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 言わずと知れた世界の自動車メーカーのトップに君臨するトヨタ自動車。コロナ禍にあっても、トヨタグループのグローバルでの販売台数は1000万台オーバーと、いささかの揺らぎも感じられない。

 そんな世界のトヨタが長野県内にお寺を作っていたのはご存じだろうか? 交通安全祈願で知られる蓼科山聖光寺(しょうこうじ)がそれだ。

文/青山義明、写真/青山義明、TGRラリーチャレンジ事務局

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トヨタ自販の初代社長、神谷正太郎が中心になって建立

左手前の奉納殿と聖光寺の本堂、その奥に寺務所がある。右手には鐘楼がある他、回遊できる庭もあり、晩春の桜、初夏のフランス菊、秋の紅葉と四季を楽しむことができる

 突然だが神谷正太郎という人物をご存知だろうか? 神谷は元日本GMの支配人で、トヨタ自動車創業者・豊田喜一郎がヘッドハンティングした人物。のちにトヨタ自動車販売の初代社長に就任し、顧客と販売店を重視する運営で「トヨタの販売の神様」と呼ばれている。

 その神谷を中心として、1970(昭和45)年7月に建立されたのがこのお寺である。交通安全の祈願、交通事故犠牲者の供養、交通事故負傷者の早期社会復帰の祈願寺として知られており、駐車場の案内看板や境内各所にも「交通安全」の文字が並ぶ。

 この蓼科山聖光寺は奈良・薬師寺の別院であり、宗派としては法相宗に属する。標高1200mの高原地帯、長野県茅野市の蓼科湖の前にあり、山門は長野県有数の観光道路である「ビーナスライン(長野県道192号茅野停車場八子ヶ峰公園線)」に面している。山門をくぐり、桜の木々の先に、奈良時代の建築を模して建立された本堂が現れる。

実際に訪れてみると案外こじんまりした印象

 その境内に足を踏み入れると、予想に反してこじんまりしている。平安時代の寺社のイメージで建てられた山門には、イメージするような仁王像が並ぶわけではなく、向かって右手が梵天、左手に帝釈天像、境内側には天大将軍身(転輪聖王)、居士身像がまつられている。サイズも少し小さく、威圧的な印象は全くない。

 山門をくぐると、まず左手に放生池があり、その周囲には伽楼羅、阿修羅、大自在天といった、これまた山門の像と同じようなサイズの像が並ぶ。参道を進むと左に茅葺き屋根の奉納殿、右手のすこし離れたところには鐘楼がある。真正面に鎮座する本堂は2層の錣葺(しころぶき)入母屋造りで、鴟尾が載っているのがわかる。

 建立から50年を過ぎるが、燈篭をはじめ各所に交通安全の四文字が目に付く。愛車とドライバーの交通安全祈願のお祓いや交通安全に関するお守りも授与してくれる他、毎月18日の午後には「御本尊お観音様御縁日交通安全法要」が行われ、クルマ好きが集まる。

トヨタのTGRラリーチャレンジ開催時には関係者が参拝

ラリチャレの八ヶ岳・茅野ラウンドでは安全祈願ということで、各自お参りしてお守りをいただくという機会が設けられている他、レッキのスタート地点としても設定されている

 トヨタにゆかりのある街を舞台に開催されているTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ(ラリチャレ)の八ヶ岳・茅野ラウンドでは、プログラムのスタート前にドライバーやチーム関係者が参拝に向かうのが恒例となっている。

 3年ぶりとなった今年のラリチャレは4月17日開催。今回のタイミングは早かったようだが、聖光寺は「本州で最も遅いソメイヨシノ」のお花見ができる場所としても有名。境内にある約300本のソメイヨシノは4月末ごろ満開を迎え、「聖光寺桜祭り」が開催される。また、毎年7月には、夏季交通安全大法要が執り行われ、トヨタや関連会社の経営陣が、ここに集結して交通安全を祈願しているという。

 世界の自動車マーケットを牽引する巨人、トヨタ。グローバル企業となった今でも、日本文化を大事にしている姿勢は、日本人として素直に喜びを感じる。今度の休日はドライブを楽しみながら聖光寺に行き、交通安全のお参りをするのはどうだろうか?

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