もっと詳しく

 4月20日にワールドプレミアされたレクサス初のBEV専用モデルとなるRZ。昨年12月にトヨタがバッテリーEV16車種を華々しく公開した際にもその姿があったのだが、言わばRZはレクサスBEVの切り込み隊長としての位置づけとなる。

 今回、トヨタテクニカルセンターの下山テストコースで実施されたRZプロトタイプ試乗会でそのステアリングを握った自動車ライター、渡辺敏史氏からのレポートをお届けしよう。

文/渡辺敏史写真/レクサス

【画像ギャラリー】レクサス期待のBEV第2弾! 新型SUV、RZプロト試乗のすべてを写真でチェック!(36枚)画像ギャラリー


■ニュルにも匹敵する下山テストコースで試乗!

レクサスRZプロトタイプの試乗が行われたトヨタテクニカルセンターの下山テストコース。2024年以降、レクサスのR&Dやデザインの拠点となる

 2030年には欧米中の3エリアで、そして2035年には全仕向地で、販売車両の100%BEV化を目指すと発表したレクサス。昨年にはUX300eを発売するなど、トヨタも含むコーポレートの電動化戦略においても先陣を切る恰好となっている。

 そして、ブランドとしてはBEVの第2弾となるRZがさる4月20日、いよいよワールドプレミアと相成った。内燃機グレードとの兼用ではなく、専用のアーキテクチャーで開発された初めてのモデルとなるその実力は、果たしていかなるものか。今年後半以降になるという発売に先駆けて、プロトタイプを試乗する機会に恵まれた。

 その場所は2024年以降、レクサスのR&Dやデザインの拠点となるトヨタテクニカルセンター下山のテストコースだ。地形を活かして75mの高低差を持つ全長約5.3kmのカントリー路は、ニュルのノルドシュライフェやその周辺の郊外路が持つ特有の入力も参考に作られており、その過酷さは数多の自動車メーカーのテストコースのなかでも屈指といえる。

 コロナ禍で活動が制限されるなか、RZの開発でも手許にあるこのコースが体幹を鍛えるうえで役立ったことは想像に難くない。

■パワートレーンは前後軸にモーターを配するDIRECT4

レクサスRZのパワートレーンは前後軸にモーターを配置するDIRECT4を採用する。アーキテクチャーはトヨタbZ4Xやスバルソルテラと同じで、e-TNGAがベースとなっている

 RZのアーキテクチャーはトヨタbZ4Xやスバルソルテラと同じ、e-TNGAがベースだ。が、そこはレクサスだけあって、独自の施しがなされている。

 ラジエターサポートやフロントストラット、カウル回り、ロアバックなどに補強を加えたほか、リア開口部の二重環状構造に加えて高剛性発泡剤の封入、レーザースクリューウェルディング溶接や構造用接着剤の多用など、剛性強化は枚挙に暇がなく、高張力鋼板の多用やアルミへの置換などによる軽量化や、パフォーマンスダンパーの装着による減衰チューニングなど、箱側からも質感向上に手が尽くされたかたちだ。

 パワートレーンは前後軸にモーターを配するレクサス曰くのDIRECT4、すなわち4WDのみの設定となり、その出力は前側が150kW、後ろ側が80kWとなるbZ4Xの4WD仕様は前後80kWのモーターが採用されており、そのFF仕様が採用する150kWのモーターを前側に配することで、レクサス独自の駆動パッケージを構築したかたちだ。

 その駆動配分は当然ながら0:100〜100:0の範疇を電気的に制御することも可能だが、実際には車輪速や加速度、舵角などから総合的に判定している。発進時や加速時は60:40~40:60、コーナーの進入時は75:25~50:50、脱出時は50:50~20:80付近でリニアに配分している。

 ピッチングなどの不安定挙動を抑えながら、トラクションや旋回力を最大限に高めるようにセットアップされているという。バッテリー容量はbZ4Xと同じ71.4kWh。航続距離はWLTCモードで450kmと発表された。

■SUVながらCd値は0.26

RZのボディサイズは全長4804×全幅1895×全高1635mm、ホイールベースは2850mm。全長は欧州Cセグメント並みだが、ホイールベースはDセグメントほどあるのが特徴だ

 RZのサイズ感はbZ4Xよりやや大きく、ライバル級のBEVになぞらえれば、メルセデスベンツEQCのそれにほど近い。一方、2850mmのホイールベースや1000mmの前後席間といったパッケージ面での数値はbZ4Xと同じだ。

 エクステリアはグリルというよりもフロント周りの形状そのものがスピンドル化しているように解釈されており、その立体的な造型のために深絞りを要するフェンダーはスチール製とされた。

 また、実際の冷却口となるロアーグリルにはシャッターが設けられ、適温時の空気抵抗削減に寄与している。リアスポイラーは左右端で車体の揺れを抑えながら中央部はエアフローを下方へと導くユニークな形状で、その導風効果によりリアワイパーレスでの視界確保を実現。

 フロアカバーには渦流効果によるスタビリティ向上を狙ったディンプル加工が施されるなど、エアロダイナミクスについては隅々まで配慮がなされており、空気抵抗の大きなSUV的な車型でありながら、Cd値は約0.26に収まっているという。

■質感の高さがキラリと光ったRZプロトの躾のよさ

質感の高さはレクサスモデルならではというRZ。筆者自身にかつての初代セルシオでの「源流対策」を思い起こさせたという

 戦いのフィールドがBEVになると、レクサスの特徴でもある静粛性において、ライバルとの差別化が難しくなることは間違いない。それでもRZに乗ると、まず感心させられたのはその静かさだった。

 物量による封じ込めに頼らずも、インバーターやモーターの作動音、ロードノイズや風切り音とあらゆる項目のレベルが相対的に低い印象で、かつて初代セルシオで施された源流対策を思い起こさせるところがある。

 0〜100km/h加速は5.6秒、最高速は160km/hと、動力性能は数値的にみれば平均的なBEV四駆のそれだが、乗ってみるとここでも光るのは質感の高さだ。歩くような速度での発進から胸のすくような加速まで、気張らずとも自然なアクセル操作でいかようにでも力を滑らかに引き出せるパワートレーンの躾のよさは、さすがにクルマ屋の仕事だなぁと納得させられる。

 BEVといえばゼロスタートからむち打ち級の加速というイメージが先行してしまっているが、考えてみれば環境的にみれば元も子もない話に、自動車メーカーがやすやすと乗じるわけもない。

■ナチュラルにこだわったRZのダイナミクス性能

実際の市販時期まで今後も開発陣の磨き込みが続けられるRZ。その時の質感はどのように高められているのか、今からその仕上がりが気になるところだ

 そのぶん、RZが売りにするのはDIRECT4による新次元のドライバビリティということになるが、こちらについても想像以上に常識的な味付けがなされていた。攻め込んでいけばその粘り腰が尋常ならざることは伝わってくるが、舵角や荷重移動をすっ飛ばしてまで、駆動変化を誇示するようにグリグリ向きを変えるというほどの着色はない。

 聞けばダイナミクスにおいてはとにかくナチュラルであることにこだわったとのことで、その趣旨は充分に果たされている。が、個人的には新出のBEVというプレミアムのために、スポーツモードではもう少し積極的に旋回力を強めた制御に振ってもいいのではという気もした。

 ちなみに、今回試乗した個体はラインでの生産試作が始まる前、単品試作の車両ということで、発売に向けてはまだまだ改良の余地がある段階とのことだった。内装も正規のフィニッシュには届かないところが多く、総合的な質感は発売の暁に知ることになる。

 走りにおいては最大の見せ場となるだろうバイワイヤー式操舵システムとDIRECT4とのコンビネーションももうしばらくはお預けだ。が、RZが目指すところのナチュラリズムはしっかり感じられる仕上がりであることは現時点でも伝わってきた。年内予定という発売に向けて、まだまだ磨き込みは続くのだろう。

(※試乗車両は開発中のプロトタイプとなり、実際の販売仕様とは異なります)

【画像ギャラリー】レクサス期待のBEV第2弾! 新型SUV、RZプロト試乗のすべてを写真でチェック!(36枚)画像ギャラリー

投稿 自然なアクセル操作で滑らかにパワーが引き出せる! これはさすがのひと言!! レクサスBEV第2弾、RZプロト試乗でわかったこと自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。