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『GTはフタを開けて見なければわからない』、『昨年、予選から突然GRスープラがメチャメチャ速かった』、『テストでは三味線もあったと思う』など、相変わらずGT500クラスらしいコメントが溢れた、スーパーGT開幕戦岡山国際サーキットでの搬入日。直前の富士公式テストもほとんどがウエットコンディションになったため、ますますGT500の勢力図がわからないままだが、今回は各メーカーから移籍したドライバー、新コンビとなるドライバーにフォーカスして開幕戦の抱負を聞いた。

 今年の注目車両でもあるニッサン新型Z GT500、そのパフォーマンスは謎に包まれたままだが、その感覚はドライバー側も同じなようだ。岡山で優勝候補にも挙げられる12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴が話す。

「正直、まだZのパフォーマンスについてはライバルと比べて僕もわからない部分もあるので、今回のレースでわかるんじゃないかなと思います」と慎重なコメントの平峰。

「乗り心地としては、去年までのGT-Rはある程度のデータも蓄積されていたので安定したクルマだったんですけど、Zに関してはハイスピードの部分ではGT-Rよりも安定して良くなっているといいなと。富士の公式テストでも雨だったりで正直、見えてないところもありましたけど、乗っている印象としては良かったと思います。周りのクルマはもっとダウンフォースを付けていたのでしょうけど、ストレートは速かったですよね」と、Zの印象を話す。

 今年からチームメイトとなる、ホンダから移籍したベルトラン・バゲットとも旧知の仲だったようで、コンビにも問題はないようだ。

「バゲットの印象としては、まずは速いですよね。前から個人的にも知っていた仲で速いのは知っていましたし、基本的に誰とでも楽しくするので。この3年、(佐々木)大樹、松下信治、バゲットと3人の速いドライバーと組ませてもらえて、最高です。バゲットともクルマに乗って感じてコメントする内容がほとんど同じなので、セットアップの好みもいいんじゃないかなと思います」と平峰。

「今回だけでなく、やっぱり同じZのなかでもミシュラン勢の2台にも負けたくないですし、ヨコハマにも負けたくない。合同テストではホンダが速かった印象があるので、まだまだ余力は残していると思いますが、フタを開けてみてどうなるか。できるだけ前でレースをして、できれば表彰台も上がりたいですし優勝争いもしたいです。頑張ります」と明日からのセッションへの抱負を語った。

 12号車と同じく、GRスープラ勢のなかで優勝候補に挙がる新コンビチームとして、37号車KeePer TOM’S GRスープラの宮田莉朋に聞く。

「チームメイトのサッシャ(フェネストラズ)選手とのコミュニケーションも問題ないですし、チームのみんなが今年もう一度チャンピオンを獲ろうというモチベーションがすごく高い。僕らは最年少コンビで(ふたりとも1999年生まれ)トラックエンジニアもGTのなかでは最年少なので、みんなでやる気に満ちている状態です。チームもとてもすごしやすいです」と宮田。

 勢いを感じるコンビだが、ふたりともそれぞれ不安要素もある。宮田はキャリアを通じて今年始めてブリヂストンで戦うことになる。

「まだちょっと僕がブリヂストンタイヤの経験が少ない部分がありますし、サッシャ選手も(コロナ禍の入国問題で)昨年途中までレースができていなくて経験が少ないという部分はあって不安はありますが、そこは少しずつ経験を積んで最終的にはチャンピオンが獲れればいいなと思いますし、トムスですので開幕戦から戦えると思っています」と宮田。

 始めてのブリヂストンの印象は「どこのサーキットでも、どのコンディションでも速いイメージですね。あとタイヤの選択の幅が広いというか種類が多いです」と話す宮田。

「同じメーカー内のバトルになる可能性は高いですし、隣の36号車(au TOM’S GRスープラ)は必ず前に来るでしょうし、ニッサン、ホンダ陣営がどんな雰囲気なのか。去年の岡山はニッサン、ホンダと練習走行では速かったですが、予選、決勝と落ちていったイメージもありますが、今回はフリー走行で走ってみないとわからないですね」と開幕戦の印象を語る宮田。若いふたりのコンビと、名門トムスがどのようなパフォーマンスを見せることになるのか。

 そして最後はホンダNSX陣営。昨年所属していたニッサン陣営から出戻りとなった松下信治(17号車Astemo NSX-GT)に、手応えを聞いた。

「クルマはいいですよ。でもテストですから、明日の予選まではわからないという不安がちょっとありますけど、乗ってる感覚として速いなという印象はあります。ダウンフォースもクルマの車体全体で出ているなという印象があります」とNSXの印象を話す松下。

 新しくチームメイトとなる塚越広大との関係も良好なようで、松下らしさが発揮できる環境になっているようだ。

「塚越選手とのドライビングも似ていますけど、僕の方が踏力がちょっと激しかったり、クルマを動かす方ですね。でも、違いとは違和感は全然ないです。速いクルマは誰が乗っても速いので。今週末はもちろん、勝ちたいですけど、岡山で速さを見せることで『今シーズンのAstemo NSX-GTは速いな』と思って頂ければ。結果を出したいのはもちろんなんですけど、同じホンダ陣営内でも、同じタイヤを履いているチームも含めて、個人的には速さのインパクトを与えたいですね」

 クルマのパフォーマンス比較に加え、タイヤメーカーの違い、さらに持ち込みタイヤの違いと当日の路面コンディションなどで大きく週末のパフォーマンスが左右される近年のスーパーGT500クラス。

 走り始めのフリー走行でもまだまだ読めず、予選で速くても決勝のロングランに向けてまったく安堵することができないが、まずは予選の速さがひとつの指標になることは間違いなさそうだ。