5月3〜4日、静岡県の富士スピードウェイで開催される『FAV HOTEL FUJI GT 450km RACE』。今季の第2戦となるレースだが、3月にチーム代表の大野剛嗣さんが急逝し、第1戦を欠場したMax Racingにとってはシーズンの初陣となる。チームの田中哲也監督、そして佐藤公哉、三宅淳詞のふたりにシーズンへの意気込みを聞いた。
2020年からスーパーGTに挑戦を開始したMax Racingは、競走馬とともにモータースポーツを愛し、“Go Max”のドライバーネームで多くのレースに参戦した大野さんが代表、チームオーナーを務めていたが、3月2日に急逝。以降、チームは岡山と富士での公式テスト、さらに第1戦岡山を欠場していた。
■『不可能』なんてない
そんなMax Racingは5月3日に開幕する第1戦でシリーズに復帰することになるが、大野さんの訃報からの流れについて田中哲也監督によれば、「訃報があってから会社、そしてこのMax Racingをどうするかという話がありました」という。大野さんは代表取締役社長を務めていたオオノ開發をはじめ、多くの重責を担っていた。そのなかで、Max Racingの活動を継続するのかも含め、落ち着くまでいったん活動を休止するという判断が下されたのだという。
その結果、「大野さんの意志を引き継ぎ」活動を継続することが決まった。今季、大野さんが想定していた「かわいがっていた(佐藤)公哉をチームの中心とし、三宅(淳詞)についても今季スーパーフォーミュラも乗れましたし、うまく今年でチームを卒業してもらって、GT500などにも乗ってもらいたいという考え」のままスーパーGTに挑戦していく。
大野さんは「公哉や三宅、堤(優威)もそうですが、チャンスを与えたくなるような、チャンスに恵まれていない若手を乗せたいという考え」をもっていた。すべてのドライバーがその期待に応えてきたが、田中監督は今後については「まだ分かりませんが」としつつ、「大野さんの意志を継いで若手がチャンスを掴めるようなチームとして続けていけたら個人的には嬉しいですし、大野さんも願っていたことですから」と語っている。
迎える今季、HACHI-ICHI GR Supra GTは2月28日〜3月1日に岡山で行われたGT3特別スポーツ走行以来走っていない。データは大いに不足しているが、もちろん田中監督も「シリーズを考えると1戦出ていないのは不利にはなります」という。しかし、そういう状況こそ強い気持ちで戦いたいと田中監督はいう。
「大野さんも、大野さんのお父様も“不可能を不可能と思っていない”考えの方なんです。成功する方はそういう方だと思うのですが、『1回休んだから何?』という考え方です」と田中監督。
「逆に言えば、いろいろな条件こそありますが、そういうときこそ評価を得られるような活躍をしたいですね。チームみんながそういう強い気持ちで戦いたいです。大野さんなら、『みんなにはハンデをあげている』というくらいの気持ちでいると思います」
「大野さんは自分でもレースを楽しんでいましたが、これからの日本のモータースポーツ界に貢献してくださる方だったと思います。業界の人たちにも、ファンの皆さんにも、大野さんの会社がこうして続けてくれることについて、みんなが『すごいな』『頑張っているな』と思ってくださるレースをしていきたいです」
田中監督は「ファンの皆さんにはご心配もおかけしましたが、安心してもらえるようなレースを続けていければ。『不可能』なんてないですからね」と力強く今季に向けて語った。
■チームで成長を遂げてきたふたりも強い意気込み
もちろん強く、かつ落ち着いた気持ちで臨むのはドライバーふたりも同様だ。スーパー耐久に参戦している頃からMax Racingに所属していた佐藤は「もちろんテストもできていないですし、ほぼぶっつけ本番に近いです。GRスープラについての理解も、2月末の走行で初日ドライで少し乗ったくらいで、いまだかつてないくらい未知数なところはありますね」と語った。
「とはいえ、今はすごく楽しみです。またこうして、戦える場があることが本当に嬉しいこと。意気込みで言えば、ひたすら全開で走るだけですね。様子見をしたり計算したりすることもあまりないと思うので、三宅選手と力を合わせて全開で走り、大野さんに安心して上から見てもらえるようなレースにしたいです」
「実績もあるクルマなので、安心して信じていくだけだと思っています」
そして2020年にチームに加わり、2021年にはMax Racingからスーパーフォーミュラ・ライツに参戦し、今季スーパーフォーミュラへのチャンスを掴んだ三宅も「僕たちのMax Racingはいろいろなこともあり、今回が開幕戦となりますが、チームの皆さんもいつもと気持ちが違うと思っています」と自分たちの“開幕”について語った。
「ただ昨年からと同じで、目指すところは勝利。もちろん特別な思いはありますが、空回りしないよう、落ち着いて客観的に進めていければと思います」
当然、今季GT300車両が思うようなスピードが出せていない部分もあるが、それでも三宅は「公式テストも走れていませんし、参加条件の変更でストレートなど不利な部分はあるかもしれません。富士ではかなり厳しい戦いにはなるかとも思いますが、昨年もレースは出ているので、そういったデータもうまく使いながら戦いたいです。もちろん簡単なレースではないと思いますが、落ち着いて戦っていきたいですね」と語った。
今季はオオノアソシエーツグループのひとつである、株式会社マテラの『81 MATERRA』のカラーリングをまとい、イメージも大きく変わった。しかしチームのメンバーは、冷静に、かつ田中監督が言うように「強い気持ち」で走行開始に向け作業を進めている様子が感じられた。