理不尽、不公正、不可解な日本の自動車税に待ったをかけられるか――。
自動車の業界団体「日本自動車工業会(自工会)」の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が19日の記者会見で、自動車税について「大局的な視点から自動車税制の見直し議論を深め、何とか道筋をつけたい」と述べたことが、自動車減税を望む人たちの注目を集めつつある。
豊田会長「大きな設計図 書き直す時期」
豊田会長は次のように述べ、自工会として自動車税の減税を政府に強く求めていく方針を示した。
「自工会は今まで一貫して、複雑・過重な税制を簡素化してくださいと(自動車ユーザーの)負担軽減を要望してきた。一部要望は実現したものの、財源の埋め合わせとして別税目に付け替えなど抜本的な見直しは実現できていない。2019年には自動車税創設以来初の恒久減税をしたものの、日本はいまだ世界一高い税率であることに変わりはない。日本の成長に向けた大きな設計図を書き直す時期にきている」
自工会によると、日本では「自動車重量税」と「自動車税種別割」を合わせて、車を保有しているだけで13年間に62.8万円かかるという。自動車が基幹産業である各国と比べてみると、イギリスは29.2万円、ドイツは12.7万円、アメリカに至っては2.1万円しかかからない。日本は、アメリカの実に30倍もの重い税金がかけられているのだ。
しかも、いずれの国も平均年収は日本よりはるかに高い。2021年の経済協力開発機構(OECD)の統計(OECD.Stat)によると、アメリカの平均年収は6万9392ドル(約880万円)、ドイツは5万3745ドル(約680万円)、イギリスは4万7147ドル(約600万円)だった。日本はというと、3万8515ドル(約490万円)でOECD加盟国では下から数えた方が早い。
車を持ちたくないのはお金がかかるから
賃金は低いのに、世界的に見て異常とも思えるような高い税金がかけられていれば、「車なんて持ちたくても持てるわけがない」という人が増えることは自然なことだろう。市場調査を手掛ける日本トレンドリサーチのアンケート調査によると、「車を持ちたくない理由」の一位が「お金がかかるから」(62.7%)だった。さらに、「車にかかるお金の中で最も無駄、損だと思うもの」を聞く問いの回答の一位は税金(30.6%)。これでは、国内自動車産業が将来、衰退していくことは自明と言っても良いだろう。
自動車は日本の発展を支えてきた産業で、今でも日本が世界のトップに君臨する数少ない業界が自動車業界だ。日本の自動車産業はコロナ禍に関わらず、2020年度から2021年度の2年間で約25兆円の外貨を獲得している。
ここまで日本に貢献しているのになぜ、政府は自らの首を絞めるような税制を取り続けているのか。日本の基幹産業である自動車産業が、さらに世界で勝負しやすい環境を整えるなど、バックアップしていくのが本来の政府の役割ではないのだろうか。まさか、日本政府は「今さえ高い税金を取れればそれでいい、自動車産業が将来どうなろうと知ったことではない」とでも考えているのか。
自工会に寄せられる期待の声
豊田会長の会見を受けて、自動車ユーザーの自工会に対する期待は、一気に高まっている。ネットでは、次のような意見が寄せられていた。
JAFに続きトヨタも怒りの抗議。自動車税見直しを迫る。
日本のトップ企業の社長の言葉は重いぞ
世界のトヨタがこう言えば、国も考えないわけにはいくまい
さすがモリゾウ(編集部注・豊田会長のドライバーズネーム)!モリゾウをトップにした自工会もさすが!
最近、JAF (日本自動車連盟)の減税ツイートをSAKISIRUでも報じた。このJAFの動きに加えて自工会も減税を強く求めていくとなると、さすがに日本政府や自民党も無視するわけにはいかなくなるのではないか。
JAFの総会員数は約2000万人。国内自動車産業の従事者は、日本の全就業者数の1割にあたる、約529万人。いっそのこと、この一人ひとりが、それぞれの選挙区の政治家に「自動車税を減税しなければ次はない」と訴えてみるのはどうか。
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