WEC世界耐久選手権のCEOを務めるフレデリック・ルキアンは、9月に予定されている2022年第5戦富士6時間レースや、2023年以降のカレンダー構成について、現在の状況を説明した。
ルキアンによれば、WECは早ければ2024年には従来の年間8戦のカレンダーへと戻すことを目標としており、世界的にロジスティクス(物流)の問題が続くなか、2023年に1イベントを増やして7戦とすることが、「良いステップ」になるという。
WECはCOVID-19のパンデミック以降、ここ2シーズンは主にヨーロッパでの6レースというカレンダーで行われてきたが、2023年にはハイパーカークラスに多数の新マニュファクチャラーが登場することから、今後数年でレースイベント数が再び増加する可能性がある。
5月上旬に行われた第2戦スパ6時間レースの際、ルキアンは、輸送コストとその信頼性、ブレグジット、ロシアによるウクライナ侵攻などの外的要因が計画に影響を与える可能性があることを強調しながらも、控えめな成長を望んでいることを示唆した。
「もし1戦増えたらいいだろうし、2024年には2戦増えるかもしれない」とルキアンは語った。
「我々は(将来的には)間違いなく8戦に戻るだろうが、おそらく来年はないだろう。そこにはとても多くのパラメーターがある」
「我々は、世界的な物流の面において、多くの問題に直面している。それを無視するということは、真剣な人間ではないということになる」
「カレンダーを作って来季は8戦だ9戦だと言いながら、その4カ月後にカレンダーを修正して6戦とする、などというのは馬鹿げている」
「ロジスティクスの面でも、かなり苦労していることを考慮しなければならない。これは非常に深刻だ。だから急激にレース数を増やすのではなく、最低限のイベント数を確保することが望ましい。それから、チームの予算、自動車メーカーの予算にも注意を払わねければならない」
ルキアンは、2023年に追加されるレースはヨーロッパで行われる可能性があることをほのめかした。これは、将来アメリカのインディアナポリス・モータースピードウェイでレースをする可能性についてロジャー・ペンスキーと話し合いをもったにも関わらず、2023年にアメリカで2戦目のイベントを開催する可能性を実質的に否定したことになる。
また、主要都市でのロックダウンをもたらしている中国の『ゼロ・コロナ』政策を考慮すると、中国・上海のイベント復活も、短期的にはありそうにない。
「いま、我々はに現状のグリッドに加え、これから参戦してくるさまざまな自動車メーカーをアナウンスしているし、WEC(開催)を歓迎したいと考えてくれている国もある」とルキアン。
「だから、これはとても難しいことなのだ。カレンダーを作るということは、自動車マニュファクチャラーにとってのマーケティングのみならず、選手権にとっての経済性の問題でもある」
「モンツァやル・マンを維持することに加え、スパのように歴史的なトラックである、シルバーストンへ行く(復活させる)ことも必要だ。だが、同時に日本やバーレーンといった、(ヨーロッパ外の)地域にも行く必要がある。ひとつだけ確かなことは、我々は10戦以上を開催することはない、ということだ」
ルキアンはまた、次のように付け加える。
「世界がおかしなことになっているは残念だ。問題はお金だけでなく、信頼性の問題でもある。だから私は頭を抱えているのだ」
「『2倍の金額を払えば時間どおりに着く』というのであれば、以前はそれで決まりだった。だが、現在ではそうはいかない。(荷物が)時間通りに出発し、時間どおりに到着することを確認するために、ロジスティクスの面でいくらかの安全性をもたらしてくれる解決策を、我々は見出そうとしている」
「来シーズン、2レースを追加するというアイデアは不可能ではないが、これらの事柄を考慮に入れなければならない。じつに多くのパラメーターがあるのだ」
■2022年富士戦実現に向け“専用船”も検討
ルキアンによれば、過去2年中止に追い込まれている日本の富士スピードウェイへ2022年9月に復帰する計画は予定どおりに進んでおり、別の可能性を指し示すパドックの噂を一蹴している。
「我々はそこに行きたいんだ」とルキアン。
「100%そうなるとは言わないが、95%か99%と言おう。我々は懸命に働いている」
「昨日、DHLとミーティングを行い、まずは富士に間に合うように、次にバーレーンに間に合うように、そしてヨーロッパに戻るためのロジスティクスを確保するための、解決策を検討している」
ルキアンはWECがヨーロッパから日本、そしてバーレーンへと向かうシリーズ専用の船を用意することを検討している、と説明した。
「まずはルートを確保したい。船があちこちに停泊するような事態は避けたいのだ」
「今日、我々が物流の問題に費やしてる時間は、想像を絶するものだ」
「1年半前、私がこの組織に入った頃は、私がこの種の議論に参加することはなかった。いまでは、あらゆる種類の問題が起こっている」
「以前は、チームが軽量であれば、すべてを飛行機に搭載することがきた。いまは、ウクライナ戦争という状況もあり、航空機での貨物輸送の可能性は、限りなく低くなっている。ロシアの会社と仕事することはできないし、ウクライナ籍だったアントノフともね」