「国際テロの魔女」とも称された日本赤軍の元最高幹部、重信房子受刑者(76歳)が5月28日、刑期を満了し出所する。かつての左翼運動の象徴的な人物の出所についての見解を、民族団体「一水会」代表の木村三浩氏に聞いた。木村氏は重信受刑者に面会したこともあるという。
重信房子受刑者は学生運動を経て、革命を志向する急進的な左翼グループ(新左翼)の一つである赤軍派に創立メンバーとして参加。
71年に出国し、レバノンのベッカー高原を根拠地とする日本赤軍を創設した。日本赤軍は72年にイスラエルで「テルアビブ空港乱射事件」を起こして自動小銃で乗客ら約100人を死傷させたほか、世界各地でハイジャックや大使館占拠などのテロ事件を首謀した。。
だが、木村氏は重信受刑者を必ずしも断罪はしていない。
20年間、よく頑張ったなあと思います。かつて東京拘置所で面会したこともあり、一水会の機関紙「レコンキスタ」を毎月送っています。無辜の民を巻き添えにしたことについては反省と謝罪をされていると思いますが、「義を見てせざるは勇無きなり」との義侠心を持って活動したことについては、敬意を抱いています。
一水会は三島由紀夫とその同志である森田必勝の思想を継承する団体であり、左翼運動とは対立的な立ち位置のようにも見える。だが、立場は違っても、世の中に対して問題意識を抱き行動していった点は、共通するという。
事件を起こした背景には、イスラエルが安保理決議を破ってきたこともある。パレスチナ人にとっては、事件の首謀者は今でも英雄として見られている。
我々の団体は「ヤルタ・ポツダム体制の打破」を目指す一方、彼女たちは「世界革命」を目指していた。現状に甘んじることなく、より良い社会を目指そうとしたという意味では、大きな山の右側から登る者と左側から登る者という認識です。
暴力的な方法は間違っていたが、理想を抱いていたのは事実なのだろう。
重信房子の父は右翼団体の門下生。社会の矛盾を是正しようという志を受け継いでおり、ロマンチストの面もあると思う。出所がニュースとして注目されるのは、彼女の生き様ゆえでしょう。
理想を抱くまでは良かったが、日本赤軍によって多くの一般市民の生命が奪われたのは事実。公安調査庁ホームページでは、日本赤軍は国際テロ組織として位置付けられている。重信受刑者は出所後、どのように活動していくのだろうか。