2022年から、スーパーGT GT300クラスに参戦を開始したSHADE RACING。2018年から挑んでいたスーパー耐久では長年トップチームとして活躍してきたが、今季からスーパーGTにも挑戦した理由とは、そしてチームはどこを目指していくのだろうか。SHADE RACINGを率い、ドライバーとしてはスーパー耐久にHIRO HAYASHIとして参戦している林寛之代表に聞いた。
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Q:まずおうかがいしたいのですが、林代表のモータースポーツへの関心の源というのはどの部分にあるのでしょうか。
林寛之代表(以下林):我々は自動車関連企業で働いていますが、昨今“クルマ離れ”と言われている状況のなか、ひとりでも多くの人にクルマ、モータースポーツに興味を持って欲しいと思いこの活動をスタートさせました。また、企業で働いている従業員たちの仕事が細分化され、ルーティン化することが多くなるなかで、人を鍛え、戦う姿勢を身につけて欲しいな、という思いから活動を始めています。
Q:スーパー耐久への参戦は2018年から始めていますが、トントン拍子で活動を拡大させています。スーパーGTへの参戦は、チームにとっても目標だったのでしょうか。
林:その前には、2015年からTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceに取り組んでいます。我々はもともと生粋のプロのレーシングチームではなかったのですが、我々としてどこを目指し、何に取り組むかを考えたなかで、我々は『カスタマーレーシングチームのトップを目指そう』という目標を掲げることになりました。そうすると自然と、日本国内で言えばスーパーGTが到達できる頂点となった流れでした。
■GT300参戦はゴールではなく「挑戦の始まり」
Q:今季使用しているカーナンバーの由来にもあるとおり、2020年からスーパーGT参戦の構想をスタートさせたとうかがっていますが、ご苦労などありましたでしょうか。
林:たくさんありましたね(笑)。クルマをどうするのか、またスーパーGTではエントラントとしての権利が必要なので、それをどう取得するのか、チームの体制をどう構築するのかなど、ほぼゼロからのスタートでしたから。
Q:スーパーGTでは開幕から2戦を終えましたが、開幕戦岡山では特別な思いなどありましたでしょうか。
林:先ほど申し上げたとおり、さまざまな課題を並行してこなしながら参戦に向けて動いていたのですが、本当にスーパーGTに出られると決まったのは、2021年末くらいなんです。開幕戦までは3〜4ヶ月くらいしか時間がありませんでした。岡山では『感無量……みたいな気持ちになるのかな』と思っていましたが、ドタバタしすぎていて、ホッとした気持ちの方が大きかったですね(笑)。
一方で『カスタマーレーシングチームのトップ』という目標があるので、もちろんGT300でトップを獲りたいと思っています。参戦が実現した喜びはありましたが、これがゴールではなく、まず『挑戦が始まったな』という気持ちでいました。
Q:2022年に向けては、かなり強力な体制が構築されたと思っています。またエースドライバーである平中克幸選手が、副代表を務めるなどチームの中核を担っています。平中選手に期待するところはどのあたりでしょうか。
林:我々はスーパーGT初参戦ということもありますが、平中選手はドライバーとして今まで豊富な実績がある選手です。チーム作りにも貢献してくれるだろうと思っていますし、チームとしても“ドライバーファースト”で作りたいという思いもあったので、私から副代表というポジションをオファーさせていただき、受けていただきました。
Q:その平中選手ですが、働きぶりはいかがですか?
林:私が言うのはなんですが、モータースポーツ業界を熟知していますし、海外でも活躍したドライバーです。チーム作りに貢献してもらっていますし、Bドライバーの清水英志郎選手の良き先生役を務めてくれています。
Q:開幕2戦を終えて、まだポイントには届いていません。振り返ってみていかがでしょうか。
林:正直に言うともう少し上にいきたいと思って開幕を迎えたので、結果から言うと残念な2戦になっています。しかし収穫もたくさんあった2戦だと思っています。噛み合わなかったり、運に見放されたりで結果はまだ出ていませんが、チームとしてはそれぞれのレースで得たものがあった実感はあります。今季、チャンスが巡ってきたときに勝負できるよう、しっかり準備していきたいですね。
■スーパー耐久ではダブルタイトルを目指す
Q:スーパー耐久についてもうかがいたいのですが、今季はST-ZにGRスープラ、ST-4で86を投入しますが、GR86の投入予定はありますでしょうか。
林:現在、GR86は製作中です。第2戦に間に合わせるように準備していますが、もし間に合わないようであれば富士SUPER TEC 24時間レースは現行の86で挑み、第3戦スポーツランドSUGO以降に新型GR86を投入することになると思います。
Q:スーパー耐久は今後も2台体制で臨まれるのでしょうか。
林:そうですね。今後もST-ZとST-4で検討しています。バランスが良いのかな、と思っています。
Q:富士公式テストでは、大ベテランドライバーたちもドライブしていましたね(新田守男や影山正彦らがドライブ)。
林:ドライバー選定はほぼ平中選手にお任せしているので、かなり興味深い、強力なメンバーが揃ったと思っています(笑)。
Q:今季のスーパー耐久での目標を教えて下さい。
林:これまでST-4クラスでは二度のチャンピオンを獲得しているので、今季はST-Zとのダブルチャンピオンを目指したいと思っています。第1戦鈴鹿では幸先良くST-Zで優勝することができたので、富士SUPER TEC 24時間レースが非常に重要になってきます。富士では勝負をかけたいですね。
Q:今後、SHADE RACINGはどんなチームに育てていきたいとお考えでしょうか。
林:冒頭にも『カスタマーレーシングチームの頂点を目指す』とお話ししましたが、その裏には、クルマ好きやモータースポーツ好きを増やすお手伝いになればと思っていますし、さらに言えば、他のカスタマーレーシングチームを目指す方々のお手本、目標になるようなチーム作りができればと思っています。そのためにはこのフィールドのなかで成績を出さなければならないと思いますし、たくさんのファンの皆さんに応援していただければと思っています。
Q:その点では、今季起用する清水選手も楽しみな存在ですね。
林:そうですね。ドライバー育成の面でも清水選手のたどった道を目指して欲しいですし、若手の良い目標になって欲しいですね。