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 日本のマニュアル(以下MT)車販売比率は1%程度、MT車の免許証は持っていても、実際にMT車を所有している方はごくまれだ。

 筆者はテンロクターボのフレンチMT車を所有している。MT車に乗りたくて、3年前に中古で安く購入したのだが、好きで買ったクルマでも、日々の運転では苦労することも多い。乗ってみて気づく、MT車で苦労することをいくつかご紹介しよう。

文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_pingpao
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU、MAZDA、MITSUBISHI、DAIHATSU、SUZUKI

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渋滞では、クラッチを踏む左足が疲れる

 ちょっと進んでは止まり、また再発進するを繰り返す、高速道路などでの長い渋滞は、MT乗りにとっては苦悶の時間だ。AT車のクリープと違い、発進時の動きはギクシャクするので、後続車にも気まずい。

 特に、緩い登坂が続く首都高の大橋ジャンクションのような合流渋滞では、クラッチを踏む左足のふくらはぎはパンパンになる。かつて、MTのフェアレディZで出張した際に大橋ジャンクションの大渋滞にハマったことがあるが、「もう一生MTには乗るものか」と考えたほど大変だった(その後、いまのMT車を買っているが…)。

 ヒルホールド(坂道発進で後退をしない装置)が付いているMT車であれば、まだマシ。MTを購入されるのであれば、ヒルホールドがあるものにすることを強くおすすめする。

普段は楽しいMT車のクラッチ操作も、高速道路の大渋滞などでは苦行となることも(PHOTO:Adobe Stock_ R_Yosha)

後続車がいるときの、登り坂での信号待ち

 前述したヒルホールド機能が付いていれば問題ないのだが、ついていないMT車の場合、発進時には手に汗握ることになる。「ゼロ後退」で発進したくても、斜度が急だったり、アクセルのあおりが弱かったすると、若干後退してしまったり、最悪の場合はエンストしてしまいかねない。

 ブレーキをリリースした瞬間に半クラッチができなければ、落ち着いてサイドブレーキを使った発進をすればよいのだが、そのサイドブレーキ発進も、久しぶりに使うシーンに出くわすと、ちゃんとできるか不安になる。後続車がピタ付けしていたりすると、緊張度はさらに跳ね上がる。街を走る乗用車のほとんどがAT車であるいま、後続車にとっては、前走車が後退してくるなんて意味が分からないだろう…と考えると、余計に焦る。

長距離運転でも同乗者に変わってもらえない

 友人たちと長距離旅行やドライブへ行った帰りなど、MT車を運転できる免許証を持っていても、「MT車の運転をしたくない(自信がない)」と、ドライバー交代を拒絶されることがある。そうなると、どんなに疲れていても、自ら運転しないとならない。

同乗者に申し訳ない

 どんなにMT車の操縦が上手いドライバーでも、ギアチェンジのショックを消しきることはできない。1速から2速へギアチェンジする際には、ひと呼吸おいてからシフトアップするのだが、加速Gは必ず段がつくので、助手席や後席の乗員の頭部が前後へと揺れてしまう。

 同乗者に「気にならないよ」といわれていても、シフトアップやシフトダウンのたびに、頭部が前後に揺れるので、何度も繰り返すうち、申し訳なくなってくる。

左手が忙しいので、ペットボトルのフタすら開けられない

 AT車であれば、信号待ちでペットボトルのふたを開けてドリンクを飲むことは難なくできる。前走車が動きはじめても、ブレーキをリリースしたあと、ハンドルを握ればいいので、余裕をもって追従できる。だが、MT車はそうはいかない。片手はハンドルを持ち、もう片手はシフトノブを持つので、両手が忙しい。

 運転中に余計なことができないので「安全」ではあるのだが、両手が忙しいので、ドリンクすら飲む余裕がないことがあるのは、すこし辛い。

どんなに苦労しても、また乗りたくなるのがMT車

 上記以外にも、MT車で困ることはいくつかある。先日宿泊したホテルの駐車場では、「スタッフが入出庫を行うため、MT車は不可」と記載されていた。もはや「特殊車両」扱いだ。

 かつては省燃費の面や雪道発進のとき、また機械部品点数の少なさからくる故障可能性の小ささなど、MT車のほうがAT車よりも優れていた部分がいくつかあったが、近年の技術進化や別方向の需要(先進安全技術とのマッチング)により、MT車の技術的なアドバンテージはほとんどなくなってしまった。しかし、それでもMTにはMTにしかない魅力がある。はず。たぶん。

 しかし、操縦の楽しみは格別。だから、どんなに苦労した後でも、またMT車に乗りたくなる。本稿を読んで、「こんなに不便なのになぜ乗りたくなるのか」と興味をもっていただけたら、嬉しい。

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