ミッションH24は6月8日、ACOフランス西部自動車クラブとの共同プログラムである“Mission H24”の水素燃料電池プロトタイプカーが、サルト・サーキットのストレートで290.8km/hをマークしたと発表した。
水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を生み出し、その電力をもとにモーターで駆動力を得る燃料電池車(FCV)。ミッションH24はこの次世代のパワートレインを採用したクルマによる2025年のスポーツカーレース実施に向け、ル・マン24時間レースの主催団体であるACOと共同で車両やシステムの先行開発を行っている。
FCVベンチャーのグリーンGTとACO、さらにトタルエナジーズやミシュランなど複数のパートナーがタッグを組むこのプロジェクトでは昨年に引き続き、開発車両である『グリーンGT H24』によるサルト・サーキットの走行を計画し、ル・マン24時間レースを戦うプロトタイプカーに迫るトップスピードを記録することを2022年の目標に定めた。
その記録は現地8日(水)13時49分、ル・マン24時間のサポートレースであるロード・トゥ・ル・マンの最初のプラクティスでマークされた。開発ドライバーのステファン・リケルミが乗り込んだFCVプロトタイプカーは、天気の急変によりコース上に雨粒が落ち始めるなか13時47分にピットアウトする。
同プログラムで現場のオペレーションを担うH24レーシングのスタッフのもとには、サルト・サーキットにおけるトップスピードの計測地点があるミュルサンヌ・ストレートの第1シケイン手前のマーシャルポストから「雨が降り始めた」ことが伝えられる。これはチャレンジが1度きりであることを意味した。
そうした状況であるため、リケルミはスリックタイヤを履いてのピットアウト直後から、雨に濡れ始めた路面で予選アタックのような走行を強いられることとなった。
13時49分、グリーンGT H24がピットロードから3.7km離れた計測地点を通過。この瞬間、ル・マンのサーキットスクリーンには「290.8km/h」という数字が表示された。しかし、コクピット内のスピードメーターは292.8km/hを示していた。
これはFCVプロトタイプが計測地点を過ぎたあとも加速し続け、第1シケインへのブレーキングまでに、さらに2km/hのスピードアップを果たしたことを意味している。また、コースサイドのテレメトリーシステムにおいても同様のスピードが記録されていた。
この結果、今回のミッションは達成され順調に事を進めたチームスタッフたちは緊張の連続から開放された。全員がメゾン・ブランシュのパドックに戻ると速やかにテクニカルブリーフィングが行われ、今回記録されたトップスピードが正式に更新されている。