小さいながらも本格的な4WD走行を可能にするジムニー。どんな悪路も乗り越え、あらゆる道を思いのままに駆け抜ける。だからこそこんな道にチャレンジしてみた!
小さいながらもタフなヤツ
国道ならぬ酷道、県道ならぬ険道。国土の75%が山地でできている日本にはそういう道がまだいくらもある。激狭あり、激坂あり、落石あり、落枝あり、雨が降れば、沢の流れが道を横切る。クルマが快適に安全に走れるのが道路だと思っていたら大間違いの極悪非道だ。そんな逆境でいちばん頼りになるSUVがジムニーである。
日本の道路の84%は平均幅員3.8mの市町村道だという。VWゴルフが2台並んだら、20cmしか余らない。その点、幅1.48mの軽自動車はラクだ。軽がこれだけ売れる理由のひとつはそもそもそこだろう。
足場の悪い峠道を上っているとき、杉の丸太を積んだトラックが上から下りてくる。どう考えてもすれ違えない。こっちがバックするしかない。そんなときもジムニーならサイコーにラクである。このクルマもボディサイズは軽の規格枠いっぱい。軽ハイトワゴンと道路占有面積は同じだが、ジムニーは縦置きエンジンのロングノーズだから、車室長が短い。運転席から振り返って、これほど後ろが近くに、よく見えるクルマはない。ボディ側面は垂直で、”絞り”はまったくないから、ドアミラー頼りのバックもやりやすい。
小さいだけでなく、軽いのも武器である。四駆なのに車重は1トンそこそこ。崩れやすそうな崖側の路肩に寄せるときもいちばん安心な本格四駆である。ボディが軽ければ、深雪やぬかるみにも強い。
ジムニーが登場したのは1970年。現行モデルで4代目になる。20年ぶりにフルチェンジしたこのジムニーで感心するのは、オフロード性能を落とさなかったことだ。ジムニーも今は大半が町乗りで使われることをメーカーも認めている。だが、山間部や雪国など、”ミニ四駆”でしか走れないところで使うユーザーがジムニー支持層の基礎票である。モデルチェンジで軟派方向のソフト路線にコロばなかったオフロード四駆車は、世界的にも珍しい。
エンジンの静粛性を上げ、乗り心地を向上させつつ、しかし頑丈なラダーフレームやリジッドアクスル(固定軸)などの基本構成は変えなかった。205mmの最低地上高は依然、軽最大だ。
常時四駆でも自動四駆でもない、昔ながらのパートタイム4WD。二駆との切り替えは人間がやる。しかも、電気接点のプッシュボタンだった旧型に対して、新型はアナログのチェンジレバー方式に戻している。ボディ形状も、角の丸い先代から四角四面デザインに先祖返りした。
ジムニーを運転していると、堅固な鋼鉄製ハシゴ型フレームの上に載っている”実感”が常にある。それがジムニードライブのおもしろさでもある。オフロードフィールドに向かう途中、いいペースでターマックのカーブを曲がると、グラッと傾く。でも、傾いたところで安定している。床下のラダーフレームが、ヨットの船底から延びるキール(おもり)をイメージさせる。
試乗車は5速MT。7000rpmまで引っ張って658cc 3気筒ターボを使い切ると、オンロードではちょっとしたスポーツカーである。でも、それは余技。
筆者はマウンテンバイクで山に登る。クマよけの鈴を鳴らし、ポンコツの”人間エンジン”をドックンドックンいわせながら未舗装の急峻な林道を上ってゆくと、突然、前からクルマが下りてきたり、崖っぷちに止まっていたりする。エッ、こんなところに四輪車が!? と驚かされるのは、まずたいてい新旧のジムニーである。電力会社のパトロールカーのこともあれば、山歩きの帰りなのか、熟年のカップルがニコニコしながら乗っていたりすることもある。
ジムニー、恐るべし。
【Specification】スズキ・ジムニー
■全長×全幅×全高=3395×1475×1725mm
■ホイールベース=2250mm
■車両重量=1030kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/658cc
■最高出力=64ps(47kW)/6000rpm
■最大トルク=96Nm(9.8kg-m)/3500rpm
■トランスミッション=5速MT
■サスペンション(F:R)=リジッドアクスル:リジッドアクスル
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ドラム
■タイヤサイズ(F&R)=175/80R16
■車両本体価格(税込)=1,776,500円
■問い合わせ=スズキ 0120-402-253
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