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 アルファードが超絶人気だが、考えてみればエルグランドやオデッセイと比べると背が高く、クルマとしてのスタイリングは正直イマイチ……。だが、その車高にこそアルファード人気の秘密があるのだ!!

  他車を見下ろすような見晴らしなど、アルファードのオラオラ感をさらに増すなど、らしさ全開の作戦で大勝負に出ているのだ。そこで今回はアルファードが売れているヒミツを徹底解剖していこう!!

文:渡辺陽一郎/写真:トヨタ・日産・ホンダ・ベストカーWEB編集部

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いいクルマよりも売れるクルマ作りを優先!? アルファードは見下ろし感が大事

2021年度の国内で最も売れたミニバンは高価格車のトヨタ アルファードだった。1か月平均で6644台も登録されるのには「売れるクルマ造り」にあった

 2021年度(2021年4月~2022年3月)に、国内で最も多く売られたミニバンは、アルファードであった。1か月平均で6644台を登録した。アルファードは売れ筋価格帯が400~600万円に達して、現行型は発売から7年を経過する。

 その売れ行きがコンパクトなノート(ノートオーラを含む)の1か月平均7959台、アクアの7061台に迫る勢いとなった。コンパクトミニバンのフリードを上まわっているのだ。

 アルファードが高価格車なのに好調に売られる背景には、複数の理由がある。まず筆頭に挙げられるのは、アルファードが「良いクルマ造り」よりも「売れるクルマ造り」を優先させたことだ。

 アルファードが現行型にフルモデルチェンジした時、プラットフォームも刷新。従って先代あるいは現行ノア&ヴォクシーのように、床を低く抑えることも可能だった。ちなみに必要な室内高、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)、ボディ剛性などを確保した上で、床を可能な限り低く設計すれば、さまざまなメリットが生じる。

 乗降性は向上して、同じ室内高でも全高を低く抑えられる。全高が下がると、空気抵抗が減ってボディは軽くなり、重心も下がる。そうなると走行安定性、乗り心地、動力性能、燃費など、さまざまな性能が改善される。

 ところが現行アルファードは、フルモデルチェンジでプラットフォームを刷新しながら、床をほとんど下げなかった。アルファードの床面地上高は、スライドドアの部分で450mmとされ、現行ノア&ヴォクシーの380mmに比べると70mm高い。乗り降りはサイドステップ(小さな階段)を介して行うから、ノア&ヴォクシーに比べて乗降性も悪い。

 さらにアルファードは、床が高いために天井も持ち上がり、2WDの全高はノーマルエンジン車が1935mmだ。ノア&ヴォクシーの1895mmに比べて40mmほど高い。

 仮にアルファードがプラットフォームの刷新に伴って床と天井を下げていたら、前述の通り乗降性、走行安定性、乗り心地、燃費などを一層向上できた。それをしなかった理由を開発者に尋ねると、以下のように返答された。

「アルファードでは、従来型から、同乗者を含めて周囲を見降ろせる視界の良さがお客様に人気だった。そこでプラットフォームを刷新しても床をあまり下げず、お客様の視線を高く保つことで、良好な見晴らし感覚を継承した」。

 これはつまり、低床設計による前述の機能的なメリットよりも、「周囲を見降ろせる視界の良さ」という情緒的な価値を優先させたわけだ。

 このほか外観の見栄えも考慮しただろう。天井が高いと、外観の存在感も強まる。フロントマスクも上下方向の厚みが増すから、仮面のような表情が一層際立つ。外観の存在感や目立つ見た目もアルファードの人気の秘訣だから、現行型はプラットフォームを刷新しながら、床を下げずに従来のデザイン路線を踏襲した。

ノア/ヴォクシーと作り分けが見事!! アルファードらしさを追求

ノア&ヴォクシーはアルファードに比べて低床のため乗降性を重視するファミリー層に人気。低価格でオプションのユニバーサルステップも装着できる

 その一方で、ミドルサイズのノア&ヴォクシーは、前述の通りアルファードに比べて床が低い。この使い分けがトヨタの巧みなところだ。ノア&ヴォクシーには、子育て世代のファミリーユーザーも多く、乗降性が重視される。

 ノア&ヴォクシーは、低床設計に加えて、左側のユニバーサルステップを新たに3万3000円の低価格でオプション設定した。自動的にせり出すサイドステップには、電動式が多いが、価格も大幅に高まってしまう。

 そこでノア&ヴォクシーは、低価格でオプション装着できる機械式を新開発して乗り降りのしやすさに配慮した。

 ノア&ヴォクシーでは、3列目シートの格納も簡単だ。レバーを引くと3列目が自動的に持ち上がり、サイドウインドー側へ押し込むとロックする。アルファード比べると、さまざまな機能を簡単に扱える。

アルファードが売れる理由はトヨタお得意の販売手法とマッチ

 その代わり内外装の質感は、今でもアルファードが明らかに上まわる。ノア&ヴォクシーも、インパネ周辺を上質に仕上げたが、メッキパーツの使い方も含めてアルファードは追い抜いていない。

 乗り心地も同様だ。ノア&ヴォクシーも、プラットフォームや足まわりの刷新で16インチタイヤ装着車を中心に快適性を高めたが、アルファードは、設計が古いものの乗り心地はさらに優れている。ノア&ヴォクシーとは異なる重厚感が伴う。

 このクルマ造りもトヨタならではだ。ノア&ヴォクシーのユーザーがアルファードを試乗した時に、内外装や乗り心地の違いがハッキリと分かる。「やはりアルファードは高級感が違う」と感心させられ、予算に余裕のあるユーザーは、ノア&ヴォクシーからアルファードに乗り替えたい気分になるのだ。

 このクルマ造りは、古くから車種を豊富にそろえていたトヨタならではの手法だ。昔は、カローラからコロナ、マークII、クラウンへとサイズアップすると、内外装の質感、静粛性、居住性、快適装備なども分かりやすく上質になった。そのためにユーザーの中に、カローラからコロナへ、という上級移行が芽生えた。

 いかにもトヨタらしい儲かる商法だったが、ユーザーにもメリットをもたらした。会社での昇進や所得の増加を、上級車種に乗り替えることで、自ら実感できたからだ。

 それでも当時は、カローラを扱うのはカローラ店、コロナとマークIIはトヨペット店、クラウンはトヨタ店と、販売店が違っていた。それが今は、全店が全車を売るから、販売店を変えずに上級移行できる。

 今は小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングが話題になるが、上級移行も考慮した販売促進を行う余地があり、アルファードはその有力車種になっている。

なぜアルファードより機能で勝っているオデッセイは販売中止?

低床で乗降性がよく、ミニバンの中で最も走りの安定感があるオデッセイ。それでいてオデッセイは燃費もよく内装の質感も上質だが、工場閉鎖に伴い販売終了となる

 ライバル車のオデッセイは、アルファードと同サイズのミニバンながら、逆のクルマ造りを行った。スライドドア部分の床面地上高は350mmだから、アルファードに比べて100mm低く、ノア&ヴォクシーの380mmをも下まわる。低床設計だから、サイドステップを使わずに乗り降りできる。乗降性はアルファードよりも良好だ。

 床が低いために、室内高は1300mmを確保しながら、2WDの全高は1695mmだ。アルファードの1935mmに比べて天井が240mm低い。

 オデッセイの居住性は、床が低いために、全高が1700mm以下でもアルファードに劣らず上質だ。アルファードの3列目は、頭上と足元の空間は広いが、床が高いこともあって床と座面の間隔は不足している。足を前方へ投げ出す座り方だが、オデッセイの3列目は、床と座面の間隔に余裕があり、着座姿勢も自然で快適だ。

 またオデッセイは、低床設計で重心も低いから、両側にスライドドアを装着したミニバンの中では走行安定性が最も優れている。燃費も良く、e:HEV(ハイブリッド)アブソルートのWLTCモード燃費は20km/Lだ。アルファードハイブリッドの14.8km/Lに比べると、大幅に優れている。

 オデッセイe:HEVは2WDのみ、アルファードハイブリッドは4WD専用という違いはあるが、オデッセイは燃費が良く、走行性能や居住性も満足できる。つまり機能はアルファードを上まわる。

 しかしオデッセイは、狭山工場の閉鎖に伴って生産を終えた。2020年にはフロントマスクを刷新する大幅なマイナーチェンジを実施して、2021年には、前年の2倍以上に相当する1か月平均1762台を登録している。オデッセイは優れた商品で、マイナーチェンジにより売れ行きも持ち直しかけたのに、肝心のホンダが諦めてしまった。

 このようなメーカーの姿勢、販売方法まですべてを含めて、アルファードは「売れるクルマ造り」を貫いている。その結果、高価格車ながら、ミニバンの最多販売車種になった。逆にオデッセイは、アルファードに負けない「良いクルマ造り」を行ったのに、それをクルマの価値に結び付けられず姿を消した。

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