長年、ミドルミニバンのトップランナーとして君臨しているトヨタ・ノア/ヴォクシー。2022年1月に登場した新型は、最近のトヨタ車に採用されているTNGA技術や利便系メカニズム&装備が投入されたことで、名実ともに“最新”を名乗るにふさわしいミニバンだ。
プラットフォームやパワートレイン、機能装備など、あらゆる部分がパワーアップしたといっても過言はないが、なかでも最も注目なのが充実した運転支援機能だ。
先代に装着されていたトヨタセーフティセンスは、ACCやLTAなどの運転支援機能は省略されていた簡易型で、ライバルのニッサン・セレナやホンダ・ステップワゴンに比べると、最大の弱みになっていた。販売台数はノア/ヴォクシーが圧勝していたが、実際の商談の際にはユーザーから指摘されることも多かったようだ。
2022年1月に登場した新型ノア/ヴォクシーには、フル機能版のトヨタセーフティセンスが全グレードに標準装着されている。遅れをとっていた運転支援機能の水準をトヨタ車のトップレベルに引き上げてきた。
最後発の最新仕様の強みもあって、支援走行時の加減速や操舵支援も極めて巧み。LTA作動時の挙動もいたずらにコース中央をキープするのではなく、後側方から接近するクルマの動きや周囲状況に応じて自然なラインを走ってくれる。なかでも高速道路での渋滞時により柔軟な運転支援を行う『アドバンストドライブ』は、限定的なハンズオフ運転にも対応する優れものだ。
また、パワートレインの性能強化も見逃せない。ガソリン車は先代の1.8リッターエンジンから2.0リッターのダイナミックフォースエンジンへ、ハイブリッド車は先代と同じ1.8リッター+モーターのハイブリッドだが、駆動モーターやバッテリーを強化した改良ユニットを採用している。いずれもひとクラス上の動力的な余裕を手に入れて、燃費も共に向上している。
■走りの進化は想像以上。運転支援装備が貢献
実際、新型ノア/ヴォクシーに試乗してみると先代との違いは想像よりも大きい。アクセルを踏み込んだ際の加速感は一枚上手で、段差などでの突き上げ感も減少し、高速走行時の安定性も強まっている。
独特の運転感覚もあってミニバンは少し苦手という向きもいるだろうが、新型ノア/ヴォクシーの穏やかで正確なハンドリング感覚と見晴らしの良さは、そんなユーザーにとってありがたく感じるだろう。
なお、ミニバン選びの最重要ポイントになるユーティリティ性能も健在。先代もシート構造の最適化や低床構造の採用で、抜群の使い勝手を実現していたが、新型はその美点に加えて最新の車載IT(ディスプレイオーディオ)や駐車支援のアドバンスドパークを備えることで、日常域での快適性を大きく強化している。
内装レイアウトは機能優先でいかにも実用車的だが、シートの素材感やトリム類の組付けレベルは高く、安っぽさは感じない。
まさに全方位に進化を遂げている新型ノア/ヴォクシーだが、数多くの最新装備と機能が追加されたこともあって、先代よりも価格帯が高くなったことが泣き所。
新旧を同等グレード同士で比べてみると、その価格差はおおよそ15~30万円ほどになる。さらに先進装備はオプションというものも多く、選択次第では、クラスが上のアルファードの2.5リッターガソリン車よりも高くなってしまうケースも出てくるほどだ。
とはいえ、すべてのトヨタ車の中でも最新仕様といっていい装備機能の充実ぶりを考えれば、この価格設定は妥当だろう。ファミリー向けのミドルミニバンだけに、価格アップが気になる人もいるだろうが、内容は価格以上に進化しているのは間違いない。
■新型ノア/ヴォクシーのグレード選び
新型ノア/ヴォクシーを購入する時に、まず決めておきたいのがパワートレインだ。同等グレード&駆動方式でガソリン車とハイブリッド車を比べると、おおよそ40万円前後の価格差がある。
ガソリン車とハイブリッド車を性能面で比べてみると、動力性能も燃費の面でもハイブリッド車が優れる。ガソリン車も2.0リッター化+ダイレクトCVTを搭載したことでパワーアップしているが、ハイブリッド車の進化はそれ以上といってもいい。
ハイブリッド車に搭載されるHVシステムは、1.8リッターエンジン+モーターのシリーズパラレル式。先代まではTHS IIと呼んでいたシステムと仕組みは同構成だが、駆動用バッテリーやパワーコントロールユニットを強化したことで、電動走行の適用範囲や余力感が高まっている。
また、リヤにモーターを搭載する4WD車(E-Four)を設定したことも見逃せない。4WD車が絶対に必要な地域のユーザーにとっては、この点も朗報だろう。ちなみにハイブリッドの4WD車はリヤモーターの駆動力が大きく、動力性能面の余裕も強まる。燃費も優秀(HVのFF車が23.0km/Lに対して、4WD車は22.0km/L)でハイブリッド車のFF車と4WD車の価格差は22万円ほどなので、積極的に選んでもいいだろう。
グレード構成は、ガソリン車もハイブリッド車も、ノアは標準ボディ車(X/G/Z)とエアロボディ車(S-G/S-Z)、ヴォクシーはエアロボディ車(S-G/S-Z)が設定される。
『G』と『S-G』、『Z』と『S-Z』の関係は、主に内外装の違いによるもので、利便装備や機能面はほぼ同等のものが装着されている。全グレードに最新のトヨタセーフティセンスとディスプレイオーディオ(8インチ)が標準装着されるため、ベーシックな『X』でもコスパの良さを実感できるが、導入直後の段階ではノアもヴォクシーも、フラッグシップ相当の『ハイブリッドS-Z』が一番人気となっている。
ノアの『ハイブリッドS-Z』はFF車でも367万円(ちなみに『ハイブリッドX』なら305万円)とミドルミニバンとしては相当高価だが、リセール時の高価買取は期待できる。予算に余裕があるならば『S-Z』を選んでおけば間違いはない。
なお、オプション装備は、トヨタ車初採用というものが多く、すべてを付けてしまうと支払額は相当高くなってしまう。ただ車載IT機能を大きく強化できるディスプレイオーディオプラスは、表示モニターが10.5インチ&タッチパネル仕様になり、フルセグTVと独立ナビが追加される。オプション価格は、おおよそ20万円ほどなので、選んでも後悔しないオプション装備だろう。