5月7日(土)に決勝が行われたWEC世界耐久選手権第2戦スパ6時間レースで、LMGTEプロクラスを制したAFコルセのジェームス・カラドは、最終スティントでのフルコースイエロー(FCY)が51号車フェラーリ488 GTE Evo(カラド/アレッサンドロ・ピエール・グイディ組)のクラス優勝に貢献したと述べた。
カラドとピエール・グイディのフェラーリはレース終盤、クラス3番手から2番手に順位を上げてきた、ミカエル・クリステンセン/ケビン・エストーレ組92号車ポルシェ911 RSR-19(ポルシェGTチーム)に背後につかれたが、この追撃を振りきり世界タイトル防衛のための初勝利を得た。
“スパ・ウェザー”に翻弄され大荒れとなったレースを僅差で制した51号車は、チェッカーまで残り1時間26分の時点で最後のピットインを行った。この時点で、クラストップ3につけていた51号車と52号車フェラーリと92号車ポルシェはそれぞれスリックタイヤを装着していたが、92号車ポルシェと52号車フェラーリは残り1時間で燃料補給のためにふたたびピットインする。
GTEのグリーンフラッグ・スティントは通常1時間だが、51号車フェラーリはFCYのようなスロー走行を行う時間帯を利用し、時間的コストが掛かる追加のピットストップを行わずに最後まで走りきることに成功した。
「フルコースイエローがなかったら、スプラッシュしていただろうね」とカラドはSportscar365に語った。
「しかし、僕たちはもう1度フルコースイエローがあることを期待して賭けにでた。ポルシェの方が速かったから、勝つにはそれしかなかったんだ」
「でも、それと同時に僕も優勝するために心を駆り立てて走ったんだ。なんとかうまくいったけど、プレッシャーが大きかったのも事実だ。コースの一部はまだウエットラインだったため、難しいコンディションだった。ときにはリミットを超えているときもあったけど、いい戦いだった」
カラドは、レース終盤の90分間で計3回出されたFCYの2回目の後、残り45分のタイミングでフェラーリが彼に燃料のゆとりを与えたと説明した。
ガス欠の可能性がどれくらい近くにあったかを尋ねられたとき、彼は「燃料計のランプが見えなかった」と述べた。
「最後に合計3回のFCYがあり、それに救われた。2回目のイエローの後に『プッシュしても大丈夫』だと言われた気がする」
■一か八かのソフトタイヤ投入
その後、カラドの注意は背後に迫ったクリステンセンの猛攻をかわすことと、タイヤのマネジメントに向けられた。
「この週末にずっと使っていなかったタイヤコンパウンドを使用していた」と彼は説明した。
「最後の方はかなりグリップを失い始めていて、大変だったよ。とくにオー・ルージュでは厳しく、クルマを失わないようにするので精一杯だった」
「アレ(アレッサンドロ・ピエール・グイディ)と交代したとき、まだ路面はかなり濡れていた。そこで僕たちはより柔らかいコンパウンドのタイヤを選択した。それは通常のコンディションではうまく使えないと思っていたものだ」
「それから(タイムの)大きな落ち込みが出てきて、心配になった」
「でも正直なところ、ポルシェも同じだったと思う。なぜなら、同じようなウォームアップと、同じようなドロップがあったためだ。あちらの方がペースがあった状態でもね」
■ラインを外せない状況でプッシュし続け「相手がミスをすることを願うしかなかった」
クラス2位に終わった92号車ポルシェのクリステンセンは、レース終盤にライバルよりも速いクルマを持っていたにもかかわらず、フェラーリをパスする場所を見つけるのは、レーシングライン以外にグリップのあるオプションがなかったため困難だったという。
「もし走行ラインが1本だけなら、オーバーテイクするためには濡れている路面に出なければならない」とSportscar365に語ったクリステンセン。
「確かに最終的には一本のラインではなかったけど、追いかけるのは大変だった。1列半のラインがあるときにアウトブレーキングできるほど近づくのは、本当に難しかった」
「とにかくプッシュし続け、相手がミスをすることを願うしかなかったんだ」
「(バトルが)楽しかったのは間違いない。でも、できれば勝ちたかった。確かにペースは良かったが、それとオーバーテイクは別物。ただ、それができなかっただけなんだ」
一方、カラドはクリステンセンから順位を守るために、レーシングラインから大きく外れることができないことを理解していた。
クリステンセンは最終ラップのバスストップ・シケインで最後の勝負に出たが、右コーナーではらんでしまい、続く左コーナーでフェラーリに並ぶことがができなかった。
「コースは半分がウエットで、もう半分が乾いていた。僕はタイヤの温度を上げるためにドライの部分をオーバードライブしていた」とカラド。
「できることはすべてやっていた。クリステンセンが後ろに来たとき、彼は隙があれば狙ってくるだろうと思っていた。最後の方には少し突かれたけど、僕はその状況下でもうまく防御できたしいいバトルができた」