「キャンピングカーを手に入れ、日本全国を自由気ままに旅してみたい」。筆者を含め、クルマを愛する者なら誰もが一度は脳裏に浮かべたことのある野望、というか願望だろう。
そして願望を願望のままでとどめるのではなく、「実際にキャンピングカーを購入しました!」という人も、最近は決して少なくないようだ。
とはいえキャンピングカーを買うにあたり、「キャブコン」と呼ばれるトラックベースのキャンピングカーは、大人が立って車内を歩けるほどの広さは超絶魅力的だが、デカいだけあって「保管場所」のことまで考えるとやや非現実的。
「ならば軽キャン(軽自動車をキャンピングカー仕様にしたタイプ)でどうだ!」となると、今度は「小回りが利く」「保管場所で苦労しない」という美点はあるものの、「2人で軽キャンに寝るのは狭すぎる」「かといって1人で旅するのは寂しすぎる」という大きな問題点も出現してくる。
そう考えると、やはりベストというか現実的なのは「バンコン=ハイエースバンなどのバンをコンバージョンしたもの」であり、そのなかでもトヨタハイエースバンをベースとするバンコンこそが、使い勝手の面でも流通量の面でも、そして信頼性や走行性能の高さといった点でも、なんだかんだでベストである……ということになるのだろう。
そこで、本企画では、ハイエースをベースにしたバンコンについて、どのような種類があるのか、価格はどうなっているのか、さっそくキャンピングカーを扱う専門店に聞いてみた。
文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹、フジカーズジャパン
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ということで「よし、ハイエースのバンコンを買おう!」と思ったわけだが、よく考えてみると筆者は、乗用車全般についてはそれなり程度の知識と経験はあるものの、キャンピングカーについてはほぼ知識ゼロであることを思い出した。
安いモノから高いモノまで、ハイエースのバンコンは価格帯的にかなりさまざまであり、ボディタイプや車内の仕立てに関しても、同様にかなりさまざまである。つまり、キャンピングカー素人である筆者は何をどう選ぶのが正解なのかが、さっぱりわからないのだ。
「……わからないことは専門家に教えてもらうしかない」ということで筆者は埼玉県狭山市のキャンピングカー専門店『フジカーズ狭山店』を取材した。同店店長の網谷さんに、ゼロからいろいろ教えていただくことにした。
――ということで網谷店長、ド素人の私にいろいろ教えてください。よろしくお願いいたします。
網谷店長 こちらこそ、よろしくお願いいたします。
――まずは価格ですが、ハイエースのバンコンって安いものだと150万円ぐらいで、一番高い部類だと900万円ぐらい。で、その間にいろいろな価格の個体があるようですが、こういった価格の違いって、何に基づいてるんですか?
網谷店長 主にはハイエースのボディタイプというかサイズの大小および長短に応じて、価格帯が異なっています。もっとも高額なのはワイドボディにハイルーフを組み合わせた「スーパーロング」ですね。全長5380×全幅1880×全高2285mmという堂々たる、キャンピングカーとしての使い勝手に優れるサイズとなっています。
――なるほど。じゃあまずはスーパーロングを狙えばいいんですね?
網谷店長 一概には言えない問題ですね。スーパーロングはキャンピングカーとしての使い勝手は抜群ですが、自宅での保管場所も、そして旅先での駐車場所選びにも、ちょっと苦労する局面は多いかもしれません。
――そうか。全長5380mmともなると、確かに停める場所を選びますね。
網谷店長 そして人によっては「スーパーロングは長すぎて、運転自体にストレスを感じる」ということもあるかと存じます。もちろんこのあたりは個人差のある話ですが。
――スーパーロングよりもう少し小さいのはないんですか?
網谷店長 サイズ的にもっとも好バランスで、弊社でももっともよく売れているのが「ワイドミドル」というボディタイプですね。これはワイド&ロングボディにミドルルーフを組み合わせたもので、寸法的には全長4840×全幅1880×全高2105mmです。
――それってアルファードとだいたい同じぐらいというか、アルファードより10cmぐらい短くて、3cm幅広で、15cmぐらい背が高いということですね? そのぐらいならアルファードとほぼ同じぐらいの感覚で運転したり、駐車したりできますね?
網谷店長 おっしゃるとおりです。それゆえ、やはりよく売れています。またワイドボディではない標準ボディにハイルーフを組み合わせたタイプも、男性は難しいかもしれませんが、女性であれば車内でまっすぐ立つことができますので、それなりに使い勝手は良好かと思います。
――一番シンプルな「標準ボディ+ロールーフ」の仕様は?
網谷店長 車内の広さと高さという点では今ひとつですが、その分だけ「機動力」が高く、また価格的にお安いというメリットはあるでしょう。
■おススメはワイドミドル!
――なるほど。で、それらのなかでズバリおススメは?
網谷店長 家族構成や使用目的などは人それぞれであるため、一概に「これが絶対おすすめ!」とは言えません。とはいえやはり「ワイドミドル」が、多くの人にとって何かと扱いやすいのではないかと思っています。
――なるほど了解です。では私もとりあえずは売れ筋な「ワイドミドル」に的を絞りたいと思います。で、「基本的な装備の違い」についても実は私、チンプンカンプンなんですが?
網谷店長 基本的な装備というかタイプは、「ベッド展開およびダイネット展開ができるタイプ」と、「家具などはなしで、車内では寝るだけのタイプ」という2種類に大別できます。
――「ベッド展開」はわかりますが、「ダイネット展開」というのは何のことですか?
網谷店長 ダイネットとは、テーブルとイスのあるくつろぎスペースのことです。「キャンピングカーにおけるリビングスペース」ということですね。
――ああ、よく見るテーブルとイスがあるアレですね。それぞれのメリットとデメリットは?
網谷店長 ベッド展開とダイネット展開ができるタイプは、やはり「ザ・キャンピングカー!」といった趣きがありますし、モノによっては冷蔵庫も付いているなど、装備が充実しています。その半面、ダイネット展開からベッド展開に変える作業が、慣れないうちは少々面倒かもしれません。まぁ慣れればどうってことないのですが。
――ダイネットがない「寝るだけのハイエースバンコン」のメリット・デメリットは?
網谷店長 当然ながらベッド展開をするのが非常にラクですし、車としてのお値段が手頃であるというのはメリットでしょう。その半面、家具等がないのはやはりちょっと寂しいというのが、デメリットではあるかと思います。
――まぁこのあたりは考え方と使い方次第ですが、私ならダイネット展開ができるバンコンが欲しいかな。せっかくキャンピングカーを買うわけですから。で、これらを踏まえたうえで具体的にハイエースのバンコンを選ぶときは、どんなポイントをチェックすればいいんですか?
網谷店長 いろいろありますが、まずは「断熱材」が入っているかどうかを確認していただきたいですね。
――そうか。断熱材が入っていれば、夜間にエンジンを切って寝ていても、けっこう暖かく過ごせそうですね。その断熱材の有無というのは、見ればわかるものなんですか?
網谷店長 いや、それは住宅の断熱材と同じで外から見てわかるものではありませんので、販売店に尋ねてみるほかありません。
――高額なハイエースバンコンなら必ず入ってますかね?
網谷店長 うーん、どうでしょうか。もちろんあからさまに格安な個体には断熱材が入っていない場合が多いのですが、かといって有名ビルダーが作っている600万円ぐらいの個体にも、実は入っていないケースがあるんですよね。そのため、ここは本当に「お店の人に聞いてみるしかない」ということになるんです。
■宮大工工法で作られた家具は走行中ギシギシ音がしない
――ううむなるほど、了解であります。そのほか、キャンピングカーならではの注意点というかチェックポイントは?
網谷店長 備え付けの組み立て式家具は、家に置くのではなく揺れながら走る車の中に置かれることになります。そのため組み立てにビスや接着剤を多用していると、距離を走っているうちにどうしても緩みが生じてしまい、走行中にきしみ音が発生するようになってしまいます。
――せっかくハイエースのバンコンを買ってシブく旅に出たのに、走ってる間中、ずっとキシキシ、ミシミシ……という音が出てると、シラケますね?
網谷店長 おっしゃるとおりかと思います。そのため、家具の組み立てにビスや接着剤を使っていない「溝ホゾ構造」を用いているかどうかを、購入時には確認することをおすすめします。
――「ホゾ継ぎ」というのはあれですね、木材と木材をビスなどでつなぐのではなく、突起と溝で接合するという、宮大工さんとかの手法ですね?
網谷店長 おっしゃるとおりです。手前味噌になりますが、弊社のブランドである『FOCS』の家具はすべて、木材同士を溝とホゾで組み付ける「宮大工工法」で製作されています。
■乗り出し600万円以内の予算で変に妥協をしない!
――了解です。購入時はそのあたりもビシッとチェックしたいと思います。最後に「お値段」ですが、ぶっちゃけいくらぐらいのハイエースバンコンを買えばいいんでしょうか?
網谷店長 一概には言えませんが、ワイドミドルのハイエースバンコンを買うとするならば「乗り出しで500万から550万円ぐらい」というのが、ひとつの目安になるでしょう。あとは、切実なアドバイスとして「妥協して安い個体を買わないでください」というのがあります。
――そうですか? 「安いモノ」にはついつい惹かれてしまうのが人情というのかと思いますが?
網谷店長 お気持ちはわかりますし、たまたま「安いけど、装備はすごく充実してる」みたいな個体が見つかったなら、お買いになってもいいと思います。しかし「本当はイマイチだと感じてるけど、予算の関係で妥協して、仕方ないからコレを買うか……」というのはどうかと思いますね。
――なぜですか?
網谷店長 なぜならば、ハイエースというのはご存じのとおり、リセール価格が非常に高い車種ですし、そのキャンピングカー仕様は特にリセールが高いんです。ということは、多少高くても装備のいいモノを選んだほうが、売却までを含むトータルで考えればコストはお安くなり、それでいて満足度は大いにアップすることになるんです。逆に、貧弱な装備のモノをいくら安く買っても……。
――乗ってる間の満足度は低くなるし、売却時の価格も低くなる――ということですね?
網谷店長 おっしゃるとおりです。ですから、ハイエースのバンコンを選ぶ場合は「変に妥協はしない」ということが、最終的にはユーザー様の“おトク”につながるはずなんですよ。
――なるほど承知しました。本気で探す際はその言葉を旨に、とはいえ乗り出し600万円以内ぐらいの予算感で「なるべくいいやつ」を買いたいと思います。本日はありがとうございました!
網谷店長 いえ、どういたしまして。
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