5月10日、富士スピードウェイで行われたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの公式テストでは、今季スーパー耐久が認めた車両が参戦できるST-Qクラスに、カーボンニュートラル燃料を使って参戦を開始したTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptが、新たなパーツを投入した。
Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは、スバルBRZをベースにカーボンニュートラル燃料を使って参戦する車両。スバルドライビングアカデミーのメンバーを中心に、スバル技術本部の社員がレースカーの開発、製作およびチーム運営を担当する。
同じくカーボンニュートラル燃料を使うORC ROOKIE RacingのORC ROOKIE GR86 CNF Conceptとの“勝負”が期待されるマシンだが、3月に鈴鹿で行われた第1戦では、序盤こそテール・トゥ・ノーズのバトルが実現したものの、速さの面では1.4リッターターボを積むORC ROOKIE GR86 CNF Conceptに分があった。
迎える第2戦は富士SUPER TEC 24時間レースとなるが、その第2戦に向けたテストでは、井口卓人/山内英輝/廣田光一という第1戦でもドライブしたメンバーに加え、鎌田卓麻と吉田寿博というふたりが加わり臨んだ。ただ今回登場したBRZはボンネットが第1戦と異なるほか、ドアもカラーリングがされていなかった。
まず目を引くボンネットについて、チームの本井雅人監督に聞くと「今回は性能確認のために作っていて、あの形状にすることでCD値の向上、熱気の抜きを向上させています」という狙いがあるという。今回はなんと3Dプリンタで製作されており、開発車風に迷彩柄が貼られた。テストで性能の見極めを行った後、本番に向けてカーボンで製作される予定だという。
「従来のスバルのチャレンジですと、専門の業者にクルマを作ってもらっていましたが、今回はすべて開発メンバーが作っています。設計、実験、さらに試作部門のメンバーが携わっていますが、その試作部門がやる気満々で、ボンネットもあっという間に作ってくれました。すごく出来が良いんです」
また、サイドのドアについても、こちらもカーボン化したのだという。「開幕戦は純正のままでしたが、パワーウエイトレシオ向上、重心高の低下を狙っています。ドアだけで34kgの軽量化を果たしています」と本井監督。こうした開発は、もちろんORC ROOKIE GR86 CNF Conceptに対して速さで追いつくためだ。
「前回、基本的にST-4の“タガ”を自分たちではめてまずはやってみましたが、速いクルマを作りたいですし、負けるのは嫌いですからね。今回は少しステップアップしてきました。シャシーもST-4では許されてないピロボールを使ったりと、狙った性能を出せるように進めています。我々は開発なので、『ビッグマイナーチェンジ』だと言っています」
この改良されたTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptについて、ドライバーの井口は「さまざまなトライを行ってきてくれた感触はあります」という。ただ、GR86に追いつくためにはまだまだ課題も多いと語った。
「クルマのバランスがまだあまり良い状態ではなく、鈴鹿でもごまかしながら走ったところもあります。その対策はしてもらってきていますが、原因を突き詰め良い状態にするために、チームが探ってくれています」
もちろん、GR86に負けたくない気持ちはドライバーたちも同じだ。井口は「当然、使っているものも全然違いますが、やはりファンの皆さんも“GR86とBRZの戦い”と見ますよね。そこは負けられない部分。ただ制約もあるので、速くなる方法を僕たちなりに探しています」と語る。
Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは社員が携わる車両で、課題もまだまだある一方、新たな取り組みも行っている。本井監督によれば、スバルの宇都宮製作所にある航空部門で出た廃材のカーボンをリサイクルする取り組みなども推進している。「オールスバル体制で挑むのでぜひご期待いただければ」という。
多くのスバルファンの熱い思いは、スーパーGTでもスーパー耐久でも変わらないはずだ。富士でBRZがいかにGR86との差を縮めていくのか、楽しみにしたいところだ。