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惜しまれつつ生産終了!! レクサスの主力を担った「老兵」CTは買い得なのか

 レクサスで購入できるもっともベーシックな車種として10年以上販売されているレクサスCTが、2022年10月で生産を終了する。ハイブリッド搭載で優れた燃費性能に加え、改良により安全装備などもアップデートされている。

 モデル末期を迎えたCTが現時点でお買い得なのかを、その商品性をもとに判定してもらった!

文/渡辺陽一郎、写真/Lexus、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】消えゆく老兵に花束を……今に続くレクサスのイメージを形作ったレクサス CTとうとうフィナーレ!!(10枚)画像ギャラリー


■レクサスの「入門車」CTがついに生産終了

2011年に登場したレクサス CT。10年以上販売されていたレクサスのエントリーグレードが2022年10月にとうとう生産を終える

 最近はSUVの人気が高く、新型車も追加されたが、その一方でセダン、ワゴン、ミドルサイズハッチバックは売れ行きを下げている。生産を終える車種もある。

 トヨタが展開する上級ブランドのレクサスも、セダンのGSに続いて、ミドルサイズハッチバックのCTを廃止する。2022年10月で、生産を終えることが発表された。

 レクサスCTのボディサイズは、全長が4355mm、全幅は1765mmだ。このカテゴリーは、海外では販売しやすく人気も高いといわれたが、最近は売れ筋が比較的コンパクトなSUVへ移っている。

 そのためにボルボでは、ミドルサイズハッチバックのV40を廃止して、XC40に特化した。レクサスCTにも同様のことが当てはまる。

 レクサスCTの特徴は、ボディが運転しやすいサイズで、ハイブリッド専用車になることだ。ハイブリッドシステムやプラットフォームは、基本的に3代目の先代プリウスをベースにしている。リヤサスペンションは、ダブルウイッシュボーンの独立式だから、レクサスHSとも共通性がある。

 レクサスCTは2011年に発売され、2012年には、1か月平均で約1000台を登録した。先代レクサスLSや既に終了したHSと並んで、レクサスブランドの主力車種になった。

 その後、2014年にはフロントマスクにスピンドルグリルを採用するなどマイナーチェンジを行ったが、発売から10年を経過した2021年の登録台数は、1か月平均で約160台まで落ち込んでいた。

 レクサスCTの走行安定性、乗り心地、燃費性能などをさらに進化させるには、プラットフォームを設計の新しいGA-Cに刷新せねばならない。

■人気車種の変化でハッチバックに逆風

2018年に人気のコンパクトSUVとして登場したレクサス UX

 しかし前述の通り、最近はミドルサイズハッチバックの人気が下がっている。しかも2018年には、GA-Cプラットフォームを使ったコンパクトSUVのレクサスUXも加わった。

 レクサスUXは2021年に1か月平均で約820台が登録され、レクサスCTの約160台に比べて5倍以上の売れ行きだ。5ドアハッチバックの人気低迷も考えると、UXがあればCTは必要ないと判断された。

 またレクサスCTは、ミドルサイズハッチバックとしては、後席があまり広くない。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ1つ半だ。しかも後席は床と座面の間隔も不足するから、腰が落ち込んで膝は持ち上がり、やや窮屈な姿勢を強いられる。

 レクサスCTのホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2600mmを確保したから、ファミリーカーとして使えそうな印象も受けるが、実際は2人乗りに近い。

 販売店にレクサスCTのユーザーについて尋ねると「CTはLSやRXを使うお客様のセカンドカーとして人気が高い。コンパクトなハイブリッド専用車だから、環境性能のイメージもCTの魅力に繋がっている」という。ファミリー層は少ない。

 レクサスCTが発売された時の運転感覚は、当時のレクサスとしてはスポーティな印象が強かった。一般的な16インチタイヤを装着するバージョンCでも、操舵に対する反応が機敏で良く曲がるが、危険を避ける時などは相対的に後輪の接地性が下がりやすい。乗り心地は硬めで、路上の細かなデコボコを伝えやすかった。

 この点について当時の開発者は以下のように説明した。「レクサスCTは、販売総数の30%を欧州で売ることもあり、アクティブな運転感覚に仕上げた。VSC(横滑り防止装置)の作動タイミングも、若干遅めに設定して、ドライバーの運転する楽しさを大切にしている」。

 レクサスCTの発売当時は、レクサスブランドが伸び悩み傾向にあった。その理由として、メルセデスベンツやBMWに比べて個性が弱いことが指摘され、次第に走り、デザインともにスポーツ指向を強めていく。

 その先駆けがCTで、当時の開発者は「将来のレクサスを先取りするのがCTだから走りを煮詰めた」と語っていた。

■今だからこそのCTの「買い得グレード」は?

トヨタ プリウス。CTは当時のプリウスと共通のシステムを採用するハイブリッド専用車として登場し、数回の改良を経て徐々に洗練されていった

 このようにレクサスCTは、国内市場ではLSやRXのセカンドカーとして認識されながら、運転感覚はスポーティで、その後のレクサスのクルマ造りを先取りしていた。

 しかし高出力エンジンは搭載されず、当時のプリウスと共通のシステムを採用するハイブリッド専用車だから、クルマの位置付け、乗り心地、走行性能が統一されず散漫になっていた。

 それでも数回の改良により、レクサスCTは走行性能を洗練された。操舵に対する反応は少し穏やかになり、その代わりに後輪の接地性を高めて、乗り心地の粗さも抑えられた。サスペンションを柔軟に伸縮させることで、安定性と快適性を両立させる一般的なセッティングに進化した。

 今ではレクサスCTは発売から10年以上を経過して、プラットフォームの基本設計も古くなった。積極的に推奨できるクルマではないが、衝突被害軽減ブレーキやパーキングサポートブレーキなどの安全装備は、追加装着されている。

 価格はハイブリッドシステムを搭載しながら、標準仕様は400万円以下の386万9000円だから、レクサスとしては求めやすさでも注目される。

 買い得グレードは200hバージョンCだ。価格は409万3000円だから、標準仕様よりも22万4000円高いが、走行安定性と乗り心地をバランス良く向上させる前後のパフォーマンスダンパー、LEDヘッドランプ(標準仕様はハロゲン)、運転席と助手席の電動調節機能などを装着している。

 レクサスCTに近い車種をトヨタブランドから探すとプリウスになる。前述の通りレクサスCTのプラットフォームは世代が古いが、比べることは可能だ。

 プリウスの最上級グレードとなるAプレミアムツーリングセレクションは、本革シートなどを標準装着して価格は344万2000円になる。レクサスCT200hバージョンCとは装備内容が異なるが、装備の水準としては近い。価格はCT200hバージョンCが65万円1000円高い。

 レクサスには初回車検までのレクサスケアメンテナンスプログラム、通信機能のGリンクなどが標準付帯され、これらのサービスをトヨタブランドに換算すると25万円相当になる。この金額を差し引くと、約40万円がレクサス車としての高品質に費やされる対価だ。

 レクサスの比較的コンパクトな車種の場合、レクサス対価は30~40万円に設定することが多い。この金額は、上質な内装や乗り心地を考えると、妥当、あるいは割安といえるが、レクサスはCTのように設計が古くなっても値引きをほとんど行わない。下取り車の売却額の上乗せも極めて少ない。

 今は各社とも販売会社の受け取る1台当たりの粗利が減り、必然的に値引きを抑えているが、それでもレクサスの設計が古い車種は損得勘定で不利になる。逆に設計の新しいコンパクトなレクサス車は、買い得感が強まる。

 この点も含めると、やはりレクサスCTは推奨しにくいが、日本の使用環境とは親和性が高い。フルモデルチェンジを望んでいるユーザーも多いだろう。現行型で廃止するのは惜しいクルマだ。

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