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自民党青年局が27日、この週末に開催した会議・研修でNFTを配布すると発表。発行するNFTは、岸田首相や小泉進次郎前環境相、野田聖子こども政策担当相らの画像データで、会議への出席証明・記念バッジとして活用するという。

この取り組みを報じたフジテレビ系のネットニュースの記事を起点に、週末のツイッターは「岸田トークン」がトレンドワードに入るなどちょっとした話題となった。

岸田首相らの画像入りトークン(小倉將信青年局長ツイッターより引用)

記事では、岸田首相が先ごろのイギリス訪問でWeb3政策をぶち上げたことや、自民党のNFT検討プロジェクトチーム(PT)が関連法の整備を提言したことなど、最近のNFT政策の動きを紹介。同提言の素案を、弁護士時代の仲間たちを集めるなど主導した塩崎彰久青年局次長が、“岸田トークン”発行の狙いについて「まずはNFTに慣れてもらうことで、エンゲージメント(愛着心)の仕方を模索していきたい」というコメントしたことを報じている。

ただし、政治ニュースを地上波の報道番組で接する視聴者は、中高年が多い。記事を書いた記者も政治部所属で、NFTのようなデジタルの最新トレンドに明るくないとみられ、自民党がNFTを政治活動に取り入れる真の狙いや、NFT政策の今後について踏み込みきれたとは言い難いようだ。

フジテレビ記事では入ってなかったキーワードの一つに、「DAO」(分散型自律組織)がある。DAOは、トップダウンではなく、組織内で発行されたトークンを保有するメンバーが投票を行って組織の意思決定に関与する民主的な組織形態。青年局の小倉將信局長はツイッターで「青年局の活動方針や政策決定等の際に投票権として使うことで、青年局自体にDAO(分散型自律組織)の要素を取り入れていく事も想定しています」とコメントしていたが、自民党の先進的な議員の中では、将来的には派閥レベル、あるいは党全体の意思決定の仕組みにも昇華させる構想がある。

改めて突きつけられた課題

実は「岸田トークン」が話題になった翌29日、ブロックチェーン関連のスタートアップが今回のNFT発行に際して、あるお知らせを自社サイトに掲出した。この会社は、青年局がNFT発行にあたって利用したプラットフォームを運営するインディースクエア社(本社:東京都渋谷区)。「自民党青年局が活用するNFTに関する補足説明」と題した告知文では、

1) 当該のNFTを作成するために使用したトークンは当社の海外居住者名義の口座で適法に調達しており、今回の施策で活用するために当社内限りで使用しております。

2) 今回のNFTは自民党青年局が管理しているものではなく、当社で運用しております。

3) NFTに関しては譲渡不能の設定を行うことで金銭的な価値を持たない仕様で運用しており、決済手段として利用不可となっております。

などと説明。法整備がこれからという段階で、天下の自民党がNFTを初めて本格的に発行するとあって、いずれも、現行の規制に抵触しないように強調する狙いがあったとみられる。このうち 3)は、アメリカや韓国では、NFTを政治資金調達に活用する動きが始まっているが、日本では、政治資金規正法などで仮想通貨やトークンの位置付けが決まっていない。

また、「海外居住者名義の口座で適法に調達」を強調する 1)については、日本でWEB3事業を行うことが難しい現状を皮肉にも改めて示した格好と言える。日本の現行税制では、ブロックチェーンの関連事業者が、トークンを現金化していなくても時価評価に課税するという理不尽な仕組みになっており、海外に有能な起業家が続々と流出し、自民党のNFT検討PTができた経緯がある。

ツイッターでは、Web3に詳しい人たちから「web3やるなら海外移住が前提になっている現状を、今回の件で政治家も体感したのではなかろうか」との指摘が出ていたが、参院選に向けた話題づくりにとどまらず、実効性のあるルール作りが求められていると言える。

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