国の財政について審議を行う財務大臣の諮問機関で、財務省の審議会の一つである「財政制度等審議会」が25日にまとめた「歴史の転換点における財政運営」の中身がネット上で公開され、話題になっている。
資料の中では、さまざまな財政再建案や予算削減案が示されているが、中でもネット民の注目を集めたのが、「市町村・地域管理構想を活用した一時的な中心地居住」という提言だ。
道路の維持費を都道府県・政令指定都市ごとに比較すると、積雪地域の方が相対的に高くなっており、毎年恒常的に発生する除雪費が影響していると考えられる。こうした状況に鑑み、例えば、市町村・地域管理構想に基づく地域の発意により、冬期に限り地域の全住民が平野部に集住し、地域に至る道路を冬期閉鎖することを合意した場合は、節約した除雪費の一部を居住支援等に活用できるインセンティブを創設するなど、財政負担の効率化と住民の安全・安心な生活の両立を図るための選択肢を検討すべきである。
要は、「冬季間の除雪費用を削減するために、豪雪地帯に住んでいる住民は平野部に移れ」というものだ。この提言にネット上では疑問の声が相次いで寄せられていた。
ネット民「頭おかしい」
私、北海道民。何千何万もの世帯が平野に移動させられる事になりますねぇ。
頭おかしい。特に一次産業(農業、林業、漁業、等)の人たちはどうするの?雪のない次期だけ稼動してるわけじゃないんだけど?
なにいってんだ?冬の間だけ生活を捨てろってこと?
理想形描きその実行のための効率性追求という機械的合理主義にはまるバカサヨ思考の典型。
じゃあ夏と冬は無駄に電気代がかかるから財務省は地方に移住な
大企業の社長や有名大学の教授、大手新聞社の論説委員などエリートばかりで固められた委員の多くは知らないのかもしれないが、豪雪地帯の家は冬期間、毎日のように雪下ろしをしなければならない。降雪がひどい日には1日2回、3回の雪下ろしも珍しくない。そうしないと、たちまち家が潰れるからだ。
冬の間中、半ば強制的に家を留守にさせるということは、これまで地域住民が担ってきた雪下ろしの役割を国なり地方自治体なりが担うわけだが、この予算や配置人員はどう捉えているのか。もし、何もせずに家が潰れたということになれば、それは当然、補償対象にならなければおかしい。除雪費を惜しんで、補償金額がより大きくなるということも考えられるのではないか。
そもそも憲法違反では?
また、同審議会は、2021年の国全体での除雪費総額が1316億円だったとしているが、この施策によっていくらの除雪費が削減できるのかを示していない。本来は、「いくらの予算が削減できるからこの案はどうか」となるはずだ。
さらに、日本国憲法の第22条には次のように記載されている。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する
居住、移転の自由を制限するこの案は憲法違反ではないのか。それとも、同審議会の委員は、豪雪地帯に住むことは「公共の福祉に反する」と考えているのか。ロシアが避難させたウクライナ人を強制的にシベリアや北極圏に移動させたのではと報じられているが、これではロシアと一緒だ。
ツッコミどころ満載のこの案。このまま実行に移されるとはさすがに思えないが、ネット上に公開するのであれば、もう少し練られたものを出すようにしてほしい。こうしたことが重なるたびに少しずつ、国民の間で、国や官僚機構への信頼が揺らいでいきはしないか。