アルピーヌ・エルフ・チームは、ル・マン24時間レースのテストデー前に変更されたBoP(性能調整)により、最大出力の引き上げを受けたことについて「何もないよりはマシ」と考えていると、チーム代表のフィリップ・シノーは語っている。
WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに、ノンハイブリッドLMP1マシン、アルピーヌA480・ギブソンを送り込んでいる同チームは、6月1日付で発表された最新のBoPテーブルにおいて、前戦スパ・フランコルシャン比で10kW、最高出力が増やされている。
これによって、2年連続で新規則適用除外の措置を受け出場しているLMP1車両が、より良いポジションとなるはずだとシノーは考えている。
シノーまた、もっと良いBoPを期待していたというが、利用可能なツールを用いてパッケージを最大限に活用することを示唆している。なお、テストデー後、ル・マンウイークの期間中にも、さらなるBoP調整の可能性は残されている。
「ACOとFIAはこの問題を検討し、状況を解決するために多くのデータを共有したのだと思う」とシノーはSportscar365に対し語っている。
「彼らは、10kWを追加することで、我々のペースを少し改善できると考えた。我々はそれに従わなければならないので、走らせてみてどうなるかだ。この状況は、彼らにとっても簡単ではないと思う」
「だが、何もないよりはマシだ。スパよりは確実に良くなるだろう。だが、ル・マンのコースレイアウトは特殊だから難しい」
アルピーヌはスパよりも10kW増えた420kWという最高出力を得ているものの、これは昨年のル・マン24時間レースと比べれば30kW低い値となっている。また、1スティントあたりの使用エネルギー量も削減されている。
「昨年のBoPと比較すると、状況は悪くなっている」とシノーは表現する。
「だが、昨年からは多くの違いもある。マシンにまつわる我々のプロセスの管理においてもね。だから、なんとも言えないのだ」
「レギュレーションと議会(WECコミッティ)には自信を持たなければいけないし、日曜日(テストデー)になれば分かるだろう」
「いまこそ、成果を出すときだ。文句を言うには、もう遅い。道具は手にしているわけだから、それを使うしかない。燃料をより効率的に使う方法はある」
「出力が上がったことはとてもうれしい。(BoPの)助けがなければ不可能なことだ。いま、それはより良い方向に向かっている。もっといいものを期待はしていたが、いまはこのとおりだ」
シノーはアルピーヌが1スティント12周を走行することを期待しているというが、現状では11周がより現実的である、と語っている。
昨年のレースでは、アルピーヌは1スティントで12周を走り、ライバルのトヨタGAZOO Racingは1スティント13周をこなしていた。結果、トヨタが4周の差をつけ勝利を収めている。
「ギャップは11周と12周の間だ。12周は難しそうだ」とシノー。
「トヨタに比べると、最低でも1周は少なくなると思う」
■開幕2戦の好結果で「すべてにおいて自信を付けた」
アルピーヌのドライバーであるアンドレ・ネグラオは、A480・ギブソンでの2回目のル・マンに臨むにあたり、「より準備が整っている」と考えている。
ネグラオ、ニコラ・ラピエール、マシュー・バキシビエールの3人は、開幕2戦で大きなポイントを獲得し、ドライバーズチャンピオンシップのリーダーとして、チームのホームレースへと臨む。
「セブリングでは1位、スパでは2位と、とても良い結果だった」とネグラオは語っている。
「すべてにおいて僕たちが自信を付けたのは確かだが、シーズンはまだ長い」
「だが、チームは昨年よりも準備が整っている。僕らは昨年よりも、エンジンとトラクションコントロールの面を少しアジャストしてきたから、以前よりもマシンは良くなっているんだ」
「チャンスはあると思う。レースでは彼ら(トヨタ)の近くを走ることが必要で、そのとき僕らに何ができるか、だろう」