開幕戦セブリングの終了から約1カ月半後の5月5日、WEC世界耐久選手権第2戦スパ6時間レースが幕を開ける。“ル・マンの前哨戦”に位置づけられる、今レースの走行初日を前に得られたトピックスをベルギー、スパ・フランコルシャン・サーキットのパドックからお届けする。
■サーキット改修後、初めて行われるメジャーレース
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今週末のトタルエナジース・スパ6時間レースは、WECにとってベルギーにある4.35マイル(7.004km)のサーキットへの11回目の訪問となる。これはル・マン24時間レースと並んで、WECの全シーズンで開催されているふたつのイベントのうちのひとつであることを意味する。
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スパ・フランコルシャン・サーキットは、12カ月前にWECが訪れたときとは大きく様変わりしている。コースに入ると、ラ・ソースとオー・ルージュの間にあったグランドスタンドが撤去され、巨大な土手ができているのが目に付く。また、オー・ルージュとラディオンのコンプレックスを見下ろす堂々たるグランドスタンドが新設され、各コーナーではグラベルのランオフエリアを見ることができる。
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4日(水)午後、サーキットではオー・ルージュの新しいグランドスタンドのオープニングセレモニーが行われた。また、同日の午後にはトラックウォークが実施され、一部のドライバーはサーキットのインフラの変化を初めて間近で見ることができた。
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先週、WECに参戦しているWRTやベクター・スポーツを含むいくつかのプロトタイプチームが、モンツァで行われた合同テストに参加した。このテストには、ニールセン・レーシングやDKRエンジニアリング、クール・レーシング、TDSレーシングといったル・マン24時間レースに出場するチームも登場。これらのチームは、今年後半に同地で開催されるELMSヨーロッパ・ル・マン・シリーズのイタリア・ラウンドにも参加する予定だ。
■ポルシェが目論むル・マン24時間に向けたプラン
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ポルシェは、2023年のル・マン24時間にIMSAベースのLMDhマシンを持ち込みたいと考えており、同社のモータースポーツ責任者であるトーマス・ローデンバッハはSportscar365に対して次のように述べている。「もし我々に自由な選択があるのなら、4台のマシンをグリッドに並べたい。しかし、それが可能かどうかを確認しなければならない。予算的なこともある。だが、我々の野望の実現は主にACOフランス西部自動車クラブにかかっている」。
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ポルシェは、ル・マンでの最後のGTEプロレースで、ファクトリーチームとともに“何か特別なこと”を計画している。ローデンバッハは、ドイツのメーカーが何を想定しているかについては語ろうとしなかったが、「あのクルマは最後の年に注目されるに値すると思います。何か特別なことをきちんとやろうと考えている」と語った。ポルシェはこれまでにもル・マンのために特別なマシンカラーリングを展開してきた。
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ローデンバッハは、記念事業以上にGTEプロでの最後のル・マンでポルシェがより競争力を発揮することを望んでいると強調した。「911 RSRの2年間は、我々にとって良いものではなかった」と彼は言う。「私はACOとFIA国際自動車連盟を信頼しているし、自信もある。しかし、我々にとってまず重要なことは、あらゆる特別なことのほかに、適切なBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が必要だということだ。もっとも重要なことは、その最後の年に勝利を目指す可能性があるということなんだ」
■ニュル24時間の予選レースと同週末開催
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グリッケンハウスの007 LMHシャーシは、開幕戦セブリング1000マイルで使用されたものと同じものであるという。チーム代表のルカ・チャンセッティはSportscar365に、709号車はセブリングが開催される前にヨーロッパに輸送されたが、チームはマシンを交換していないと語った。彼は、「ゼッケン708で走っているクルマは通常、我々のシャシー8で、709はシャシー9だ」と説明している。
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グリッケンハウス・レーシングとその運営パートナーであるポディウム・アドバンスト・テクノロジーズは、今週末のスパ6時間とニュルブルクリンク24時間の予選レースの両方に参戦している。TFスポーツも今週末、アルデンヌとアイフェルの両方に別々のチームを利用して参戦する。WECのフルタイムメンバーでニュルブルクリンクに派遣されているのは、777号車Dステーション・レーシングのメカニックだけだ。チーム代表のトム・フェリエはWECスパが終わり次第、日曜日の予選レース2のためにドイツへ向かう予定となっている。
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TOYOTA GAZOO Racingヨーロッパ(TGR-E)の副会長でル・マンを3度制した中嶋一貴氏は先月、トヨタGR010ハイブリッドの日本ツアーを実施。トヨタのLMHプロジェクトに携わるテクニカルパートナーを表敬訪問した。
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TGRは、オランダのハーグにあるローマン博物館にトヨタTS050ハイブリッドを1台寄贈した。当該の車両は2020年ル・マン24時間レースでマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペスの手によって総合3位となった7号車だ。
■2015年型アウディR18 e-tronクワトロが売りに出される
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ロンドンに拠点を置くスーパーカーディーラー、ジョー・マカリは、アウディR18 e-tronクワトロを出品した。ハイブリッドLMP1マシンが一般市場に登場するのはこれが初めて。この車両はシャーシ416で、2015年WECの富士、上海、バーレーンの3ラウンドでオリバー・ジャービス、ルーカス・ディ・グラッシ、ロイック・デュバルがドライブしたもの。
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今週末のスパ・フランコルシャンでは、COVID-19のパンデミック発生以来、初めてファンが参加できるピットウォークが復活する。これは金曜日のフリープラクティス3回目の開始直前と、土曜日の午前9時45分からの2回に分けて実施される予定だ。
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アイアン・デイムスのドライバーであるサラ・ボビーとミシェル・ガッティンは、前者が新型コロナウイルスの陽性反応を示したことにより、スパ6時間レースを欠場する。COVID-19テストではボビーのみが陽性となったが、ここ数日ふたりが密接に接触していたことから、チームはガッティンもあわせてラインアップから外すことを選択した。今戦では両名に代わってクリスティーナ・ニールセンとドリアーヌ・ピンが加わり、ラヘル・フレイと85号車フェラーリ488 GTE Evoをシェアする。
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チームWRTは来月、スペインのアラゴンで、ル・マンに持ち込む3台のオレカ07・ギブソンのテストを予定している。ベルギーチームはセブリングに送った予備のLMP2カーを、ミルコ・ボルトロッティ、ロルフ・イネイシェン、ドリス・ファントールの3人がドライブする32号車として使用する。
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スパのレースウイーク最初のセッションとなるフリープラクティス1は、5日(木)の15時30分(日本時間22時30分)から90分にわたって行われる。