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飲食チェーン「グローバルダイニング」への時短命令は「違法」と判断した東京地裁判決について、東京都庁OBで、『築地と豊洲』(都政新報社)著書の澤章氏に、話を聞いた。澤氏は都庁時代、知事本局計画調整部長、中央卸売市場次長、選挙管理委員会事務局長などの要職を歴任。退職後は小池都政の問題点を発信し続けている。

オンライン取材に応じる澤章氏

東京都は2021年3月18日、時短要請に応じなかったグローバルダイニングの店舗に対し、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、営業時間を午後8時までに短縮するよう命じていた。グローバルダイニングは命令は憲法に反するなどとして、都に損害賠償を求め訴訟を提起した。

今月16日に出された判決では、「原告の店舗が夜間営業を続けたことで市中の感染リスクを高めたとは認めがたく、命令は違法」と指摘した上で、命令を出したこと自体には過失がないとし、請求を棄却した。判決について原告側弁護団長の倉持麟太郎弁護士は、「実質勝訴、形式敗訴」と表現した。

「なんで違法なんだ」と思ったはず

判決について、澤氏はこう語る。

都庁職員の多くは、意外な結果と受け止めているはずです。都庁のなかにも弁護士や法曹資格を持った職員が多数いる。特措法に基づいて自治体として判断した命令だったので、「えっ、なんで違法なんだ」と思った職員も多かったでしょう。

都が命令という強い措置に踏み切った背景には、グローバルダイニングが「時短要請には応じない」との立場を明確に示し、その結果、売上が大きく伸びたこともあるのではと指摘する。

自粛要請に従っている店舗もあるなか、都としては不公平さを解消したいという考えがあったのでしょう。「闇営業」のような形でこっそり営業している範囲ならグレーゾーンとして黙認されたのでしょうが、社として「従いません」と反抗的な態度を表明されると、看過できないと考えたのでは。

グローバルダイニングは信念を持って立場を表明されたのだと思いますが、物事を曖昧にしないという点で、欧米的な社風を感じました。

時短命令に関する判決として、全国的にも注目された。

都としては“見せしめ”の狙いもあったのでしょうが、「違法」との判決が出て、逆に都のほうが見せしめにさせられてしまった。今後、他の自治体は同様の命令を出す際に、慎重にならざるを得ないでしょう。

とはいえ、日本全国が手探りで対応するなか、どのような状態なら命令が可能かを計る試金石として、必要な裁判だったのだろうと考えます。

小池知事は判決当日、雲隠れしたのか?

5/24記者会見する小池知事(Facebook「東京都知事 小池百合子の活動レポート」)

判決当日、小池百合子知事は中東に出張していた。

今回の中東出張は前々から日程が決まっていたので、判決との関係はないでしょう。2017年の衆院選挙の際にパリに行ったり、昨年の都議選では直前に入院したりと“雲隠れ”は彼女の得意技なのですが、今回はたまたまでしょう。

ただ、中東出張では高校生の国際交流事業などが目的で、コロナ禍の今行く必要はないはず。不要不急の出張だったと思います。

原告側は即日控訴し、都に過失を認めさせ賠償責任を求めていく。

原告側は小池知事を証人として出席させることを求めていますが、「公務により多忙」などの理由をつけて、本人はまず出てこないでしょう。代理人などが出席することになるかもしれません。

高裁の裁判結果にも、注目が集まりそうである。