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毎秒1.7ペタビット、既存技術の7倍の容量を可能にするマルチコアファイバーによる光海底ケーブルの5つの基盤技術を確立

KDDI総合研究所は3月28日、1本の光ファイバーの中に複数のコアを持つマルチコアファイバーで大容量化した光海底ケーブルの実用化に向けた各種技術の開発と実証を行い、基盤技術を確立したことを発表した。これにより、アジア域をカバーする3000km級の光海底ケーブルを、既存システムの7倍(毎秒1.7ペタビット程度)に容量を拡大できるという。2020年代半ばの実用化を目指す。

KDDI総合研究所、東北大学住友電気工業古河電気工業日本電気(NEC)、オプトクエストの6機関は、総務省の委託研究として大容量光海底ケーブルの研究開発を行っている。5Gサービスの普及に伴うモバイルデータ通信の増加やデータセンター間の通信需要の増大などを背景に、国際通信の回線需要が増大しているが、それに対応するためには海底ケーブルにより多くの光ファイバーを通す必要がある。しかし、光ファイバーの本数を増やせばケーブルの外径が大きくなり、敷設が困難になる。そこで、1本のファイバーで複数の通信が可能となるマルチコア(多芯)ファイバーを使い、外径はそのままで容量を増やす技術が求められてきた。上記の6機関は、世界に先駆けてその基盤技術を確立し、実証を行った。

このシステムは、5つの基盤技術で構成されている。その第1が4つのコアを持つ光ファイバーだ。2020年11月に古河電気工業とKDDI総合研究所が開発した技術で、コア間の信号干渉を抑えることで損失は世界最小級となる1kmあたり0.155dB(デシベル)を実現し、クロストーク(混線)は100kmでマイナス60dBを達成。毎秒109Tbit(テラビット)の信号を3120km以上伝送でき、毎秒56Tbitの信号を1万2000km以上伝送できることを実証した。

第2の技術は、このマルチコアファイバーを収容した光海底ケーブルだ。2021年10月、NEC、OCC、住友電気工業は、マルチコアファイバーを32芯収容した海底ケーブルを開発し、水中で長距離の伝送試験を行った。ケーブルにした状態でも、マルチコアファイバーの光学的特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能を得ることができた。

第3は、マルチコアファイバーの統制評価技術。マルチコアファイバーの依存損失とクロスオーバーの評価を行う波長掃引法と、損失、クロストークの長手分布を評価するOTDR法という2つの技術を開発した。

第4は、空間多重型高密度光デバイス。4コアファイバー用アイソレーター内蔵Fan-in/Fan-out(ファンイン/ファンアウト)デバイス、4コアファイバー用Fan-out付きTAPモニターデバイス、4コアファイバー用O/E変換器付きTAPモニターデバイスの3種類の光増幅装置を開発し、1つの複合機能デバイスに集約した。これにより、世界最高水準の低損失と小型化を実現させた。

第5は、マルチコア光増幅中継方式。シングルコア光増幅器をベースに作られた従来のマルチコア光増幅器は、コアの数だけ増幅装置が必要であり、コア数が増えればそれだけ大型化するという課題があった。新しく開発されたマルチコア光増幅器は、1つの増幅装置で複数のコアを一括して増幅できるクラッド励起方式を採用し、体積を従来の半分程度に収めることに成功した。

これらを統合することで、既存システムの7倍となる毎秒1.7ペタビットほどの容量拡大が可能になることが確認されている。今後は、マルチコアファイバーの量産化技術の開発、長期信頼性の検証、運用保守技術の開発を進め、2020年代半ばの実用化を目指すとしている。