もっと詳しく

細田博之衆院議長は、東京都内で行われた自民党議員の政治資金パーティで、「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない。上場会社の社長は1億円は必ずもらう。普通の衆院議員は手取りで70万、60万くらい」と述べた。11日、朝日新聞など各社が報じた。

細田氏はさらに、「1人あたり月給100万円未満の議員を多少増やしてもバチは当たらない」と述べ、議員定数を増やすべきと主張した。

細田博之衆院議長(2月22日、衆院本会議ネット中継より)

「10増10減」への反対も、国民には届かず

細田氏の発言は、1票の格差の是正に向けた、いわゆる「10増10減」に反対の立場を示す中で出たものだ。「10増10減」は、東京都、北海道、兵庫県、愛知県、福岡県で議員数を増やす一方で、新潟県、宮城県、長野県で議員数を削減。さらに、鳥取県と島根県、徳島県と高知県を合区にするというもの。

細田氏はかねてから「10増10減」に反対の意向を示していた。4月5日に東京都内で行われた自民党議員のパーティで「都会だけ増やし、地方いじめのような10増10減」と発言。4月9日には、自身の地元・松江市での講演で「議長がいろんなことを言うと黙っておれと言われるが、そうはいかん。地方には地方の立場がある」と、改めて「10増10減」へ反対する意向を強調していた。

今回の発言もそういった文脈の中から出てきた発言だが、細田氏の持論である「10増10減」への反対ではなく、「議長になっても毎月もらう歳費は100万円しかない」という発言がクローズアップされた格好だ。ツイッターでは痛烈な批判が相次いだ。

こういう、市民の生活とはまったくずれた感覚の自民の議員をのさばらしておいてはならない

国民全員が月100万稼げるようにしてから言いいなさいよ…

毎月100万円でも足りないんでしょう?なのに、それ以下の手取りで高所得層とされて、子育てに何の支援も受けられない私たちにも目を向けて。

一般のネット民だけでなく、野党からも批判が噴出。立民の山岸一生衆院議員は、「給料が少ないと感じるのは細田氏の生活感覚なので勝手だ」と前置きしつつ「私たち議員は富を生み出していない」と批判。

日本維新の会の音喜多駿政調会長も「火に油を注ぐ。議長ともあろう立場で何を言っているのか」と発言内容に疑問を呈していた。

日本の国会議員報酬は世界トップクラス

そもそも、細田氏が言うように、日本の国会議員は「低賃金」なのだろうか。イギリスのマネー情報サイト「LOVEMONEY.COM」が行った調査によると、日本の議員報酬は年間27万4000ドル(約3500万円)で世界第3位だ。ちなみに世界1位はシンガポールで、2位はナイジェリア、5位アメリカ、6位オーストラリア、7位イタリアと並ぶ。

Gomaabura/Photo AC

日本人の平均年収は約447万円で、OECD加盟国(35カ国)で22位。国民の稼ぎがOECD加盟国の平均すら下回っているのと対照的に、議員報酬は世界トップクラスだ。国会議員には毎月100万円支給される文書通信交通滞在費(文通費)、期末手当(約635万円)、毎月65万円の立法事務費などが支給される。こうした諸手当を加えると日本の国会議員の議員報酬は世界1位とも言われている。

こうした中で、「1人あたり月給で手取り100万未満の議員を多少増やしてもバチは当たらない」とした細田議員の発言は、にわかに信じがたく、批判を浴びるのも当然だろう。

とはいえ、確かに都会の議員を増やして地方の議員が減らされるのには問題がないとは言えない。現状ですら地方の声が中央に届きにくいと言われているのに、それに拍車がかかってしまわないかとの指摘も出ている。

1票の格差の是正も大切かもしれないが、まずは、世界トップレベルの議員報酬が国民生活と照らし合わせて本当に適正なものなのか、その議論から始めてみてはどうか。月100万円の文通費を「目的外利用可能」とする法律改正案を成立させてしまうような国会にはやはり無理なのだろうか。