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スカイラインよどこへ行く 超名門車の現状と行方

 プロパイロット2.0を一番最初に搭載するなど、日産が誇る自慢の技術を惜しみなく搭載したスカイラインハイブリッド。話題になったのはたった数年前の話だが、突如としてハイブリッドモデルが廃止となったのだ。

 電動化が叫ばれる今、ガソリン車一本で勝負するのは非常に珍しい判断である。モデルチェンジが近いというのも要因だろうが、なぜこの判断を下したのか!? そしてスカイラインだけでなくフーガやシーマといった他のセダンモデルも終売のウワサが絶えない。果たして日産のセダンはこれからどうなる!?

文:山本晋也/写真:ベストカーWEB編集部

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マジかよスカイライン……電動化全盛の今、ターボのみで勝負へ

 スポーツセダンの日本代表とっても過言ではない「スカイライン」。日産自動車の伝統的車名として、ニッサン・ブランドが持つスポーツ性を象徴し続けている。そんなスカイラインの最新モデルは、V6ハイブリッドとV6ツインターボという2種類のパワーソースを用意しているが、最近になってハイブリッドの受注終了をしたことが話題となっている。

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世界でもっとも売れている電気自動車といえばリーフ。日産はピュアEV以外にもe-POWERなどさまざまなパワートレインで電動化を図っている真っ只中!!

 日産といえば電気自動車「リーフ」を、いち早く量産するなど、日本におけるクルマの電動化におけるトップランナーといえる存在だ。電動化比率を高める方針であることも表明している。そんな日産が、いくらスポーツセダンのスカイラインといえども、ハイブリッドを廃止して、V6ツインターボだけを残すというのはにわかには信じられない判断ともいえる。

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 はたしてスカイラインからハイブリッドが消滅するという背景には、どんなことが考えられるのだろうか。

 まず、整理しておきたいのはスカイラインが採用していたハイブリッドシステムは、いま日産が推している「e-POWER」ではないということだ。スカイライン・ハイブリッドは、225kW(306PS)を発生する3.5L V6エンジンと50kW(68PS)の能力を持つ駆動モーターに、2つのクラッチと7速ATを組み合わせることで、モーター駆動のみ、エンジン駆動のみ、モーター+エンジン駆動と様々なモードを実現したシステムとなっている。そして、このシステムはシーマやフーガといった日産のFRハイブリッドカーにも採用されている。

 しかし、1モーター2クラッチハイブリッドは複雑ゆえにコスト高であり、エンジンを発電専用に利用するe-POWERに注力する日産の技術ロードマップからすると、過去のテクノロジーとなりつつある。実際、スカイライン・ハイブリッドがオーダーストップしたのにつづき、シーマやフーガの生産終了についても信ぴょう性の高い噂が飛び交っている。

 さらにいえば、スカイライン、フーガ、シーマのいずれもがハイブリッドシステムと組み合わせているV6エンジンは「VQ35HR」といって旧世代のユニットとなる。一方で、スカイラインのV6ツインターボは「VR30DDTT」であり、これは間もなくフルモデルチェンジするフェアレディZと基本的に同じエンジンだ。

 つまり3Lツインターボについては、まだまだ生産予定で今後の主力エンジンという位置づけだが、3.5LのVQエンジンは2006年から生産されているエンジンであり、いつ役目を終えてもおかしくないタイミングになっている。このあたりも、1モーター2クラッチハイブリッドシステムの見切りをつけるタイミングであるといえる理由だ。

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 あらためて整理すると、スカイラインの3.5Lエンジン+1モーター2クラッチハイブリッド搭載車が生産終了となるのは、ハイブリッドシステムが世代的に古く、そのハイブリッドシステムに組み合わせられているV6エンジンも世代的に古くなっていることが主要因と考えられる。日産としてハイブリッドシステムをe-POWER主体に移行するという技術ロードマップから、1モーター2クラッチハイブリッドが外れてしまっていることが、いったん整理するという判断につながったと考えるのが妥当だ。

 逆にいえば、電動化戦略全体の流れをみれば、スカイラインというモデルが続く限りにおいて、今後もV6ツインターボだけに絞っていくとは考えづらい。スカイライン・ハイブリッドのオーダーストップというのは、未来永劫スカイラインは電動化しないという意味ではないだろう。日産のスポーツイメージを受け継ぐにふさわしい新世代のe-POWERが出てくるまでの、意志ある踊り場と捉えるべきだ。

 事実、スカイラインを生産している栃木工場は、電気自動車「アリア」の生産開始に伴って、まったく新しい生産工法を採用したインテリジェントファクトリーへと進化している。その工場のお披露目では電気自動車だけでなく、エンジン車、プラグインハイブリッド車との混流生産も考慮しているという話もあった。

 実際に栃木工場(インテリジェント・ファクトリー)では、電気自動車のアリアとエンジン車のフェアレディZが混流生産されるという。そうなると同工場で生産されるプラグインハイブリッド車がどんなモデルになるのかということが気になるが、それが次期スカイラインになるというのであれば、ハイブリッドを先行してオーダーストップしたことは納得感がある。

 思えば、現行スカイライン(V37型)のデビューは2014年2月で、すでに8年以上が経っている。プラグインハイブリッド仕様となってフルモデルチェンジしてもおかしくないタイミングだ。スカイライン・ハイブリッドのオーダーストップは、電動化に逆行するものではなく、次なる電動化のステップアップへの期待を高めると捉えるのが、真の日産ファンといえるかもしれない。

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