北海道知床半島沖で観光船が遭難、11人が死亡し、15人が行方不明になっている事故について、運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長が関係者に対し、事故原因についてクジラに当たった可能性に言及していたと、北海道新聞(道新)が30日の朝刊で報じたことでネット世論の怒りがさらにヒートアップしている。
桂田社長サイドの声明は30日20時現在、報じられていないが、道新は、桂田社長が謝罪会見後に従業員に宛てたメールの文面も入手しており、「船が予定通り(午後1時に)戻れれば、(波高は)1メートル前後の許容範囲内だったことがわかります」などと事故の責任回避とも受け取れる文言を伝えていたと報道。桂田社長の旗色は悪くなる一方だ。
この報道にネット民の多くが「ひどすぎる経営者だ。 未だ見つかっていない方いるのに、自分たちは悪くないと」「何を根拠に」などと怒り心頭。あるいは「クジラの可能性が否定されたら次はゴジラの可能性って言い出すぜ」などとよもや失笑も漏れるなど、連休中のネット民は積極的に反応した。
船体引き揚げがポイントか
他方、感情的な書き込みがあった中で、「検証出来ないことを見越しての発言ならかなり悪質と感じる」と冷静な“邪推”も。船体の引き揚げが進むかどうかも、今後の捜査上の大きなポイントになりそうだが、スポーツ報知はこの日、船体引き揚げに詳しい業者の見積もりとして1億円がかかる可能性を指摘した。
引き揚げは原則、運航会社の負担とされるが、東京商工リサーチの調査によると、「知床遊覧船」の近年の経営状態はコロナ前の2019年までは約6000万円の売上高で推移。コロナ禍で観光客が激減した20年は2700万円。昨年10月の決算時には4000万円程度に回復したとみられるが、いずれにせよ引き揚げ費用は、例年の売上高を超える可能性が高いとみられる。
従業員の整理解雇にも踏み切るなど経営状態は思わしくない同社が、引き揚げ費用を分担できるほどの内部留保はなさそうだ。危機的な状況の同社に融資する金融機関がいるかも絶望的で、同社が契約していた保険会社の補償内容によって費用を捻出できるかが今後の状況を決めそうだ。
クジラは本当にいたのか?
いずれにせよ、桂田社長の「クジラ」発言が報道通りの事実だとすれば、どのような意図からだったのか。このまま何も釈明しなければ、社会的な不信感を払拭することはさらに厳しくなる。
なお、SAKISIRU編集部で、新聞記事のデータベース「日経テレコン」で道新と全国紙を過去10年分を検索した限りは、知床海域でクジラと船舶の衝突事故の記事は直ちに見当たらなかった。
「知床遊覧船」とは別に知床沖でホエールウォッチングを売りにしている運航会社のサイトによると、船舶との衝突事故を引き起こす可能性がある大型クジラのうち、マッコウクジラが出現するのは例年6月中旬から10月中旬ごろ。ミンククジラの出現は同社が運航する4月下旬〜10月中旬の常時といい、万一の可能性があるとすればミンククジラと言えそうだが、果たして本当にクジラとの衝突はあったのだろうか。