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 5月7日、ベルギーのスパ・フランコルシャンでWEC世界耐久選手権の2022年第2戦スパ6時間レースが行われ、3回の赤旗中断に加え、セーフティカー(SC)、フルコースイエロー(FCY)が度々導入される悪天候の難コンディションのなか、トヨタGAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)が今季初優勝を飾った。

 アメリカ・セブリングで3月に開幕したWECは、欧州のベルギーで第2戦を迎えた。最高峰ハイパーカークラスでは戦前にBoP(性能調整)が変更され、開幕戦で優勝を遂げたアルピーヌ・エルフ・チームのアルピーヌA480・ギブソンがエンジン出力の削減措置を受け、この影響も注目される戦いとなった。

 6日に行われた予選では、グリッケンハウス・レーシング708号車のグリッケンハウス007 LMHが初ポールポジションを奪い、以下アルピーヌ36号車、トヨタGR010ハイブリッドの7号車、8号車と続いた。

■8号車がリタイア。前半はハイパーカーとLMP2が入り乱れる

 決勝レース、ハイパーカークラスではポールポジションのグリッケンハウス708号車がオリビエ・プラ、2番手アルピーヌ36号車はアンドレ・ネグラオ、3番手トヨタ7号車はマイク・コンウェイ、4番手トヨタ8号車はセバスチャン・ブエミがスタートドライバーを務めた。

 気温18度/路面温度32度というドライコンディションのなか、現地時間13時にレースがスタート。オープニングラップでは、トヨタ2台がアルピーヌをパスし、8号車が2番手、7号車が3番手となったところで、コースオフ車両のためにSCが導入される。

 レースが再開されると、首位グリッケンハウスと2番手トヨタ8号車とのギャップは、1秒前後で推移。しかし35分が経過したケメルストレートエンドでブエミがプラをパスし、トップに立つ。続いてコンウェイもグリッケンハウスに襲い掛かり、最終シケインでオーバーテイク。トヨタのワン・ツー体勢が完成する。プラのペースはここからかなり落ち始め、トヨタ2台がギャップを広げていった。

 最初のピットタイミングが近づく頃には、コースのところどころに部分的に雨が落ちてくる。23周目にグリッケンハウスがピットイン。24周目にアルピーヌ、25周目にトヨタ7号車、26周目にトヨタ8号車がピットへと向かう。トヨタ2台はタイヤを交換せず、Wスティントに突入していった。

 この直後、1時間が経過したところで2番手を走行する7号車の目の前でLMP2車両がスピン、クラッシュ。SC導入が宣言されたのち、赤旗が提示されレースは中断となった。

 この中断中に雨が強くなり、再開10分前が告げられると同時にレインタイヤへの交換がレースディレクターより許可された。ホームストレート付近ではほとんど降っていないものの、ラディヨンの丘の上はフルウエット状態となっている模様だ。

 SCランでのリスタートとなるが、ここで先頭の8号車が始動に手間取る。なんとかSCに遅れて発進したブエミだったが、ケメルストレートで一旦マシンを止め、システムをリセットする。しかし根本的な解決には至っていないようで、ブエミは再びターン12入口でマシンを止めるとチームからの指示でマシンを降り、リタイアとなった。ハイブリッド系のトラブルとみられる。

 7号車を先頭にSCランは続いたが、雨のためにスピンするマシンが続出。最終シケインではグリッケンハウスもスピンを喫するなか、総合2番手にはLMP2のプレマ・オーレン・チーム9号車、3番手には同じくWRT31号車が浮上してくる。

 雨が強まるという予報もあってか、トヨタ7号車をはじめスリックタイヤ勢が軒並みピットインし、レインタイヤへと交換を行う。SCランが続くなか、首位はWRT31号車、2番手にアルピーヌ、3番手にトヨタ7号車という並びになった。

 2時間が経過する直前、天候が悪化するなか再び赤旗が提示され、レースは2度目の中断となった。

■天候回復とともにハイパーカー勢が復調

 雨量が幾分少なくなったことで、2時間25分経過時点でセーフティカー先導のもとリスタートが切られ、2時間31分時点で競技が再開される。

 ここで2番手アルピーヌのネグラオをコンウェイが攻め立て、次の周に入った1コーナーでポジションを奪う。

 首位の31号車フラインスは水煙の影響を受けにくい先頭走者の利点も生かしてか、2番手のトヨタ7号車を寄せ付けないペースで走行を続け、レース折り返し目前では19秒ほどのギャップを築き上げた。

 3時間経過目前、雨が一段と強くなりスピン・コースオフを喫する車両が増えるなかFCYが導入されると、首位のWRT、3番手アルピーヌらががピットへ。これにより、ステイアウトしたトヨタ7号車がトップに立つ。

 次の周、7号車がピットへ入り、スタートから3時間以上ドライブを続けてきたコンウェイから小林可夢偉へドライバー交代。WRTが再び首位に浮上し、トヨタ7号車は2番手となる。3番手には、グリッケンハウスがつける展開となった。

 約10分後、FCYは解除に。しかしその直後、LMP2のインターユーロポル・コンペティション34号車アレックス・ブランドルがターン9出口で水に乗ってクラッシュすると、今度はSCが導入され、やがて3時間20分経過を前に3度目の赤旗が提示された。

 3時間40分時点でレースは再開、SC先導のもと隊列が動き出す。GTE車両の送り出しが行われたことから各車のギャップはリセットされ、残り2時間8分でSCが退去となった。

 雨量が少なくなり、薄陽が差し込むなか、首位WRT31号車に対して差を詰めたトヨタ7号車可夢偉は、残り1時間57分というところでトップに浮上する。さらにグリッケンハウスのデラーニもフラインスをパスし、天候の回復とともに総合1・2番手をハイパーカーが奪い返す格好となった。

 後方では、一度は順位を下げていたアルピーヌもLMP2車両を抜いていき、総合3番手に順位を回復してきていた。

 首位に立った可夢偉は、ケメルストレートエンドの水煙のなかでバックマーカーと交錯しランオフエリアを走る場面も見られた。グリッケンハウスに対して徐々にリードを築くなか、雨はほぼ上がりレコードライン上はかなり乾いていく状況に。

 残り1時間半を切り、ターン8でLMP2のベクター・スポーツ10号車のセバスチャン・ブルデーがコースオフ。これにより、このレース2回目のFCYが導入された。

 ここでハイパーカークラスの3台は同時にピットイン。トヨタ7号車とアルピーヌがインターミディエイト、グリッケンハウスはスリックを選択する。さらにここでは先にマシュー・バキシエールへの交代を終えたアルピーヌが、ロマン・デュマへと変わったグリッケンハウスに先行、2番手と3番手が入れ替わった。

 トヨタは可夢偉からホセ・マリア・ロペスへと交代し、首位をキープ。一方でFCY解除後、グリッケンハウスは再びピットへと向かい、タイヤをインターミディエイトへと交換をする。どうやら、最初にスリックへと交換する時点で無線でのミス・コミュニケーションがあった模様だ。これにより、グリッケンハウスは総合7番手へと順位を下げた。

 ウエット路面が残る不安定なコンディションのなかスリックへと履き替えたことで、コースオフする車が続出。残り1時間を前にFCY導入となった。

 そしてFCY解除となった直後、LMP2車両がクラッシュしたことにより、またしてもFCYに。残り44分で再び解除となり、レコードライン上はほぼドライというコンディションで競技が再開された。

 このあともFCYが導入されたが、2台の位置関係に変わりはなく、トヨタ7号車が今季初優勝のチェッカー。アルピーヌが2位に続き、総合3位はLMP2クラス首位のWRT31号車となった。

■クラッシュとバトル多発のなか、WRTがLMP2優勝を飾る

 LMP2クラスでは、ポールポジションを獲得したプロ/アマカテゴリーのAFコルセ83号車オレカ07・ギブゾンが、アレッシオ・ロベラでスタート。WRTの31号車はショーン・ゲラエル、ユナイテッド・オートスポーツUSA22号車はウィル・オーウェンがスタートを務めた。

 1周目でJOTA38号車のアンドニオ・フェリックス・ダ・コスタがトップへと浮上WRT31号車、AFコルセ83号車という並びで最初のスティントは進んでいった。最初のピットで83号車がペロードへとドライバーチェンジしポジションを落とすと、2番手WRTのゲラエルと、背後のプレマ・オーレン・チーム9号車のロレンツォ・コロンボのポジション争いが激化する。最終的にはラディヨンでGTクラスが絡んだところで、コロンボが2番手を奪取する。

 1時間が経過したところで、ARCブラティスラバ44号車がターン13立ち上がりでクラッシュ、赤旗となった。

 この後、2度目の赤旗時点ではWRT31号車が総合トップに浮上。クラス内では9号車がこれに続いたが、ユナイテッド・オートスポーツUSAの2台がこれをパスし、表彰台圏内へと浮上する。

 残り2時間を切り、雨量が少なくなってきたところで4〜8番手争いが激化。リアルチームby WRT41号車、プレマ9号車、JOTA38号車、JOTA28号車、チーム・ペンスキー5号車、AFコルセ83号車らが接近戦を繰り広げる。

 このあと、FCYのピットタイミングでユナイテッドの23号車はタイムロス。プレマ9号車のルイ・デレトラズはクラッシュを喫し、ピットへ自走で戻ってカウル類を交換した。

 グリーンになった直後、JOTA28号車のジョナサン・アバディーンがクラッシュを喫し、またしてもFCYに。この、レース残り50分というタイミングでトップの31号車、2番手41号車、3番手22号車が相次いでピットへ。

 レースが再開されると、ユナイテッド22号車のフィル・ハンソンがリアルチーム41号車のハプスブルクをパスし2番手へと躍り出るが、さらにハプスブルクが抜き返す白熱のバトルが展開される。ハプスブルクがなんとか2番手を守った一方、ハンソンは最終シケインでスピンを喫すると、JOTA38号車にクラス3番手の座をゆずってしまう。

 さらにハンソンは、後ろからやってきたペンスキーのフェリペ・ナッセと乾いたラインが1本しかないオー・ルージュにサイド・バイ・サイドで突っ込んでいくが、ここはハンソンがポジションを守る。

 さらにハンソンは前をゆくグリッケンハウスをもパスし、クラス4番手・総合6番手へと順位を回復。続いてナッセもグリッケンハウスを抜いていく。

 残り21分で導入されたFCYの際、トップ4台のWRT31号車、リアルチーム41号車、JOTA38号車、ユナイテッド22号車は最後のピットへ向かう。ここでステイアウトしたペンスキー5号車が4番手へと浮上し、ピットアウトしたユナイテッド22号車とポジションを争うが、ペンスキーが順位を守り切った。

 首位をゆくWRT31号車は残り数分のところで目の前の車両がスピンしたところに軽く接触するも、なんとか無事チェッカーまで走り切り、ゲラエル/フラインス/レネ・ラストがクラス優勝と総合3位を手にした。クラス2位はリアルチー41号車、3位はJOTA38号車となった。

■両クラスとも最終周まで首位争いが続いたLMGTE

 LMGTEプロクラスでは、2番手スタートのポルシェGTチーム92号車ケビン・エストーレが1コーナー進入でブレーキングスモークを上げ、PPスタートだった僚友91号車ジャンマリア・ブルーニのインへ。両車がアウトにはらみ、1コーナー立ち上がりでは縁石上でバランスを崩した92号車が91号車と側面同士で接触。91号車は左リヤのタイヤ&ホイールにダメージを負い、スロー走行でピットへ向かい、早くもラップダウンとなってしまう。

 オープニングラップのうちにSCが導入された時点で、92号車ポルシェ、AFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evo、コルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC8.R、52号車フェラーリという並びとなるが、リスタート後にはコルベットのニック・タンディが51号車フェラーリのアレッサンドロ・ピーエル・グイディをパスして2番手に浮上する。

 1度目の赤旗からのリスタートにおけるSC先導走行時には、各陣営がウエットタイヤへの交換を行った結果、ピット回数が1回少ない52号車フェラーリが首位に立ち、92号車ポルシェ、51号車フェラーリと続くオーダーとなっていた。

 レース中盤はこの順位のまま推移。残り1時間半を切って導入されたFCYの際、3番手の51号車フェラーリがピットイン。いち早くスリックへと履き替え、92号車の前、2番手に立つ。

 残り1時間、FCYタイミングでステイアウトした51号車フェラーリが首位へと浮上する。解除後は、52号車と92号車が激しい2番手争いを展開した。残り26分、何度目かのチャレンジの末、92号車クリステンセンはアントニオ・フォコをパスし、2番手にポジションを上げると、1秒前をゆく51号車フェラーリに迫っていく。

 しかし51号車ジェームス・カラドのテールにぴたりとついた残り21分、LMGTEアマクラスのクラッシュ車両発生のためFCYが導入され、勝負に“待った”がかけられる。

 レースは残り10分で再開。2台はコンマ差のバトルを最終ラップまで続け、最終コーナーでは3番手の52号車も背後に迫るなか、51号車フェラーリが守り切ってクラス優勝を決めた。

 13台が出走したLMGTEアマクラスでは、オープニングラップでアイアン・デイムスの85号車フェラーリ488 GTE Evoがターン1のグラベルにコースオフ。セーフティカーが導入されると、ノースウエストAMRの98号車アストンマーティン・バンテージAMRが首位に立つ。

 レースが再開されるとプーオン進入でPPスタートだったTFスポーツ33号車アストンマーティンのベン・キーティングがトップを奪い返す。

 その後方ではDステーション・レーシング777号車アストンマーティンでクラス7番手からスタートドライバーを務めた藤井誠暢が得意のチャージを見せ、開始35分のところでは2番手にまで浮上。さらに星野敏へと交代すると、赤旗からのセーフティカーリスタートのタイミングでは一時クラス首位へと浮上する。

 その後、2度目の赤旗からのリスタート時には、AFコルセの21号車フェラーリがクラス首位に立っていた。雨が降り続くなか、最終コーナーではDステーション・レーシングの星野がアイアン・デイムスの85号車フェラーリと交錯し、スピンを喫する場面も。

 中断が繰り返された中盤からは、チーム・プロジェクト1の46号車ポルシェ911 RSR-19がクラス首位に立ち、2番手にはAFコルセの54号車フェラーリがつける。

 その後もトップはめまぐるしく順位が入れ替わり、残り44分のリスタート後にはデンプシー・プロトン・レーシング77号車ポルシェが首位に立つが、上位陣は僅差の戦いに。ラスト20分では77号車ポルシェにTFスポーツの33号車アストンマーティン、ノースウエストAMRの98号車アストンマーティンの順で、トップ3台が1パックを形成する、緊迫の展開となった。

 しかしデンプシー・プロトンの77号車が最後まで逃げ切り、クリスチャン・リード/セバスチャン・プリオール/ハリー・ティンクネルがクラス優勝を遂げた。

 Dステーション・レーシング777号車アストンマーティンは、クラス7位でレースを終えている。

 WECの次戦第3戦は、いよいよシリーズの象徴、ル・マン24時間レースとなる。