ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす企画をお届けしております。今回はNISMOのロニー・クインタレッリ選手から、TGR TEAM au TOM’Sのジュリアーノ・アレジ選手に繋がりました。
しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークがこの企画です。これまでの連載は、まとめページを作りましたのでぜひご参照ください。
今回は、昨年来日した直後からしばしば話す光景を見かけていたロニー選手とジュリアーノ選手というリレー。「美味しいアマトリチャーナパスタの作り方を聞く」というこのコーナーでもなかなかないお悩みをもってきました。事前にアマトリチャーナパスタを食べてから取材に行きましたが、ジュリアーノ流アマトリチャーナの作り方とは? ジュリアーノ選手もがんばって日本語で説明してくれたので、ぜひご一読を!
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■朝昼晩ほとんどゴハンは自炊
──そんなこんなでジュリアーノさん、今回はかなりユルい取材です。いまスーパーGTドライバーでこういう連載をしているんですよ。
ジュリアーノ・アレジさん(以下ジュリアーノさん):けっこうパーソナルな取材ね。オッケー。
──なかなか説明するのが難しいんだけど、昔日本では『笑っていいとも』というお昼休みのテレビ番組をやっていて、それをサンプルにしているのですよ。昔お母さんも出てたよ。
(なんとかうまく説明するべく、1988年に後藤久美子さんが出演していた回の動画をネットで探し、ジュリアーノさんに観てもらいました)
ジュリアーノさん:おー。お母さん!
──めちゃくちゃ若いでしょ?
ジュリアーノさん:そうだね。
──……
ジュリアーノさん:……
(動画に見入ってしまい話が進まないので一時中断。取材の趣旨を説明するのもうまくいかず、ツカみはイマイチでした……)
──そんなこんなで、今回はロニーさんから悩みを受け取ってきました。
ジュリアーノさん:オッケー。それでロニーは何を悩んでるの?
──んと、ロニーから『美味しいアマトリチャーナパスタの作り方を教えて欲しい』って。
ジュリアーノさん:僕の? いいよ。
──というわけで聞きたいんだけど、ジュリアーノは毎日家でゴハン作ってるの?
ジュリアーノさん:ずっと作ってるよ。ほとんど毎日。例えば、朝にゴハンを作って、それからスポーツジムに行ったりランニングに行ったり、フィジカルトレーニングをしたり、あとはたまにトレーニングでオフロードのバイクに乗ったりしてるんだ。もちろん気をつけながら乗ってるけどね。そんな時には、ランチタイムにチキンとサラダ、それから夜にパスタを作ったり。昼にパスタで夜にサラダを食べたりという時もあるよ。
サラダは基本は買ってくるけど、ドレッシングは自分で作ってるよ。すごくシンプルで、誰でもできるようなものだけどね。でも料理は全部僕が作ってるんだ。
──すごいね。自分は料理ぜんぜんしないから。
ジュリアーノさん:少しくらいできた方がいいよ! 奥さん喜ぶよ(笑)。
──まあね。(写真を見ながら)で、ロニーに送った写真を見せてもらったんだけど、すごく美味しそうな料理作るじゃない。
ジュリアーノさん:それはツナパスタね! 普通のツナ缶を買って、トマトソースはなしで作る。基本的に、僕はちゃんとしたレシピがないの。いつもフィーリングで味を足したり、素材を足したりね。しょっちゅうツナパスタは食べるよ。ツナはプロテインが入っているし、パスタはカーボンがあるから、ちょうどいいんだ。
あと、ときどきポモドーロのソースを使うことがあるけどね。ロニーに写真を送ったときはポモドーロが入っていたかな?
■ジュリアーノさん流アマトリチャーナの作り方
──そんなこんなで、アマトリチャーナパスタというのはあまり知らなくて、この間初めて食べに行ったのですよ。すごくシンプルで美味しいよね。
ジュリアーノさん:そう。すごくシンプル。でもアマトリチャーナパスタはいろんな作り方があるよ。僕も何度も作ってきたけど、いつも『ちょっと違うな〜』と思いながら作ってきたよね(笑)。
そのなかでいちばん僕が『これだ!』と思う作り方は、まずグアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)……グアンチャーレ分かる? イタリア食材が売っているところにいかないとないかな。カルボナーラでも使うけど、それをまずオリーブオイルを引いたフライパンで焼くのね。
ちょうどいい焼き加減のときに、まずは一度グアンチャーレは取り出しておく。それから白ワインをそのままフライパンに入れて、ちょっと待ってアルコールが飛んだら、トマトソースを入れて、ペペロンチーノ(この場合は唐辛子)とニンニクを入れてクッキング。
で、その後僕はポモドーロ(トマトソース)を一度取って、ミキサーにかけちゃうんだ。そうして全部ブレンドしちゃうと、空気も入って色がオレンジ色になるんだよ。ポモドーロの味がすごくしっかりするんだ。その後はぜんぶフライパンに入れて、最後は味つけして、そこに取り出していたグアンチャーレを入れて終わり。パスタとよく絡むよ。これが僕のアマトリチャーナ。
──ほほ〜。それはジュリアーノさんのオリジナル?
ジュリアーノさん:少し違うかな。ボロネーゼとかはちゃんとレシピどおり作るけど、アマトリチャーナはけっこうフィーリングで変えちゃう。僕はニンニクを使うけど、他の人は玉ねぎにするときもあるしね。
──面白いね〜。
ジュリアーノさん:そうそう。面白いよ。僕の場合は、すべて舌が選ぶね(笑)。
※編注:
この原稿を書く際にいろんなアマトリチャーナパスタのレシピを見てみましたが、グアンチャーレの代わりにパンチェッタ(豚バラ肉の塩漬け)、ニンニクの代わりに玉ねぎを使う場合が多いよう。あくまでジュリアーノ流なので、ご参考に!
■なぜ料理が得意なの? ちょっとビックリの理由
──ところで、ジュリアーノは料理はイタリアにいたときに覚えたの?
ジュリアーノさん:そうだね。イタリアにいたときは、ずっとレストランに住んでたの。
──レストランに住んでた!?
ジュリアーノさん:そう。なんでかというと、お父さん(ジャン・アレジ)がフェラーリで走っていたとき、イタリア人のチームシェフがいたのね。ルイジ・モンタニーニっていうんだけど、彼はその後ベネトン、プロストに移ったのね。ちょうどお父さんが走っていたチームに移っていたから、お父さんのキャリアのほとんどでずっとシェフをやっていた人なの。
だからすごくお父さんと仲良しで、彼はF1でのキャリアを終えた後、マラネロの近くにレストランをオープンさせたんだ。ちょうどフェラーリのファクトリーから10分くらいかな。その後、僕がフェラーリのドライバーアカデミーとサインした時に、お父さんがルイジに電話して『僕の息子がマラネロに行くからよろしくね』って連絡してくれたんだ。『ルイジに預けるよ』ってね。
ルイジも僕のことを息子同然に面倒をみてくれて、そこで料理を覚えたんだよ! 朝昼晩ずっとそこで食事していたしね。シェフのみんなも仲が良かったし、料理のことは彼らに質問していたんだよ。
──なるほどね! それは面白い。
ジュリアーノさん:他にもいろいろ作るよ。えっと、これは……
(ジュリアーノさんのカメラロールの料理の写真を拝見させてもらいました)
この間はお母さんとうにパスタを作ったよ。美味しそうでしょ? 初めてうにパスタを作ったけど、うまくいったよ。料理は本当に楽しいから、もうほとんど趣味になってるよ!
■スーパーフォーミュラで速く走る秘密を教えて!
──そんなこんなでジュリアーノ、次にお友だちを紹介して欲しいんだけど、仲の良いお友だちは誰?
ジュリアーノさん:もちろん坪井(翔)もすごく仲良しだし、(片岡)龍也も仲良し。それに(福住)仁嶺もヨーロッパにいたときから仲良しだよ。それに(宮田)莉朋もサッシャ(フェネストラズ)も仲が良いよ。
──そうか。坪井さんも片岡さんももう出ちゃったんだよ。
ジュリアーノさん:ふ〜ん。そうか。莉朋は出た?
──莉朋はまだだよ。莉朋いっとく?
ジュリアーノさん:そうだね。莉朋いっとこうかな。日本に来た後からいつも莉朋は僕の先生で、いろんなことを教えてくれたしね。そういえば千代(勝正)は出た?
──千代さんはまだだね。
ジュリアーノさん:千代もすごく仲が良いよ。でもチーム的には莉朋の方がいいかな。莉朋いっとこう。
──では莉朋になに聞いておく?
ジュリアーノさん:そうだな〜。心配、悩み……あんまりないな〜。
──なんでもいいよ。何か聞きたいことある?
ジュリアーノさん:う〜ん。じゃあ、なんでスーパーフォーミュラでそんなに速いのか。でも絶対教えてくれないじゃん(笑)!
──いや、そこはあえて教えてもらおう。なんて答えるかも楽しみだしね。
ジュリアーノさん:そうだね。なんで莉朋がそんなにSF速いのか、シークレットがなにかあるか教えて欲しい。それがいちばんいいかもね。僕それ知りたい(笑)!
──オッケー。ではそれでいっとこう! ジュリアーノさん、ありがとうございました。
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そんなこんなで、90年代F1を観てきた身としてはなんだかなるほど納得な話でした。次回は宮田莉朋選手に繋がりました。ちなみに予告ですが、ジュリアーノ選手から届いた質問をぶつけたときの第一声は「えっ!? いやいやいやいや(笑)」でした。どんな回答が来るのかお楽しみに!