可愛らしさを感じるデザインで愛されるフレンチシックなMPVルノー「カングー」。新型の発売を前に、2021年夏に2代目が販売終了となったが、今このカングーの中古車市場に異変が起きている。
なんと、限定車「カングーリミテッド ディーゼルMT」が、購入価格の1.5倍という高値で取引されているというのだ!
今回は、高値で取引されているカングーの実態と、最新中古車動向についてレポートしていきたい。
文/大音安弘
写真/Renault
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■まさかの1.5倍!? 限定カングーが高値で取引されるワケ
コロナ禍では、自動車の生産減や安全な移動手段としてクルマが見直されたこともあり、中古車のニーズが拡大。その影響は、いまだ収束が見えず、自動車オークション大手のひとつ「USS」では、2022年2月の平均取引価格が、統計が残る1999年4月以降で最も高い100.6万円を記録したことを発表し、話題となった。
そのため、中古車価格は高値安定となっているのが現状だ。しかし、そのなかでも異例のプライスを掲げるモデルを発見した。それがルノーの限定車「カングーリミテッド ディーゼルMT」だ。
ルノーカングーリミテッドMTは、2021年7月に、400台限定で販売された現行型カングーの日本向け最終生産を記念したモデルで、カングー初となるディーゼルエンジンを搭載しているのが最大の特徴だ。しかもMT限定というマニアックさ。
限定仕様としては、これまでも人気が高かったブラックバンパー仕様などを取り入れたシックな装いのもの。価格は、282万円を掲げていた。発売時は、カングー自体の品薄だったこともあり、瞬く間に完売。ただルノーの屋台骨のひとつでもカングーの限定車となれば、決して珍しい現象でもなかった。
しかし、現在、大手中古車検索サイトで並ぶ「カングーリミテッド ディーゼルMT」の価格は、407万円~479.9万円と新車の約1.5倍を超えるプライスを掲げている。もちろん、すべてほぼ新車同然の車両ばかりだが、まさにプレミア価格である。
限定車とはいえ、スポーツカーや高級車ならまだしも、カングーは、ファミリー向けのMPV。この暴騰の理由を探るべく、ルノー販売店の関係者A氏に取材を行った。
A氏によれば、最後の限定車は、かなり人気があったが、現状の400万円越えの中古車価格には、驚いているとのこと。この限定車のすべてが、ユーザーに販売されたはずなので、購入直後に、ユーザーが中古車販売店や買取業者に持ち込んだものではないかとのこと。
ただ現行型カングーの人気が高いことは間違いなく、今でも販売終了を知らない客や在庫車を探す客のディーラーへの来店があるという。当然、彼らが、中古車にアプローチする可能性も高いので、中古車市場も勢いがあるのだろうと話す。
■高年式車で乗り換えを考えるなら今がチャンス!? カングーの最新相場事情
そこで現行型カングー全体の中古車価格を見てみると、2009年~2013年まで販売されたファニーフェイスの前期型は、30万円~220万円と幅広いが、それでもメインは100万円台だ。
それがグリル風アクセント付きのフロントマスクとなった2013年以降の後期型で、さらに1.2Lターボ車に限定してみると、価格は100万円~440万円まで上昇。300万円以上のものは、かなり強気の値段と言えるが、状態のよいものでも中心は200万円台となる。それでも高値安定の相場となっていることがわかる。
A氏によれば、現行型カングーの人気については、高年式となる1.2Lターボモデルが中心で、特にAT感覚で乗れる6速EDC搭載車だそう。なので、2年落ちの2万kmほどの良好なカングーゼンEDC車ならば、交渉なしに220万円くらいの査定は出るという。2020年当時の新車価格は、264.7万円だから、2年で、1割ちょっとしか値落ちしていない計算になる。なんともオーナー想いのクルマである。
この高価格の背景には、今年上陸予定の新型カングーへの評価が影響してかと思いきや、A氏によれば、現行型カングーユーザーの新型への反応は、悪くないという。その理由については、サイズアップした現行型が、市場に受け入れられたことが大きいと分析する。
2代目となる現行型カングーがデビューした際、初代から大幅にサイズアップしたことや激変したデザインに否定的な声も多く聞かれた。しかし、ユーザー自身が、2代目のサイズアップの恩恵を実用性や快適性の向上を実感できたこと。そして、ゆるキャラ的なデザインにも愛着を覚え、「デカングー」の愛称で呼ぶ様にまでなった。
このように変化を受け入れ、楽しんできたオーナーたちの姿勢が、新型への期待を膨らませているのだろう。特に新型は、安全機能を含め、乗用車並みの装備がアップデートされるだろうから、年齢を重ねた既存ユーザーは、快適面の期待する向きもあると思う。
実際、カングーの相場を見ていても、過走行車は値段も安めとなるなど、すべてがバカ高いわけではない。実用車だけに、使い込んだ分なりに評価に影響するので、高価格のものは、高年式低走行が主役だ。それだけに、いつまで今のような高値相場が続くかは不透明で、新型が登場すれば、少しは落ち着くはず。
特に、一部の超プレミア価格は今だけと捉えるべきだろう。なので、中古の現行カングーの購入を検討している人は、価格と内容のバランスを吟味し、その決断をして欲しい。中古車は縁ものなので、待ちとは言いにくいが、買った際のプレミアを手放す際に期待すべきではないだろう。
もし、あなたが高年式の良好なカングーを所有していて、他車への乗り換えや売却を検討しているならば、今が売りの絶好の機会かもしれない。ただクルマ臭いアナログさとギア的な機能持ちながら、往年のフランス車らしい緩い世界観が味わえるのは、現行型までだろう。カングーに愛があるならば、大切に所有することをお勧めしたい。
最後に中古車の相場は水物であるが、現在のウクライナ情勢によっては、新型カングーの導入に影響を与える可能性は、誰も否定できないだろう。現時点では、新型カングーの年内導入の予定に変更はないようだが、現行型カングーを売るにも買うにも、その影響を注視することが大切だ。
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