 FR共通規定3年目を迎え、空力開発の一部凍結解除により勢力図が動きそうな気配の漂う2022年が、快晴の岡山国際サーキットでいよいよ幕を明けた。

 前日土曜には強風ドライコンディションのなか注目のニューモデル、ニッサンZ GT500がデビューし、午前の公式練習で23号車MOTUL AUTECH Zが首位を奪ったものの、同じくミシュランタイヤを装着する3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zとともに午後の予選では一転奮わず。

 代わって例年ここ岡山を得意とするトヨタ陣営が躍進し、14号車ENEOS X PRIME GR Supraと39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraがフロントロウを独占。Q1では参戦全15台中トラブルで止まった1台を除く全車が0.5秒圏内に入り、今季の超接近戦を予感させるセッションで、まずはGRスープラが先手を獲る結果となった。

 そんな最速を決めるノーウエイト勝負を経て、3番手に並んだ100号車STANLEY NSX-GTや5番手の24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zなど、ライバル勢が決勝でどう巻き返すか。アクシデント発生率の高い岡山では序盤の混戦を切り抜ける“サバイバル能力”も試されるだけに、レースペースに秀でるNSX-GTや、燃費性能改善で競合を捉えたGRスープラ、そして新型車のデビュー年度ではつねに結果を残してきたニッサン陣営がどのようなレース展開を見せるか。まずはファーストスティントの攻防が最初の焦点となった。

 土曜に比べていくぶん風の収まった日曜は、週末ひさびさの開催となったピットウォークを経て、航空自衛隊F-2戦闘機のウエルカムフライトを実施。12時40分のウォームアップ走行も順調に終えると、全15台のマシンがグリッドに並んだ。

 気温23度、路面温度は33度まで上昇した14時ちょうど。フォーメーションラップへ向かった隊列は、2周を経てクリーンに1コーナーへ。順位変動なく推移した上位勢に対し、後方では8番手発進だった19号車WedsSport ADVAN GR SupraがMOTUL AUTECHロニー・クインタレッリや17号車Astemo NSX-GT松下信治らの先行を許すことに。

 さらに前方のチャンピオンカー、36号車au TOM’S GR Supraをパスした12号車カルソニック IMPUL Zのベルトラン・バゲットは、5番手のリアライズコーポレーション ADVAN Zに迫っていく。5周を過ぎてGT300の隊列に追いつくと、8周目のヘアピン立ち上がりで並走。そのままインを奪って5番手浮上に成功する。

 前方では首位をいくENEOS X PRIMEの大嶋が後続とのギャップを広げはじめ、2番手DENSO関口雄飛は背後のSTANLEY牧野任祐にテール・トゥ・ノーズに持ち込まれ、再三にわたってバトルを仕掛けられる。すると11周目にはその隙に乗じて4番手のZENT CERUMO立川祐路が加わり、ヘアピンからダブルヘアピンの間でサイド・バイ・サイドの攻防を繰り広げる。

 ここでの順位変動はなかったものの、5番手のカルソニック IMPULも加わって2番手争いは4台の隊列となる。すると17周目のアトウッドで100号車STANLEYのイン側にボディをねじ込んだ立川が、そのままバックストレートを並走してヘアピンのブレーキングで前へ。これでGRスープラが1-2-3体制を築く。

 路面温度もスタート時よりわずかに上昇して35度となりタイヤライフの違いが現れ始めると、20周時点で首位大嶋と2番手関口のギャップは約12秒まで広がる。さらに22周目にはヘアピンのブレーキングでズバリとインを刺され、立川が貫禄のオーバーテイクで前へ。これで39号車DENSOは3番手へと後退してしまう。

 82周のレース距離3分の1を超え、ドライバーの最低義務周回数を超えた30周目には、その立川を先頭に牧野や8号車ARTAの野尻智紀らがミニマムでピットへと入ってくる。ここでZENT石浦宏明は38.4秒の静止時間、STANLEY山本尚貴は37.5秒でコースへと復帰し、続く周回にはAstemo NSX-GTとModulo NSX-GTが、その翌周には首位ENEOS X PRIMEやDENSOなど、後続も次々とドライバー交代に向かう。

 すると42.4秒の静止を強いられたENEOS X PRIME山下健太に対し、37.0秒で出たDENSO中山雄一らをも上回り、さらに次の周回となる33周目ピット組の12号車カルソニック IMPUL Zが躍進。トラック復帰後の36周目には直接対決でDENSO中山をオーバーテイクし、暫定の3番手に浮上すると、この動きにZENT石浦も追随し、こちらも暫定4番手に上がってくる。

 ほとんどの陣営がルーティンの作業を終えるなか、15台中唯一ドライバー交代と給油を引っ張る戦略を採用した16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが、52周を終えたところでピットロードへ。これでENEOS X PRIME山下が10秒以上のマージンを築いて首位に返り咲き、12号車カルソニック平峰、38号車ZENT石浦のトップ3に。

 そこからセカンドスティントはジリジリとこう着状態が続いたが、残り20周を切った66周目に突然、事態が急変する。まず5番手を走行していたSTANLEY山本がヘアピンでDENSO中山をパスして4番手に上がると、その背後では7番手を走っていた24号車リアライズがGT300クラスのマシンとの接触でスピンを喫するアクシデントが発生。

 続く67周目には同じくヘアピンで3号車CRAFTSPORTS、23号車MOTULのミシュランタイヤ装着勢が、39号車DENSOを挟み込むように立ち上がり、サンドイッチ状態でオーバーテイクする見せ場を作る。

 しかし68周目にはヘアピンでの接触の余波から、クラッシュを喫したマシンが1コーナーで止まり、ここで初のフルコースイエロー(FCY)導入となる。これがすぐさま70周を前に解除されると、続く72周目のアトウッドで3番手ZENT石浦が12号車カルソニックをロックオン。アウト側から並走でバックストレートへと駆け上がっていく。

 すると2台がブレーキングゾーンに到達しようかというところで、もうひとりの役者が登場し、さらに内側から4番手STANLEY山本が“スリーワイド”を演出して一閃。まとめて2台を抜き去り、一気に2番手を奪い取る。

 さらに背後では、23号車MOTUL松田次生が12号車カルソニックを仕留めて5番手へと上がり、勢いそのままに続く周回のヘアピンではZENTをパスし、ついに表彰台圏内の3番手に進出する。この時点で首位ENEOS X PRIME、2番手STANLEY、3番手MOTUL AUTECHと、優勝争いは参戦3マニュファクチャラー三つ巴の構図となる。

 残り5周の78周目には、GT300クラスのアクシデントでこの日2度目のFCYが発動。残り3周でリスタートを迎えると、ENEOS X PRIMEの目の前にいた車両がハーフスピンを喫し、山下は避けきれずにヒット。結果、優勝争いのギャップはわずか1.978秒まで縮まることに。

 しかし渾身のスパートを見せた山下がSTANLEY NSX-GTを抑え切り、スタート前に「ぶっちぎりの展開で勝ちたい」と語っていた男が、有言実行の開幕戦岡山連覇をポール・トゥ・ウインで達成する結末となった。