6月4日土曜日、ル・マン市内のリパブリック広場では、第90回ル・マン24時間レースの公開車検2日目が行われた。土曜日ということもあり、多くの観客がマシンやドライバーを一目見ようと集まった。
この日は晴天でスタートしたものの、午後には小雨が降る時間帯も。初日の金曜日に39台が参加受付と車検を済ませており、残る23台が事前に定められたスケジュールを元に順次サーキットから運ばれ、広場に姿を現した。
日本勢ではトヨタGAZOO Racingの2台のGR010ハイブリッドのほか、LMGTEアマクラスに通年参戦するDステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMRも2日目に登場。
この他、今季初めて2台体制となるハイパーカークラスのグリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMH、LMGTEプロクラスでの激しい戦いが予想されるAFコルセのフェラーリ488 GTE Evo勢、ポルシェGTチームのポルシェ911 RSR-19勢などが姿を見せた。
■ドライバー186人中、49人が車検を欠席
1日目にも触れたとおり、この車検とテストデーの週末は他のレースシリーズとバッティングしており、合計49名ものドライバーが2日間の車検と参加審査を欠席した。
アメリカ・デトロイトのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているドライバー12名、インドネシア・ジャカルタでのフォーミュラEに参戦する6名、そしてフランス・ポール・リカールで開催されているGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/エンデュランス・カップに出場する27名は、ル・マン市内での公開車検に出席することが叶わなかった。
AFコルセのLMGTEプロクラスの2台・6名のドライバーでは、アレッサンドロ・ピエール・グイディだけが車検場に姿を現した。彼の5名のチームメイトは全員、ポール・リカールでのGTWCヨーロッパに出場していたからだ。
なお、ニック・キャシディ、ロビン・フラインス、サム・バード、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、セバスチャン・ブエミ、アレキサンダー・シムスの6名のフォーミュラE参戦ドライバーは、5日のテストデーのセッションに参加するため、インドネシアからフランスへ夜間のフライトで移動する予定だ。
大会をオーガナイズするACOフランス西部自動車クラブは、この公開車検の週末に参加審査を受けなかったドライバーに、3000ユーロ(約42万円)の支払い義務を課した。ル・マンの特別規則第5.1.1条には、この支払いは車検の7日以上前に書面を提出したエントラントに課せられるものと記されてる。
これについてアイアン・リンクスの共同創設者であるアンドレア・ピッチーニは、スポーツカーレースシリーズの主催者は、この時期にカレンダーを重複させるべきではない、と提案している。
「なぜなら、このような混乱があり、全員がペナルティを支払わなければならないからだ」とピッチーニは語る。
アイアン・デイムス85号車フェラーリのすべてのドライバーは、GTWCポール・リカール戦の予選30分前に設定された、ル・マンの公開車検を欠席した。3名のドライバーとふたりのエンジニア、そしてアイアン・リンクス60号車のアレッサンドロ・バルザンは、ポール・リカールのある南仏ル・カステレからル・マンまで、夜行便で移動する予定だ。
一方、チームWRTのロルフ・イネイシェンのように、本来金曜日に割り当てられていた参加審査枠を欠席した後、土曜日に審査を受けたドライバーもいる。
■テストデーでの雨を望むプレマ
第2戦スパ6時間レースで、プレマ・オーレン・チームのウェットコンディションでのペースに影響を与えた問題はセットアップに関連するものであったと思われ、チーム代表のレネ・ロジンは9号車オレカ07・ギブソンに機械的な故障や破損は見られなかった、と語っている。
「じつは、検証のために(テストデーでは)雨を期待しているところなんだ」とロジンはコメントしている。
「いくつかの要素が混ざり合ったものだった。我々は失敗から学ぶ必要がある」
ロジンはまた、決勝が行われる来週末には、彼自身が初めてFIA F2のレースを欠席することになる、と述べている。F2がサポートレースに組み込まれるF1世界選手権のアゼルバイジャンGPは、ル・マンの決勝日とバッティングしている。
これについてロジンは、FIAのスポーツ部門副議長を務めるロバート・リードが最近述べた「このような日程重複は将来的に避けるべき」とのコメントを支持している。
■8年連続出場、ベン・キーティングの“初”
ベン・キーティングは、2015年の初出場以来初めて、2年連続同じ車両でのル・マン出場を目前に控えている。テキサス出身の彼は、今年もTFスポーツの33号車アストンマーティン・バンテージAMRでLMGTEアマクラスへと参戦する。
「これ以前に、僕は7台(車種)のクルマで、7回のル・マンを経験してきた」とキーティング。
「今回、アストンで再び走るのは、このレースでのアストンの走りが本当に気に入ったからだ」
キーティングがこれまでバイパー、オレカ、ライリー、フェラーリ、フォード、ポルシェでル・マンに出場している。
2024年にLMGTEがGT3をベースとするクラスへと生まれ変わった後については、LMP2でもっとレースをしてみたいと考えている、と車検場のステージ上でのインタビューでキーティングは答えている。
「(ABSが搭載される)GT3車両のブレーキは、全員をヒーローにしてくれると思う」と彼は述べた。
「それはドライバーのスキルの一部を奪い、僕にとっての楽しみの一部も奪うものだと思っている」
キーティングがドライブするTFスポーツ33号車は、車両のカラーリングを一新している。4ホースメンのサポートを受けるアストンマーティンは赤を基調としたデザインとなり、これまで大部分を占めていた水色はサブカラーとして使用されている。
■懸念される富士6時間レースの輸送コスト
9月に開催されるWEC第5戦富士6時間レースは開催への準備が順調に進んでいるようで、複数のチーム首脳は輸送計画がまとまりつつあることを確認している。
ただし、あるチーム代表はコンテナ1個につき約4万ユーロ(約561万円)のコストがかかると語っており、運賃の上昇が懸念されている。
* * * * *
2日間の公開車検が終了し、5日(日)からは市内南部のサルト・サーキットへとイベントの舞台が移る。5日のテストデーは、9時からの4時間と、14時からの4時間、計8時間のセッションが予定されている。