スーパーGT第2戦富士、これまでのレース距離250km〜300kmから450kmとなる今回のレースはレース中のチーム戦略が大きな鍵を握ることになる。2ピット戦略のなかで、ピットストップのウインドウ(レース周回を走りきれるピットタイミング)は広くなり、チームごとに戦略が分かれる展開になりそうなのだ。
まずは今回450km(100周)の決勝レースとなる富士大会での追加ルールを要約すると、以下の3点となる。
1)ドライタイヤの持ち込み本数は通常の6セットから7セットに1セット追加。
2)第3ドライバーの登録可能
3)ピットインの義務回数は最低2回の給油義務
ここで重要になるのが、3)のピット義務の内容。今回は給油のみが義務で、ドライバー交代、そしてタイヤ交換は自由となっていること。つまり、2度目のピットインはドライバー交代をせずに2スティント連続でドライブすることもでき(ダブルスティント)、タイヤ無交換で給油のみで済ますこともできるのだ。
実際、戦略の幅はどこまでが現実的なのか、搬入日にGT500チームのエンジニア数名に聞いた。やはり基本的には2度目のピットインが鍵になる模様だ。
100周のレースで最初のピットインはドライバー規定周回数ミニマムの34周、この周回数は100周の2回のピット/3スティントの均等割りでもあるためバランスがよい。2回目は33周後の67周目にピットインするのが数字上の効率が良い基本パターンになる。
100周の走行での必要な燃料はメーカーによっても異なるが、満タン+約50秒。満タンでスタートするとしたら、約50秒の給油時間を2回のピットインで割り振らなければならない。ここでは1回目のピットをショートにして仮に15秒の給油時間とすれば、2回目には35秒の給油時間が必要になる。
給油時間中のタイヤ交換作業はできないが、給油時間中にドライバー交代作業は済ませることができるため、タイヤ交換時間(&ドライバー交代時間)をおよそ15秒とすれば、先ほどの例で2回ともタイヤを交換すると、以下の項目が最低限必要な制止時間になる。
・1回目のピットイン(15秒の給油時間+タイヤ交換時間15秒)
・2回目のピットイン(35秒の給油時間+タイヤ交換時間15秒)
予選の順位、そして走行時の順位、さらに34周時のクリアになるタイミング、想定ピットアウト時のGT300のトラフィックの状況などによって、チームの戦略=給油時間=制止時間は大きく変わってくる。1回目のピットストップ時間が早かったからといって、そこだけで喜ぶのは早計となるのが今回の450kmの難しさなのだ。
実際、2回目のピットインでタイヤ無交換ができるのか、チームのエンジニアによれば「最後までおそらく保つことはできるけど、終盤のラップタイムがどうなるか」、「最後まで行ける可能性が高いけど、タイヤメーカーがその周回数を許可してくれるか」、「例年より気温が低くなりそうでピックアップも多そう。路面のコンディションも良くない方向になりそうなので、タイヤのスローパンクチャーやバーストが心配」という声が聞こえた。
現実的には2回目のピットでのタイヤ無交換は難しそうだが、以上がオーソドックスな戦略と考えられる……が、そこはさすがに国内最高峰レースを戦う猛者たち。取材を進めていくなかで、あるエンジニアがウルトラCとも言える戦術をちらりとつぶやいた。それは、ドライバーミニマムの34周よりもピットタイミングを早める、という考え方だ。
「最初のピットストップを15周〜25周目くらいの早めにして、ドライバーはダブルスティントで行ってもいいし、交代して3スティント目と合わせてドライバーのミニマム周回を越えればいい」という発想だ。
たしかに、現在トレンドの1ストップレースでピットインをドライバーミニマムに合わせる戦略は、昨今のFCY(フルコース・イエロー)やセーフティカー(SC)のリスクへの対応として取り入れられてきた。仮に今回、15周で最初のピットに入って、その直後にセーフティカーが入るような展開になれば、多くのアドバンテージを得ることになる。
もちろん、15周で最初のピットを行った後は43周+42周などで85周を走行しなければならないが、タイヤ無交換で60周以上を走るよりもリスクは少なそうだ。
果たして、オーソドックスな戦略を選ぶのか、それとも広いピットウインドウを目一杯使った戦略でリスクを取ってくるのか。450kmの今回のレースは、見どころの多い展開になりそうだ。