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東京外国為替市場の円相場は28日、1ドル=130円台を記録し、2002年4月以来20年ぶりの円安水準となった。日銀が大規模緩和の維持を決め、金利を低く抑える姿勢を見せたことから、ドルを買う動きが加速したとみられている。

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バズーカを打ち続けるのは危険」日銀批判相次ぐ

1ドル=100円の時代と比較すると、アメリカからモノを買う場合に1.3倍も余計にお金がかかる計算になる。石油や各種原料など、あらゆる輸入製品の価格が上がる流れと言える。

識者や政治家の間からは、円安を招いた日銀の政策に批判の声が多数あがった。国民民主党の斎藤アレックス衆院議員は、「民間企業の友人から悲鳴が聞こえてきます。国内経済と生活を破壊する過度な円安。非常手段であるはずの大規模金融緩和を続け、八方ふさがりの結果を招いた」と金融緩和の継続に反対した。

立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子勝氏は、「中央銀行は自国通貨価値を守る責務を投げ捨てたクロダメ。」と断言。クロダメは、「黒田はダメ」の略語と思われる。

元新潟県知事で、立憲民主党の米山隆一衆院議員も「日銀がかたくなにゼロ金利を続ければ、円はどこまでも下落します。それは、輸入物価を押し上げるだけでなく、どこかの時点で破局的通貨危機を迎える危険を孕みます。」と述べ、日本円の価値が下がり続けることに危機感を示した。

値上げラッシュの流れは加速すると見られ、家計が苦しくなる人も出てきそうだ。作家の鈴木傾城氏は、「6月になったら電気料金はまたもや上がる。ガスも上がる。電気・ガスが上がれば、当然物価も上がる。そして円安が定着したら、この物価高は恒常的になる。」と悲観的にツイートした。

タリーズコーヒージャパン創業者で元参院議員の松田公太氏も、「私も10~16年頃までは金融緩和を提言してきましたが、今のコストプッシュインフレ状態でバズーカを打ち続けるのは危険」と言い、日銀の政策に異議を唱えた。

安倍元首相、黒田総裁は「強気」

2018年4月、首相時代の安倍氏と会談する黒田総裁(官邸サイト)

このように、円安はアベノミクスが招いた副作用との見方もあるなか、かつての当事者たちは強気のようだ。安倍元総理大臣は25日、自民党内の会合でこう話した。

今の水準で右往左往する必要は全くない。日本のように輸出の工業力があり、外国からの観光客が再び戻ってくれば、円安は、日本にとって間違いなくプラスの環境になる

低金利を維持し、経済を刺激することが重要だという。

金融政策を為替に活用しないことが基本的な考え方であり、円安に金融政策で対応することは間違いだ。金利を上げて経済を冷やせば、スタグフレーションに入り、経済が非常に惨めになることは明らかだ

スタグフレーションは、経済的に不景気の状態で物価上昇が進行する現象を指す。

日銀の黒田東彦総裁は28日の会見で、

全体として円安がプラスという考え方を変えたわけではないが、過度な変動はマイナスに作用する

と述べ、物価上昇は一時的との見解を示した。また、物価上昇と賃金上昇が連動する経済の好循環を達成するには、しばらく時間がかかるという。

企業収益や賃金、雇用が増加する好循環のなかで2%目標を安定的に実現するには、なお時間を要する。経済を下支えし、基調的な物価上昇率を引き上げていく観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当と考えている

日銀では、2%の物価上昇を目指すことがデフレ脱却と日本経済の回復につながると説明している。今起きている円安は、日本国民にとってプラスなのかマイナスなのか。判断は容易ではなさそうだ。