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 2022年はミニバンを中心に注目の新車が発売される予定だ。すでに発売されたノア/ヴォクシーをはじめ、間もなくステップワゴンも発売になる。Zなども注目のスポーツモデルだ。

 その一方で注文しても新車が届かない「納期遅延」が大きな問題となって久しいが、依然として収束気配すらない。そんな中、前述したノア/ヴォクシーなどはグレードによっては納期が早まるという。それがハイブリッドを搭載しない「ガソリン」グレードだ。

 今回は人気車の「ガソリングレード」に注目して、その納期を探った!

文/小林敦志、写真/ベストカー編集部

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■ユーザーと販売現場を悩ませる納期問題

2022年1月、年明け早々にニューモデルが登場したトヨタ ノア/ヴォクシー。ハイブリッドグレードよりもガソリングレードのほうが納期が早まるという

 新車の深刻な納期遅延が続いていることは、すでに聞きなれたトピックとなっている。サプライチェーンの世界的混乱に加え、新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大によるものが大きいとされ、そして今後はロシアのウクライナ侵攻も影響してくるともいわれている。

 さらには中国での新型コロナウイルスの感染再爆発による上海をはじめとして広範囲にわたる大都市を中心としたロックダウンなどによる中国経済の停滞など、事態は収束するどころか、新たな納期遅延要因が続々発生し、収束するどころか新たな混乱を招くのではないかとの不安の声も大きい。

 特にトヨタ系新車ディーラーでは、いまの納期遅延が続くなかラインナップする車種の多くで法規対応の改良を進めており、改良後のモデルへの切り替えを進めている。

 しかし、思いどおりに新車の生産が進まないなか、改良前モデルのバックオーダーを、より多く抱えるような(トルツメ)納期遅延が深刻なモデルほど、その改良前モデルのバックオーダーを消化してから改良後モデルの生産へ切り替えるので影響が大きい。

 現状ではすでに改良後モデルの新規受注が可能な車種もあるようだが、改良後モデルのデリバリー開始が2022年8月や9月となっているモデルもあるようで、販売現場をより悩ませている。

 人気モデルを多く抱え、販売のメインがHEV(ハイブリッド車)となっているトヨタは、半導体の世界的な供給トラブルが続くなか、ハイブリッドユニット用の半導体がより不足傾向となっており、HEVの納期遅延が目立っているようである(少なくとも販売現場ではそう説明していた)。

 それでも、「待ってでも乗りたい」という消費者も多いようで、納期遅延が続くなかでも、比較的納期の早い他メーカー車へ流れることなくトヨタ車が選ばれることが続いており、トヨタ車の人気の高さや、トヨタ系ディーラーの販売力の強さを改めて筆者は感じている。

■納期が短めなガソリン車を勧められることも

筆者が2019年に予約購入したというカローラセダンのガソリン車は1カ月半で工場出荷となった。早すぎて筆者も驚いた!?

 トヨタ以外のメーカーでも、人気モデルは納期遅延が深刻になっているケースが目立つ。HEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)がより納車までに時間がかかる傾向も同じ。

 ただし、自社ウエブサイトで工場出荷時期の目途をモデル別に公表しているトヨタやホンダの車種別一覧表を見ていると、ここ最近の傾向として、同じモデルでHEVとガソリン車がある場合でも工場出荷時期の目途がそれほど変わらないケースが目立ってきている。

 生産割合や生産調整などが、メーカーや車種によって異なるので一概にはいえないが、HEVの納期遅延がより深刻なので、納期が短めなガソリン車が選ばれる(セールスマンが勧める)ケースも目立ってきているようである。

 筆者は2019年に現行カローラセダンとツーリングがデビューする時に、正式発売前に“予約”という形でカローラセダンのガソリン車を購入した。購入したディーラーでの予約第1号でもあったのだが、工場出荷が発注後1カ月半ほど、そして納車が正式発売から10日後ほどと短期間で納車になったことに驚かされた。

 担当セールスマンいわく、「受注はHEVに集中しており、ガソリン車を選ばれるお客様がかなり少数だったので納期が早くなったようだ」と説明してくれた。コロナ禍前には一般的には同じモデルでHEVとガソリン車がある場合には、HEVに受注が集中し、ガソリン車より納期が遅れるケースが目立った。

 先代ノア&ヴォクシーでは、発売直後はHEVに受注が集中したのだが、先代ではHEVとガソリンとでは燃費にそれほど際立った差がないとのことで、ガソリン車に受注が多く集まるようになり、HEVのほうがダブついて納期が早くなるという事態も発生していたが、これは特殊なケースといってもいいだろう。

■トヨタ車にみるハイブリッド車とガソリン車の納期

人気のヤリスクロスはHEV、ガソリン車を問わず発注後6カ月後に工場出荷となっている

 現状のトヨタの様子をみると(ウエブサイト上の4月22日時点での情報)、例えば発売以来高い人気を維持しているヤリスクロスはHEV、ガソリン車を問わず工場出荷時期の目途は発注後6カ月(納車予定は約7カ月後/工場出荷時期の目途に1カ月加えるのがおおよその納期目途と販売店で聞いた)。

 カローラセダン、ツーリング、スポーツ(いまはオーダーストップになっているとのこと)では、ガソリン車が5カ月(納車予定は約6カ月後)、HEVが5~6カ月(納車予定は約6カ月から7カ月)と、ガソリン車のほうが若干ではあるが納期は短くなっている。

 ノア&ヴォクシーは出荷時期目途ベースでガソリン車が4~5カ月、HEVでは6カ月以上となっており、HEV、ガソリン両方で仕様や選択オプションでさらに時期が異なるとのことなので、納期遅延が続くなかでもガソリン車のほうが納期は早めで、比較的時期も読める状況になっているようだ。

 現状ではどのメーカーでも、ある車種で納期が大幅に遅れているということだけでなく、“いつになるのかがわからない”ケースが目立ち、それが現場の混乱を招いているのである。

 ちちなみに、本稿執筆時点中にアルファード&ヴェルファイアに新たな特別仕様車が設定されたが、このタイミングで法規対応の改良が行わたと聞いている。

ガソリン車、HEVともに新型ノア&ヴォクシーに比べれば納期は短めに推移しているようなので、利益率も飛びぬけて高いモデルでもあり、今後は再びフルブーストでトヨタの現状での“稼ぎ頭”となっていきそうである。

 ダイハツからのOEM(相手先ブランド供給)車は比較的納期が短めに推移しているとのことだが、ライズの“eスマート”仕様は納期遅延になっているとのこと。

 ガソリン車のみのラインナップとなり、人気車となっているルーミーは工場出荷時期の目途が1~2カ月なので2~3カ月で納車可能ともいえ、トヨタ系ディーラーセールスマンにとって現状では販売メイン車種にもなっていると聞く。

 同クラスのヤリスは、納車予定ベースでHEVが約4~5カ月、ガソリン車で約5~6カ月とHEVとガソリン車で逆転現象のような状況となっているようにも見えるが、ダイハツからの同クラスOEMのなかで、ルーミーならば明らかに納車が早まっているといっていいだろう。

■電化へとシフトする時代にガソリン車購入は正しいのか

ホンダ ヴェゼルの場合、ガソリン車とハイブリッド車の納期は明らかな差が出ている。写真の「PLaY」はオーダーストップ継続中だ

 ホンダはヴェゼルが、工場出荷時期目途ベースでガソリン車が3カ月、HEVで半年以上と明らかな差が出ているが(PLaYのオーダーストップは継続中)、そのほかにガソリン車とHEVをラインナップする車種は工場出荷時期の目途に差がない車種が多い。

 ちなみに本稿執筆段階ではこのような状況だったのだが、その後改めて確認すると、ガソリン車の工場出荷時期の目途が6カ月程度に延びていた。生産の都合なのか、ガソリン車にニーズが集まったのかは確認できていない。

 本稿執筆時点で未発売の新型ステップワゴンでは、工場出荷時期目途ベースでガソリン車が4カ月程度(一部仕様やボディカラーでは半年)、HEVが5カ月程度とやや差が出ている(その後ガソリンが5カ月程度と延びてHEVと同じになってしまった)。

 トヨタもホンダもHEVとガソリン車の納期は、HEVがやや納期がかかるというのが現状ともいえるが、事情はどうあれガソリン車の納期もじわじわと延びてきている傾向が目立ってきている。ただ、納期の混乱(いつになるかわからない)という点では、ガソリン車のほうが状況を把握しやすいとの話もある。

 納期遅延が顕著となる以前と比べれば、ガソリン車とHEVの納期の差は縮小傾向にあるように見えるのが、現場のセールスマンが誘導しているのか、消費者が選択しているのかは、はっきりと確認できないが、納期重視でガソリン車が選ばれるケースもこの傾向に少なからず影響を与えているということはできそうだ。

 日本政府も諸外国同様に“カーボンニュートラル”を掲げているが、その達成目標時期は2050年となっている。その前に、2030年代半ばに電動車以外の販売を禁止するとしているが、その電動車にはHEVやPHEVも含まれている。

 もちろん、2030年代半ば以降もガソリン車は継続的に乗ることはできるので、2022年にガソリン車を購入してもすぐに乗り続けることができなくなることはない。

 危惧すべき点としては、今後税制改正などを行い電動車よりガソリン車の自動車関係諸税が高くなるなど、維持費の面で差がつくことは十分考えられるが……。

■ガソリン車も捨てたものではない

ノア&ヴォクシーも、新型になるとHEVのほうが燃費性能は良くなっている。ガソリン車に懸念があるとすればガソリン代高騰によるコストの差だろうか

 日本メーカーのガソリンエンジンは世界トップレベルの燃費性能や環境性能をいまも維持している。欧州系ブランドが躍起になって車両電動化を進めているのも(BEVメイン)、ガソリンエンジンでは日本メーカーと勝負にならないことも影響しているとの話もある(つまり日本メーカー潰し)。

 日本より電力供給がギリギリともいえる新興国などでは、中国系メーカーが車両電動化をじわじわと進めようとしているが、これもある意味“日本メーカー潰し”という側面も目立つ。

 一般的なメディア報道では“内燃機関=悪”というイメージを強く受けるが、ゼロエミッションのBEVばかりになったからといって、環境破壊の呪縛から解放されることはない。

 脱炭素に貢献しても、ほかの面ではかえって地球を傷つけてしまう結果にもなりかねないのである。しかも日本だけ見れば、現状では火力発電がメインなのだから、BEVに切り替えても二酸化炭素排出の“出口”が異なるだけになってしまう。

 2022年にガソリン車を購入して5年乗っても2027年、そのころには現状では日系メーカーでは出遅れイメージの強いBEVも各メーカーから多彩な車種がラインナップされていることだろう。そして、いまの深刻な新車の納期遅延も少なくとも、いまよりは改善していることだろう。

 ただ納期遅延とともに、燃料費高騰というものも消費者を悩ませている。先代モデルではHEVとガソリン車で燃費性能に際立った差のなかったノア&ヴォクシーも、新型になると諸元表上では明らかにHEVのほうが燃費性能は良くなっている。

 このあたりは価格差や納期の違い、個々の使用状況などを考慮した総合的判断が必要となるが、非常事態のいまでは“ガソリン車もまだまだ捨てたものではない”と広い視野で新車購入の検討を行うのが、いまの“非常事態”での賢い進め方といえるだろう。

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