レギュラーガソリン価格が170円台と聞いてもさほど驚かなくなったのは、筆者の感覚が麻痺してきているに違いない。しかし、レギュラーガソリンが173円(石油情報センター 2022年4月20日14時発表)はやはり異常に高い。
さらに原油価格の高騰対策をめぐり、自民・公明両党と国民民主党の検討チームは、当面は、石油元売り会社への補助金を拡充するいっぽう、なんとトリガー条項の凍結解除については引き続き検討することになり、見送られたのだ。
いったいガソリン高騰はいつまで続くのか、いい加減にせい! とお怒りの読者も多いのではないだろうか。
こんな状況のなか、景気よく「ガソリン満タン!」で給油していますか? なかには財布の中身に応じて、3000円、20Lなど数量、金額を指定して入れる人も多いのではないでしょうか。
そこで、ふと疑問が湧いてきました。はたして、満タンにしたほうがいいのでしょうか? それとも重量が軽くなるほうが燃費がいいはずなので、なるべくこまめに少しずつ入れる方がいいのでしょうか? 史上稀に見るガソリン高騰時代のベストな給油法を解説します。
文/岩尾信哉
写真/ベストカーweb編集部、Adobe Stock(メイン画像=beeboys@AdobeSock)
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■ガソリン代を巡るやっかいな現状
少し基本的なガソリン価格が変わる要素をまとめておくと、まずはガソリン価格の大元といえる原油価格(WTI先物取引)については、2020年夏頃の1バレル約40ドルから同100ドルのレベルと倍以上に値上がっている。
さらにドル円の為替レートは1年前の1ドル109円ほどから現在は約125円と高止まりつつあり、原油の輸入コストなどに影響している。
これに国内での輸送コストなどが加わってガソリン価格の上昇を後押ししてしまっている。
今後は日本では政府の石油元売り会社への補助金政策がガソリン価格の抑制に効いてくることもあり得るが、政府が補助金の上限をちまちまと(失礼!)25円ずつ上乗せしても、そう簡単にはGSの実売価格に反映されるわけでもないから、まさに焼け石に水といったところで、その効果についてはしばらくの間は期待薄だ。
こうした様々な要因が絡み合った結果、現在のレギュラーガソリンの全国での実売価格は、いまや経済産業省・資源エネルギー庁の石油情報センターの発表によれば173円/Lとなっている(2022年4月20日14時公表)。
実勢価格を見ても、ガソリン価格サイトの「gogo.gs」でも169円/L、ユーザーから情報を基に運営されている燃費情報サイト「e-燃費」でも165円/Lほどとなっている。
振り返れば1年前は約140円/L、2年前なら120円/Lというのだから、開いた口がふさがらない。
コロナ禍とウクライナ危機など、経済面では物価上昇の要素だらけではあるが、政府としては上限160円/Lで解除されるはずのトリガー条項を一度凍結解除してしまうとなかなか再度凍結しにくいというお役所事情は見え見えだ。
■土日祝日が給油の狙い目
込み入った話はこれくらいにして、実際に購入する際にどれだけ安く購入できるかを考えてみると、まず頭に浮かぶのは、「曜日による差」を考えてガソリンスタンドに出向くことだろう。
たとえば、仕事終わりの営業車が金曜日夕方に順番待ちで路上まで溢れてしまっているガソリンスタンドを見かけるが、会社の経理の事情もあるだろうが効率的とはいえないはずだ。
店頭販売(実売)価格のわずかな変化に応じてガソリン代を節約する方法として一般ユーザーが気になるのは、給油するタイミングとして、果たして週の内で日曜日がベストなのか、それとも週代わりの月曜日を含めた平日に入れるほうがよいのか、といった話だ。
価格の動きを見て給油のタイミングを計る労力をいとわない方にとっては、休日の値動きには敏感なはず。
アプリなどを利用して普段から小まめにチェックしている方も多いだろう。
実際、都会の激戦区にあるGSのスタッフは、近隣のライバル店のいわゆる「カンバン価格」の動向をチェックして価格を調整することもあるからだ。
いっぽう、販売する側のGSからすれば、普段はクルマを利用しない購買層が増えるのだから、積極的にカンバン価格を下げて集客を図るために、土日祝日のみ利用するユーザーの集客を狙って店頭価格を抑えて販売するのは当然といえ、休み明けの月曜日の価格が高くなってしまうため、たとえ数円でも買い得感が薄まってしまうことになる。
ともかく、ガソリン価格がこれだけ高騰してしまうと、ユーザーは給油量の調整とともに販売価格の変化の度合いを見定めることが、節約のポイントにならざるを得ないだろう。
■燃料の搭載量はどれだけ燃費に影響するか?
燃費でもっとも重要な要素はなにかと問われれば、自分の行動範囲における「走らせ方」と考えている。
たとえば「満タン」「半分」あるいは小まめな「チョイ足し」のどれがよいのかと訊かれても、かなり個人の金銭的な考え方にも関わってくるので、理詰めで考えるのは難しい。
それでも、数値データを元に考えてみると、まずは石油由来の燃料の質量(重さ)について確認しておくと、以下のようになる。
1cc当たりの燃料の質量は、軽油/0.80~0.84g、レギュラーガソリン/0.72~0.76g、ハイオクガソリン/0.77~0.78g(石油連盟のデータより抜粋)となり、これを基本にレギュラーガソリンの質量がどうなるかといえば(1cc当たり0.75gとした場合)、以下のようになる。
●レギュラーガソリンの重さ ※1㏄あたり0.75gとした場合
・10L/7.5kg
・20L/15.0kg
・30L/22.5kg
・40L/30.0kg
・50L/37.5kg
・60L/45.0kg
たとえば50Lの燃料タンクを搭載する車両では、燃料が満タンとタンク半分の際のガソリンの質量はそれぞれ約37.5kgと約18.8kgと約20kgの差が生じることになる。
トランクに積んだままというパターンも多いはずのゴルフ用のキャディバッグ(クラブなど込み)は約10kgだから、さらに細かいメンテナンス用品や荷物などを室内に積みっぱなしであれば、簡単に相殺されてしまう。
軽自動車なら700~1000kgほどの車重であれば30Lほどの燃料タンクであれば、満タンと半分での10kg超の質量差は意味がないことになる。
このように、半分派や小まめ派の細かい努力には頭が下がる気もするが、前述のように燃費改善に関しては、半タンもしくは継ぎ足では目立った燃費向上の成果を得るのは厳しいはずだ。
■日々の走り方とメンテナンスこそ有効な燃費対策
我々が燃費について日々考えるべきは、タイヤの空気圧などを含めたメンテナンスをきっちり実施することや、常日頃からエアコンの設定温度を低めに抑えたり、走行時にアクセル/ブレーキの無駄な操作を極力控えるよう気を遣うほうが(あまりにも極端な走り方は、周囲の交通を乱してしまうので避けて欲しいが)、燃費向上への積み重ねの効果が多少なりとも得られることだ。
ちなみに政府の取り組みとして、ふんわりアクセルなど「エコドライブ」を推奨してきたが、2020年の内容改定時には「エコドライブ10のすすめ」の項目において、「自分の燃費を把握すること」を推奨して、「満タン法と車載の燃費計に加えて、燃料管理アプリの活用などが知られています」と新たな取り組みを勧めている。
ここで満タン法とは「ガソリンスタンドで満タンにした状態から次に満タンにするまでの走行距離と消費燃料(給油量)とで計算する方法。ガソリン量、給油日、オドメーター距離などを入力するだけで燃費がわかる燃費管理アプリが便利」として、燃費の「見える化」を推奨している。
■満タンか、こまめに入れる 結論は?
これだけガソリン価格が上がってしまうと1回の支払いが大きくなるから精神的に痛手にもなりそうで、満タンにせずに細かく給油することは、毎日クルマを使って広く移動を繰り返している方なら、実勢価格を睨みつつ実施することに意味があるともいえる。
ただし、ガソリンスタンドへ給油に向かうためだけに移動するのなら、移動距離分だけガソリンを使うことになり、その際に渋滞などに遭ってしまうと普段の努力が無駄になってしまう。
日常生活の導線上にガソリンスタンドが存在する場合は問題ないだろうが、燃費アプリで「あそこのガソリンスタンドは安い!」と何度も通うようなことを繰り返すと、満タンにして給油回数を減らして走行距離を減らしたほうが賢明のように思える。
防災上の観点でも、地震などの災害があればGSに給油希望者が殺到する事態は避けようがなく、緊急時など肝心な時にガス欠では役立たずになってしまっては元も子もない。
メンテナンスや不慮の災害に直面した場合などを考慮しても、クルマの燃料は半分以上の残量を維持しつつ、月に1度(特に夏場は)は燃料を継ぎ足して劣化を防ぐことをお薦めしたい。
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