最近、EV(電気自動車)の周辺が騒がしいことにお気づきだろうか。EVに関するニューモデルや車種追加、仕様変更が相次いでいるのだ。
たとえば、日産のリーフが4月21日に一部変更を実施、トヨタはトヨタブランド初の量販EVであるbZ4Xに関してサブスクリプション販売システム「KINTO」の価格が5月12日に発表された(スバルのソルテラも同日発売、こちらは一般的な販売方法を採用)。そして5月20日には軽自動車EVである日産サクラと三菱eKクロスEVが発表された。
これには理由があって、政府が令和3年度補正予算と令和4年度予算で施行したEV・PHV(プラグインハイブリッド車)・FCV(燃料電池車)などに対する補助金制度に対応した処置のようだ。
それでは現状で政府の補助金や税制の優遇、自治体独自に設けた補助金の制度などによって、個人がどれだけ出費を抑えて「電動化」車両が手に入れられるのか探ってみよう。
文/岩尾信哉
写真/NISSAN、PEUGEOT、HYUNDAI、SUZUKI、TOYOTA、AUDI、BMW、LEXUS
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■政府からどれだけの補助金が得られるのか?
まずは最新のトピックである、政府のEVなどについての補助金制度である「CEV補助金」について概要を説明しよう。
令和3年度補正予算と令和4年度予算が連続して成立することとなり、経済産業省から補助金の申請窓口となる団体である、社団法人次世代自動車振興センター(NEV:Next Generation Vehicle Promotion Center)が請け負うCEV(Clean Energy Vehicle)補助金の受付が始まっている。
正式には令和3年度補正予算「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」と令和4年度予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」が設定されて申し込みを受け付けている。
経産省によれば令和3年度補正予算と令和4年度予算では補助対象となる車種や登録・届出日が異なる」とされている。
なお、補助対象となる電動化車両の新車としての登録日(登録車および軽自動車)の規定は、以下のようになる。
・令和3年度補正予算:令和3年11月26日以降
・令和4年度予算:令和4年2月19日以降
さらに令和4年度予算として「高度な安全支援技術を備えた車両」(EV・PHV・FCV)への上乗せ支援」を設定。補助金7万~10万円(4月1日以降に設定され、4月28日から受付開始)が受けられるようになった。
つまり、申請日は新車発表のタイミングや登録日などによって変わってくる。このため、販売する側のメーカーとして前述のように「調整」する必要があったようで、補助金の額が変化するのであれば、当然ながら発売時期をある程度考慮しなければならなかったわけだ。
なにより今回のEV、PHV、FCV、超小型モビリティ(現状ではトヨタの「C+ポッド」と言い換えられる)などの購入補助と充電インフラ整備補助を実施する「CEV補助金」では、補助金が大幅に引き上げられたことで、メーカーサイドも積極的に動いたわけだ。
車両購入時の補助金はEVでは上限額が40万円から85万円に引き上げられ、軽自動車EV、PHVは20万円から最大55万円に、FCVは115万円から最大145万円に引き上げられた。
いずれも外部給電機能としてのV2X(Vehicle to Home)対応、1500W車載コンセントを装備した場合の条件付きとして7万円の補助金が付与される。
登録年度の時期や燃費性能の違いなどによって補助金額が変わることは、最新状況に対応するための「調整」という大義名分が成立するとはいえ、国の身勝手な判断に振る舞わされているともいえる
■複雑極まる補助金と税金の減免方法
それでは「電動化車両」に関する、以下のような補助金や優遇税制の具体例について見ていこう。
・CEV補助金
・エコカー減税(自動車重量税)
・自動車税(種別割)
・環境性能割(取得税)
・グリーン化特例(自動車税)
なかでも注目されているのが、一般社団法人NEV(次世代自動車振興センター)の「CEV(クリーンエネルギーヴィークル)補助金」という呼び名が与えられた補助金制度だ。
ここでいう「CEV」とは、大雑把に言えば、EV、PHEV、FCV、超小型モビリティなど指す。さらに、後述する東京都や愛知県などの地方自治体による補助金が加えられる。
CEV補助金は住宅などへの給電機能(V2H)を備える車両だと補助額の上限が65万円から85万円に増額された。
ちなみに、輸入車の高級ブランドのEVでも給電機能がほとんど未装備というのは、この制度そのものが普及を睨んだ「日本的」なものであることがわかる。
続けていくと、エコカー減税は新規購入時と車検時に燃費基準(現在は令和12年度基準達成度と令和2年度燃費基準の達成が条件)に基づいて科せられ、自動車重量税を対象に減免が受けられる。
自動車税(種別割)とはいわゆる従来の自動車税(軽自動車税)であり、排気量によって課税額が決まる自治体が管轄する課税だ。新規購入時(月割)と年課税車検時に科される。
自動車税環境割(旧取得税)は、自動車の購入時に燃費基準達成レベルによって0~3%課税を受けるもので、グリーン化特例は電気自動車などの自動車税が、新規登録後の翌年度に概ね75%軽減される。そしてなにより忘れてはいけないのが消費税の存在だ。
以上のように、CEV補助金や優遇制度はさておき、なにより自動車の多重課税ぶりにはもはや呆れかえるほかなく、環境性能割についても、名前を変えての印象操作的なやり方は引っかかる。
これまでも旧取得税や重量税が道路環境整備などに一般財源に取り込まれてしまう場合も多く、常に注意すべき問題であり続けている。
■EV・PHVで補助金に差がつく要素とは?
EVなどが購入時の取得(購入)価格で差がつくのは、どのような理由か探ってみると、結論から言えば、税制面では現状でEVとPHVが非課税となるため、環境性能割(旧取得税)が効いてくることになり、さらに後述する自治体ごとの補助金額に左右されることが大きい。
環境性能割では、メーカーの希望小売価格(グレードとオプション装備の設定価格が含まれる)が他の優遇に比べて減免額が高く、普通車では0~3%の割合でかかってくる。
取得(購入)時に限定されるとはいえ、EV・PHVを買う側としては大きい。
ちなみに、環境性能割は、取得価額×環境性能割の税率で設定され、国土交通省が定めた燃費基準によって税率が決定される仕組みとなっている。
いっぽう、グリーン化特例は新車の車両登録時の自動車税が減税されるもので、令和4年度予算では、EV、PHEV、FCV、天然ガス車(CNG車)では、「特例」として非課税となった。
正確には、EV・PHV・FCVなどでは、1000cc以下と捉えると本来は2万5000円課税されるのだが、特例処置によって免除となるため、現状で購入年度は月割、その後の4年は免除となる。
次に車両としてどのような優遇となるかをまとめてみたが、以下の表では後述する非課税となる環境性能割の減免額が明示されていないため、「見た目上の差」は正確には確認できない。
環境性能割の金額を日本メーカーが「非課税」として免税額を明らかにしていないのは、グレード等での装備の違いで変化することを考慮してのことと思われる。
注目のトヨタ初のEVであるbZ4XはKINTOによってリース販売され、福岡県福岡市など一部自治体では、リース販売でも補助金を受けられることになった。
KINTOの月額利用料は、KINTOの「bZ4X専用プラン」で設定している最長10年の契約期間のうち、最初の4年はCEVを購入した際に国から交付される補助金(以下、「CEV補助金」)を適用した場合、8万8220円(税込)からとなる。
ただし、契約にあたっては別途77万円(税込)の申込金の支払いが必要となる(自治体からの補助金を含まず)。
いっぽう、5年目以降は「CEV補助金」の適用はなくなるものの、それまでの月額を毎年段階的に引き下げていくことで、「お客様にとって長く乗れば乗るほどリーズナブルになるとともに、中途解約金をゼロとし、フレキシブルなカーライフを支援します」としている。
■自治体の補助金の有無は要チェック
これらの要素に地方自治体による補助金などの優遇措置が加わることになるわけだが、先のNEVのHPから自治体の補助金制度をみていくと、自治体の補助金は基本的に5万円から15万円に収まる。
気をつけたいのは、補助金の付与は多くの自治体が実施していても、事業者(法人・個人)を対象とした、EV導入や再生可能エネルギー発電と組み合わせた充電施設の導入補助制度がほとんどであることだ。
個人でも再エネ発電の導入やV2H(給電機能付き)が実現できるのであれば、さらなる補助金が得られる場合もあるというのが実情となる。
大都市では予算が多く配分される傾向があり、過去に低公害車の導入などで実績がある主要都市などでは対象を幅広く設定しているケースが多く、東京都がその代表例となる。
さらに深掘りすれば想像できるように、愛知県などの自動車メーカーの拠点都市では「厚遇」されることがわかる。
まずは自治体の補助制度を、具体例として東京都から受けられる補助金(2022年4月27日以降)を具体例として挙げてみよう。
呼び名が長くなるが「燃料電池自動車等の導入促進事業・電気自動車等の普及促進事業(FCV・EV・PHV車両)(令和4年度)」が設けられており、東京都内に住所を有する個人(住民票もしくは印鑑証明書が東京都内であること)、事務所・事業所を有する法人または個人事業主、東京都内の区市町村(FCVのみ)が対象。
またこの対象者とリース契約を締結したリース事業者、リース事業者とリース契約を締結した者も対象となる。対象車両はEV、PHV、FCV 。
補助金の額は、個人については、EV:45万円、PHV:45万円、FCV:110万円となる(法人・個人事業主は、EV:37万5000円、PHV:30万円、FCV:110万円)。
東京都独自の補助金制度は、個人については、EV:45万円、PHV:45万円、FCV:110万円となる(法人・個人事業主は、EV:37万5000円、PHV:30万円、FCV:110万円)。
愛知県豊田市はいうまでもなく地方自治体の中でも「メーカーお膝元」であり、補助金額も大きめだ。
ちなみに、地方自治体の多くがEVでは上限額が10~15万円であり、補助対象は充電施設設置の補助金を含めて、その多くが法人・事業者が対象となっている。
ここでいくつかの自治体が用意する他の個人向けの補助金(1台、上限額)について、「厚遇」といえる例をまとめてみよう。(順に自治体、対象車種、補助金額)
●北海道・札幌市:EV 30万円
●栃木県・宇都宮市:EV(給電機能付き) 20万円
●東京都:EV・PHV(給電機能付き) 45万円
●長野県軽井沢町:EV 30万円(車両本体価格の10%以内)
●長野県佐久市:EV 20万円(CEV補助金の2分の1以内)
●愛知県豊田市:EV・PHV 15万円【給電機能(標準装備の場合は対象外)装備の場合、上乗せ 2 万円(最大 17 万円。超小型EVは3.5万円。65歳以上であれば上乗せ4万円】
●愛知県刈谷市:EV・PHV 30万円(車両本体価格の10%以内、超小は型EVは最大7万円(リースは対象外)
ちなみに愛知県では補助金ではないが、県として独自にEV、PHV、FCVについて、新車新規登録を受けた年度の月割分および翌年度から5年度分の自動車税(種別割)の全額を免除する税制を実施している。
この先の補助金制度については、福岡県福岡市といったサブスクサービスにも対応する自治体が出てくるに違いないが、全体の印象としては、個人向けの補助金が金額的には充分といるかどうかは微妙といえる。
将来的にEV・PHVの需要と供給のバランスがどのように変わってくるのか、補助金は需要の喚起はできても、広く拡大させるまでの力はまだ得られていないと感じられるからだ。
こうしてみていくと、EVは厚遇されているのがおわかりいただけただろうか。
補助金額は限りがあり、今年度はEVの新車ラッシュということもあり、早めに購入するのが得策だ。
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