ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす企画をお届けしております。今回はGAINERの野尻智紀選手から、“のじさんぽ”として仲良しのTGR TEAM SARDの中山雄一選手に繋がりました。
しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークがこの企画です。これまでの連載は、まとめページを作りましたのでぜひご参照ください。
前々回の野尻智紀選手から富田竜一郎選手と“のじさんぽ”で繋がったこの『勝手にお悩み相談ショッキング』。当然中山雄一選手に繋がり、富田選手から預かってきたお悩みをぶつけてみました。
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■うまくやれるのではないですかね。
──そんなこんなでよろしくお願いします。私が質問をするので、ざっくばらんにお答えいただければ大丈夫です。このコーナーでは前回、富田さんから預かってきたお悩みを解決してもらいたいんですが。
中山雄一さん(以下中山さん):なるほど。なにも分かってなかったです(苦笑)。
──まず悩みを解決してもらいたいのですが、今年、富田さんはスーパーGTで初めて日本人の若手ドライバーである大草りき選手と塩津佑介選手と組むのですが、年齢が10歳くらい離れているということで『若い人とする話題が分からない』という悩みがあるそう。あとふたつくらいありますが、まあこれいきましょう。
中山さん:同年代でも話題が合うのかという問題もありますけど(笑)。
──富田さん的には『自分が若かったころは、変なタイミングで話に入ってくる大人があまり好きではなかった』ということもあり、20代のドライバーたちとどうやってうまく付き合ったらいいのかを聞きたいということです。中山くんは2017年に坪井翔選手とコンビを組んだことがあったじゃないですか。そのとき会話は何を話してました?
中山さん:1年前に相談してくれたら僕もまだ20代だったんですけどね(笑)。2017年のときの僕の立場は、ふたりともトヨタの育成ドライバーで『先に結果を出せばGT500にステップアップできる』というようなバチバチ感も少しありつつ、でもチームワークなので、ふたりで結果を出さないといけない……という感じでした。
ですが僕のほうがGT300の経験は長いので、坪井くんにたくさん経験してもらわないといけないこともあったので、どちらかというとチームプレイを自分のなかで意識していました。やはり、その点では富田くんも海外に行き、ぜんぜん知らない土地でレースをして僕以上の経験値を持っているところもあると思います。大草選手と塩津選手はほとんどGTの経験がない若手だと思うので……どうなんですかねぇ。
──大草選手と塩津選手は歳も近いから仲が良いらしいよ。
中山さん:なるほど。ちなみに僕とヘイキ(コバライネン)さんは共通の趣味がゴルフでバッチリ合ったので、言葉の壁はありつつも、ゴルフという趣味からすごく仲良くなれました。僕もインドア派ですが、僕が知る限り富田くんもインドア派なので(笑)、そういった共通項があれば話はしやすいと思います。
富田くんと大草選手と塩津選手の3人の間柄的にも、スーパーGTで優勝すること、この先どういったドライバー人生を歩んでいくのかというところでも、ものすごくバチバチのライバル関係ではないと思うので、うまくやっていけば大丈夫だと思います。
──ちなみに、坪井くん以外で若手とコンビを組んだことはありましたっけ?
中山さん:あまりないですね。(小高)一斗くらいです。
──会話はどうでした?
中山さん:一斗はベラベラ話してくれるので楽でした(笑)。僕と富田くんは、少し寡黙で自分から話しかけないタイプが似ているかなと思います。
──TANAX GAINER GT-Rはまた3人というのが微妙なバランスの関係だよね。
中山さん:たしかにそうですね。でもGT-R+ダンロップというパッケージのことは富田さんが熟知しているので、若手のふたりはレースのことに関して聞きたいことが山ほどあると思います。
──もう少しウエルカムなオーラを出せば良いのかもね。
中山さん:そうすれば若手は聞きたいことが山ほどあると思います。海外のドライバーはサーキットでコースインしたら人が変わったような走りをする人もいますが、マシンを降りてしまえばみんな笑顔で『さっきのは何だったんだ?』というくらいの切り替えをみせる人もいると思います。
富田くんはそういったところを見てきていると思うので、うまくやれるのではないかなと思います。なんか『悩みなのかな?』みたいな感じですね(笑)。
■ブスっとしてた腹筋のペア
──ちなみに“のじさんぽ”のふたりにも聞いたのですが、中山くんにとって野尻くん、富田くんのふたりはどういった存在ですか?
中山さん:野尻選手は、昔はカートで先輩でした。
──いくつ違うんでしたっけ?
中山さん:ふたつ違うので先輩という感じですが、なぜかフォーミュラでは追いついて、同じタイミングでステップアップするようになりました。でもスーパーフォーミュラくらいからメキメキと差が離れていき(苦笑)、『もうこれは手が届かない』という感じかなと思いましたが、僕がまたGT500にステップアップできて同じようなベースでレースできています。
いま、野尻選手はスーパーフォーミュラですごい成績を残していて、その部分でも同じ舞台で戦うことを目指しつつ頑張っていますが、スーパーGTでは負けない走りができてるかなと思うので、そういった意味では、ずっとこの先も戦っていけたらいいな……という存在です。
──仲がいいのはいつ頃から?
中山さん:スーパーフォーミュラにステップアップするくらいからです。
──昔から仲が良かったわけじゃないんだ。
中山さん:いちばん最初に会ったのは……会ったというか体が触れたのは(笑)、僕が小学校4年生のときに、カートの合宿で腹筋のペアになったときです。そのときに野尻くんが僕の足を抱えてふたりで腹筋をしました。すごく気まずいな……と思いながらやりましたね(笑)。顔は知っていたけど話したことないですし、しかも(野尻さんが)めっちゃブスっとしていたから『超こえぇな……』と思いながら腹筋しました(笑)。
──なんだか小学校のときって、そういうタイプいるよね。
中山さん:今はちょっと明るさが出ていますけど、全日本F3くらいまではブスっとしていたんじゃないですかね(笑)。
──その後はどちらが富田さんと仲良くなったのですか?
中山さん:富田くんとは、僕も野尻選手もほぼ同じくらいのでしょうか。僕は富田くんはまったく知らなかったんです。急に『誰?』という感じで現れて、しかも速い。それで『お金持ちなのかな?』みたいな感じでFacebookでお金持ちイジりを始めていたら、僕らがシミュレーターに行くところに来てくれたりして……という感じです。
でもなんだか波長は似ていたのですぐに仲良くなりました。富田くんはドライバーとしてすごく速いんだろうなという感じがします。なので、高校生とかでメーカーの育成に入っていたら、今ごろはスーパーフォーミュラに参戦しているんだろうなという速さはあると思います。
■もっとアグレッシブなドライバーになるために
──そんなこんなで、中山くん最近お悩みはありますか?
中山さん:ちなみに野尻くんのお悩みはなんでしたか?
──野尻さんは、富田さんのお父さんと食事をしているときにしっかりと止めに入ってほしいというお悩みでした。
中山さん:そういうことですか。僕も横にいました(笑)。
──ずっと野尻さんに『お前はもっと行かなきゃダメなんだよ』と言っているのを、富田さんがしっかりと止めて下さいという、どちらかというとお願い。それに対する富田さんの回答が『野尻くんがもう少し合図を出してほしい』ということを言っていました。
中山さん:(笑)。富田くんのお父さんのお話はすごく面白いんですよ。なんというか、聞き入ってしまうんです。なので、僕も野尻くんが止めてほしいとは思っていなくて『もっと俺にそういった話をしてくれ』、『人生の先輩としてのアドバイスをくれ』というような反応だったんですよ。僕も聞いていて面白いなと。
──中山くんは富田くんのお父さんからそういった話はされる?
中山さん:僕はあまり言われないです。
──じゃあ野尻くんだけが言われるんだ(笑)。
中山さん:そうです。僕は横で相槌を打ちながら聞いているという(笑)。
──野尻くんは『もっと行かなきゃダメ』という言葉を真に受けたらコースアウトしたとか。
中山さん:でも、それが転機になりその後はガンガンいけた。僕も2021年のSUGOで平川(亮)とぶつかっていますが、まあそれは置いといて、タイプとしては僕と野尻くんはスタイルが似ているところがあると思います。激しい感じではないので、僕もそこに自分の情景をあわせつつ富田くんのお父さんの話を聞いています。
昔から攻める気持ちはありますが、なかなかタイミングとかで出すことができない。でも、少しづつ今までの殻を打ち破って、もっとアグレッシブなドライバーになっていこうと思っていますし、野尻くんがそうやって変わったところも見ています。なので、もっとアグレッシブなドライバーになるためにはどうすればいいかといことを聞きたいです。
今年から関口(雄飛)選手がチームに入ってきてくれました。そういった点では関口選手の走りを専有走行から見ているだけですごく勉強になります。敵だとかなり厄介ですが、味方だとすごく心強い頼もしい選手がチームメイトになったので、僕もそのエッセンスをもらい強い走りをしたいなと思います。
■自分と同じ生まれ年に製造されたクルマが欲しいんです。
──なるほど。ただそれはお悩みになっていない気もする。ただの良い感じの中山雄一インタビューで終わってしまうので(笑)。
中山さん:たしかにそうですね(笑)。難しいな〜。あれっ? 僕は誰に繋げればいいんですか?
──誰でもいいよ。
中山さん:えぇ……。スーパーGTに参戦している人ですか? 難しいぞ……。人と悩みの両方が出てこないです(苦笑)。
──レースに一切関係ないことでも大丈夫ですよ。
中山さん:なんでもいいんですよね? ……実は、生まれた年(1991年)に作られたA70スープラを買いたいんですけど、どんどん価格が高騰していて、買い時がいつなのか分からないという悩みがあります(笑)。
──70スープラ!?
中山さん:はい。けっこう中古車屋さんには出てくるんですが、とにかく高い。今はブームで価格が上がってるけれど、ちょっと下がるんだったら待ちたいし、もうこのままずっと年が経てば経つほど上がっていくのならば今がいいだろうし。
──買い時はたしかに悩ましいね〜。
中山さん:コロナ禍が明けたら中古車市場の価格が少し下がるのではないかというのもあれば、コロナ禍でみんな外出やお金を使うところがないので、そういうものに資産として投資をしたりするのかもしれませんし、クルマを買って遊ぶのならコロナの影響も少なく、悩ましいです。
──買ってからはどうするの?
中山さん:買ってみてから考えようというボヤっとした感じです(苦笑)。
──そういう意味では、悩みをぶつける相手はクルマに詳しい人がいいですね。
中山さん:詳しい人がいいです。とりあえず『のじさんぽ』も終わりなので誰でもいいんですよね? でもクルマに詳しくて、まだ登場していない人は誰ですかね?
──意外とですね。谷口信輝さんが登場していないんですよ。
中山さん:登場していないですか!? ではいきなりクルマ博士に回せますね(笑)。
──たぶん、かなりズバッと答えてくれそうな気がする。
中山さん:そうですよね! でも、こんな回し方でも大丈夫ですかね?
──大丈夫。ところで70スープラも最近は街中で見かけないよね。
中山さん:僕も見たことないです。欲しい生まれ年のクルマのなかで『ちょうどいいのがあった』という感じなんです。
──では谷口さんに、70スープラを買うべきか買わざるべきか聞いてみましょう。
中山さん:『絶対買え』と言われそうですけど(笑)。
──買うなら『今でしょ!』みたいに言いそうだね(笑)。では今回はこんな感じで大丈夫です。
中山さん:大丈夫なんですか!? 富田くんのお悩みは解決しましたっけ?
──解決したんじゃないかな。
中山さん:今までやってきたことを活かして、自信をもって後輩に接して下さいという感じです。でも、富田くんは僕や野尻くんとは違った視点でアドバイスをくれるので、後輩ドライバーが聞いてくることなんてたやすいと思います。
──富田さんは意外と細かいことでイラッとするタイプじゃない?
中山さん:(笑)。そこはヨーロッパのドライバーの大らかなところを見習えいうことで。
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そんなこんなで、次回はあの谷口信輝さんが登場です。すでに取材済みですが、的確かつクルマ好きなら見逃せない返答がもらえますよ。乞うご期待!