日本最高峰のフォーミュラレースであるスーパーフォーミュラ。その見どころやドライバーの高度な技術などは目の肥えたファンには理解できるが、観戦経験が浅いと正直分かりにくい。
しかし、観戦初心者でも、スーパーフォーミュラの凄さが分かりやすいレースがある。2022年シーズン第3戦の鈴鹿がまさにそれだった。
第3戦鈴鹿の見どころと浮かび上がってきた課題をレポートする。
文/あああああ、写真/HONDA、TOYOTA
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■ドライバーの実力とレースの面白さが分かりやすい雨天でのレース
スーパーフォーミュラの人気をどうやって高めるか。もう何年も前からこのレースの課題である。ドライバーは実力者ぞろい。コーナリングスピードはF1を凌ぎドライバーたちが繰り広げるレースのレベルも高い。
ただ、ドライバーが狭いコックピットの中でマシンをどう操っているのかまったくわからず、またスーパーGTのように時にマシンをぶつけあうハデな接近戦もない(あったらコワい)ので、目が肥えていないとレースやカテゴリ-の面白さやポイントがわかり辛い。
そんな、いわば玄人好みのSFにも一目瞭然でドライバーの凄さがわかる時がある。
雨のレースだ。
今回の鈴鹿戦、予選日は初夏を思わせる日差しと気温のコンディションだったが、翌決勝日は一転し、朝から傘なしで歩くにはズブ濡れ覚悟、という雨量。
午後のスタート時刻が近づき雨は落ち着いたが、それでも緩い下り坂になっているメインストレートのコース脇はさらさら水が流れ、コースのあちこちを横切る『川』ができていることは容易に想像がついた。
決勝直前の8分間走行でそれを確認していたあるドライバーは、グリッドからよーいドン! ではなくセーフティーカー(SC)先導のローリングスタートになるかも、というよりそのほうが良いのではと考えたという。
筆者もSC先導で1、2周してからのほうが、雨のレースにつきもののアクシデントのリスクが減るのではないかと考えていたので、通常のスタートと知って「こりゃ荒れるぞ」と密かに覚悟(クラッシュ多発→赤旗もしくはフルコースイエロー→レース終了時間が遅くなる等々)を決めたのだった。
ところが喜ばしくも素晴らしいことに、グリッドを離れたマシン群は、接触もスピンもなく、全車無傷のまま通常のレーシングスピードで1コーナーに進入すると31周先のゴールを目指してレースを開始。
予選9番手から初優勝をもぎ取った松下信治の激走はもちろん、レース巧者たちによる攻防戦がそこかしこで展開する見応えある一戦となった。
それでもレース終了後、いまシリーズをリードしている現王者の野尻智紀、対抗馬筆頭の平川亮、そしてSFの現役最年長レジェンドにして『ご意見番』的存在の小林可夢偉が異口同音に「何も起こらなくて本当に良かった」と安堵のコメントを口にした。
「SFドライバーのレベルの高さの証明でもある」という考えでも3人は一致していたが、他にも言いたいことがあるのかなという印象を受けた点も同じだった。
それを口にしなかったのは、どんなに難しいコンディションでも自分たちの力量でリスクを回避できるという自負なのか、黙って仕事に集中するのもプロの矜持と考えているのか、はたまた言ったところで何も変わらないという諦念なのか。
■改善はまだ道半ば
モータースポーツにおける『安全』の二文字は、選挙の街頭演説で候補者が口にするような(ほとんど)実効性を伴わない扱いが許されるものではない。とはいえこのスポーツの特性上、競技中に『絶対的な安心・安全』を求めるというのなら、サーキットになど来ないで家で寝てなさい、ということになる。
今季SFではSCの運用など、過去の例に鑑み、より安全に配慮したルールの改善が図られているが、その道はまだ半ばであることも確かだ。
予選での出来事だが、タイムアタック中の笹原右京のマシンがメインストレートから1コーナーに向かっていた時、国本雄資のマシンがコースに入ってきた。
国本は笹原がアタックラップに入っていることを理解していたが、チームから特に『ピットロード出口で待て』の指示もなく、笹原のスピードからして2~3コーナーで自分を追い抜いていけるだろうと考えたのだという。
特段危険だったわけでもなく、ましてや国本に悪気があったわけでもないが、アタックを邪魔された笹原が予選A組の最下位になったことに変わりはない。
笹原も国本の動きに惑わされることなく瞬時に進路を変更しズバっと抜いていく老獪さを、これを機にモノにしていただきたいが、いずれにせよ非はあやふやな動きをした国本にある。
それに対するペナルティが3グリッド降格という何やらハンパな数だったのは、笹原への『だからって国本の後ろについていかんでもエエがな』という考えの反映だったと聞き及んでいる。
このような事例がたった3グリッド(といっても大きいが)降格で済むのなら、私が年間タイトルと翌年のスポンサー契約がその一戦にかかっているチームの代表だったとして同じシチュエーションになった時、セカンドドライバーに「わかってるよね」とこっそり耳打ちする誘惑に逆らえる絶対的な自信はない。
F1では現実にいくらでもあったこのような『駆け引き』がSFで横行する懸念は必要ないと思うが、ドライバーやチームがあらぬ誤解や恨みを受けないためにも、ペナルティを課すときは温情ナシの厳しい姿勢で臨むことが、ズルさや不正直を本質的に嫌う日本人の気質に沿った最高峰モータースポーツが志したい姿勢ではなかろうか。
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