6月5日、MotoGP第9戦カタルーニャGPの決勝レースがスペインのバルセロナ・カタロニア・サーキットで行われ、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が独走で今季2勝目を飾った。チームメイトのフランコ・モルビデリ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は、激しいバトルのなかで巧みにタイヤを温存しながら、グリッド18番手から13位まで上げてチェッカーを受けている。
クアルタラロは、3番手から絶好のスタート。そのまま第1コーナーへとダッシュし、誰よりもブレーキを遅らせて飛び込んだ。この直後、すぐ後ろにつけていた3台が転倒して戦列を離脱する。
この間もクアルタラロはさらに畳みかけ、トップに立った後、一気に後続を引き離し、さらにリード拡大。最終的に2位のホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)に6.473秒もの大差をつけて圧勝した。
一方、グリッド18番手からスタートしたフランコ・モルビデリ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は、第1コーナーでの混乱の影響もあり22番手まで後退。路面温度が55度まで上昇するなかタイヤをオーバーヒートさせずに順位を挽回していくのは簡単ではなく、そのため守りと攻めのバランスをとりながらレースを進めていく。
グリップ・レベルの低さにより数台が転倒する一方で、モルビデリは我慢の走りを続け、レース後半を迎えてライバルたちが暑さに苦戦し始めると、一気に2台をパスして14番手へ浮上、13位でチェッカーを受けた。トップとの差は33.1687秒だった。
この結果、クアルタラロは合計147ポイントに伸ばしてチャンピオンシップのリードを22ポイントに拡大。モルビデリは合計22ポイントでランキング19位となっている。ヤマハは合計147ポイントでコンストラクターズランキング2位をキープ。モンスターエナジー・ヤマハMotoGPは合計169ポイントでチームランキング2位に浮上し、トップを2ポイント差で追っている。しかし、このふたりの差は大きい。
WithUヤマハRNF・MotoGPチームはルーキーの活躍が光った。ダリン・ビンダー(WithUヤマハRNF・MotoGPチーム)は24ラップにわたり激しいバトルを展開し、12位でチェッカーを受けてポイントを獲得している。
ビンダーはグリッド23番手から好スタートを切った。第1セクターで7つポジションを上げ、さらに1周目終了までに2台をパスして14番手へ浮上。レース中盤で一時はトップ10まで上がっていたが、激しい競り合いのなかで12番手に落ち着いた。ここからジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)、ルーキーのレミー・ガードナー(テック3KTMファクトリー・レーシング)、モルビデリらとバトルを展開し、最終的にヤマハ勢2位、またルーキー勢2位となる12位でチェッカーを受けた。11位のガードナーとの差は、わずか0.438秒だった。
ビンダーのチームメイトのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(WithUヤマハRNF・MotoGPチーム)は、グリッドポジションの19番手を守って1ラップ目を終了。5ラップ目に1台パスし、3ラップ後には15番手まで上げてポイント獲得を目指した。しかし、その後フロントのフィーリングに苦戦するようになり、7ラップを残してピットに戻り、そのままリタイアとなった。
MotoGP第9戦カタルーニャGPの決勝レースは気温28度、路面温度56度というタイヤ環境は非常に厳しい条件となった。レース後、モンスターエナジー・ヤマハMotoGPのマネージングディレクターのマッシモ・メレガリは「クアルタラロの優勝のキーポイントとなったのは、タイヤマネジメントだ。あれほど大きなリードを築きながら、他のライダーよりもうまく、タイヤの消耗をコントロールしていた」とコメント。
また、WithUヤマハRNF・MotoGPチームのチーム・マネージャーのウィルコ・ズィーレンベルグも「気象条件は非常に厳しく、コース上は55度の暑さになりタイヤを激しく消耗した。そのなかでビンダーは、ベテランライダーたちと最後まで戦い続け、決勝を通してまた一歩、大きく進化したのだ」と語っている。
■ファビオ・クアルタラロ/モンスターエナジー・ヤマハMotoGP(優勝)
「スタート直後から一気に攻めていこうと決めていた。ペースは素晴らしく、リヤタイヤを温存しなければならないことはわかっていたが、同時に、トップに出れば必ずいいレースができることもわかっていた」
「第1コーナー進入ではブレーキングを最大限まで遅らせ、そのときは超ワイドにはらんでしまうかもしれないと思ったが、懸命にポジションを守った。あとはとても長いレースになった。第1コーナーからチェッカーまでリードし続けることができ、本当に素晴らしい勝利になったと思う。もちろんグリップ低下は感じていた。序盤の数ラップで激しくプッシュしたが、その後もずっと、もっと行けると思っていて、まだ少し余裕があった」
「今回、ようやく勝利を手にすることができ本当にうれしい! とても満足している。フィーリングは100%で、まるで家の近くでスクーターに乗っているようにYZR-M1に乗れた。これは自分のマシンだ! このマシンが大好きで、とてもエンジョイしている! 走りながら常に進化し、とくに素晴らしいのは、走っている間も考えることができるということだ。あのような高速では本来、非常に難しいことだ」
■フランコ・モルビデリ/モンスターエナジー・ヤマハMotoGP(13位)
「このウイーク中にいくつかの進化が見られた。とくに初日の金曜日には、グリップがないのに良いフィーリングをつかむことができた。そのあとグリップが上がってくると、また苦戦するようになってしまったけど、それでも以前ほどではない」
「決勝ではスタートで他のライダーと接触するアクシデントもあり遅れてしまった。でもそこから挽回し、トップ10争いにも近づくことができた。このことは明らかな前進だ。とは言え、依然として理想の場所にいるわけではない。改善すべき点はわかっていて、常に追求している。好感触を探し続け、どこかで取り戻したいと思っている」
■ダリン・ビンダー/WithUヤマハRNF・MotoGPチーム(12位)
「今日はいいレースができた。予選の順位が実力を表していないことはわかっていた。スタートはとてもうまくいった。でもその後は、タイヤを消耗していくことはわかっているが、それがどれほどのものなのか予想がつかなかったので、序盤でどこまでプッシュできるか確信が持てなかった」
「そのような状態でも結果的にいいレースができ、多くの成功を収めてきたビッグネームたちとバトルし、それをエンジョイすることができた。ガードナー選手は最終ラップで僕よりも余裕があり、僕には抜き返すだけの力は残っていなかった。でも素晴らしい経験だった。一歩一歩、正しい方向へ向かって進んでいると感じている。明日のテストを楽しみにしていて、予選で好位置を獲得するためのソフトタイヤの向上にトライしたいと思っている。それができれば日曜日がもっと楽になるはずだ」
■アンドレア・ドヴィツィオーゾ/WithUヤマハRNF・MotoGPチーム(リタイア)
「今週はずっと、もう少し良い状態だっただけに、今日の結果は残念だ。フィーリングが向上するなかで決勝を迎えていたけど、1ラップ目の第10コーナーで目の前でブラドルが転倒し、その影響で4つもポジションを下げてしまった」
「その後のオーバーテイクは難しく、加速もフロントによるブレーキングもうまくいかなかった。ロックしてしまってブレーキがかからないので、パスは不可能だった。リヤタイヤはうまくセーブできていたので、終盤は前のグループに追いついて、いいバトルができると考えていたが、スリップストリームを使って背後まで近づいたときにマシンを止められず行き過ぎてしまった。スピードでは勝っていただけに、本当に悔しい結果だ。でもこれが現実だ」