国内自動車メーカーから、トヨタbZ4X、スバルソルテラ、日産アリアといったEV(電気自動車)が続々と登場。さらに、2022年5月20日には、軽自動車サイズEVである日産サクラと三菱eKクロスEVが発表された。今後、国内市場でどこまでEVが普及していくのだろうか。
いっぽう、EVにはさまざまな課題がある。そのなかでも気になる点は「価格」だろう。経済産業省によるEV助成金を使用しても、ガソリンエンジン車よりも価格が高い傾向にある(地方自治体によっては、EV補助金が出る場合もある)。
そこで、本稿では、2022年に発表、もしくは販売された国内EV4台を取り上げる。価格に焦点を置き、EV補助金使用後の価格、お買い得度などを解説する。車格クラスは異なる4台、トヨタbZ4X、スバルソルテラ、日産サクラ、三菱eKクロスEVのなかで、お買い得度が高いのはどれなのか?
文/渡辺陽一郎、写真/NISSAN、MITSUBISHI
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国内自動車メーカーから続々と電気自動車が登場!!
最近は二酸化炭素の排出抑制を視野にいれ、電気自動車の新型車が続々と登場している。トヨタはbZ4X、スバルはその姉妹車になるソルテラ、日産はアリアと軽自動車サイズのサクラ、三菱はサクラの姉妹車になるeKクロスEVという具合だ。
これらの電気自動車に共通するのは、同サイズのガソリンエンジン車に比べて、価格が全般的に高いことだ。例えばソルテラは、前輪駆動を採用するET-SSの価格が594万円で、4WDを備えた最上級のET-HSは620万円に達する。
アリアはベーシックなB6・2WDが539万円で、価格が最も高い特別仕様車のB9に4WDを組み合わせたe-4ORCEリミテッドは790万200円に達する。
そして経済産業省による補助金の交付額は、ソルテラの場合で、全グレード85万円になる。価格が最も安いET-SSでも、補助金額を差し引いた実質価格は509万円だ。この金額に相当するSUVは、ハリアーであれば、最上級に位置するハイブリッドZレザーパッケージE-Four(4WD)の504万円になる。
KINTO専用車トヨタbZ4Xとスバルソルテラはやはり割高?
トヨタのbZ4Xは、サブスクリプション(定額制カーリース)のKINTOだけで扱う。この背景には、電気自動車特有の理由がある。電気自動車は走行距離が伸びるとリチウムイオン電池の性能が下がり、1回の充電で走れる距離が短くなることだ。そのために初代(先代)リーフは、中古車の人気と価格が大幅に下がり「電気自動車は数年後に売却するときの査定で買いたたかれる」といわれた。
そこでトヨタはbZ4XをサブスクリプションのKINTO専用車にした。KINTOは純粋なカーリースで、リース期間満了後に車両の買い取りができない。必ず返却するから、ユーザーが売却時の価値が低下したことで損失を被る可能性も生じないわけだ。
ただしKINTOは、クルマを購入するのではなく借りるサービスだから、ユーザーが受ける制約も多い。ペットの同乗、車内の喫煙(電子タバコを含む)、改造などはできず、車検対応のアルミホイールに交換したときなども、元の状態に戻して返却せねばならない。走行距離にも制約があり、1カ月あたり1500kmを超過したときは、1kmあたり22円の精算が発生する。借りているクルマとして、大切に扱わねばならない。
しかもbZ4Xをサブスクリプションで使う場合、価格が高めの設定になる。まずbZ4Xの契約期間は10年が基本だ。そして補助金の交付を受けた場合、その規定により、4年以内に解約すると解約金が必要になる。そうなると一般的な利用方法は、契約期間が10年のうち、5年間使ったところで車両を返却するパターンだ。
bZ4X・Z・2WDの利用料金は、経済産業省による補助金の交付を受けた場合、4年目までは1カ月あたり8万8220円だ。4年間なら423万4560円になる。5年目は1カ月あたり7万5460円に下がり、1年分が90万5520円だ。
上記の5年分に申込金の77万円を加えた591万80円が、bZ4Xを5年間使った使用料金になる。このなかには、5年間の自賠責保険料、全年齢補償で家族限定などを設定しない任意保険料、税金、車検/点検費用なども含まれる。
ちなみにbZ4Xはリース専用車だが、価格も設定され、Z・2WDは600万円だ。経済産業省による補助金の85万円を差し引くと、実質価格は515万円になる。
そこで価格が515万円前後のトヨタ車を探すと、アルファードハイブリッドSタイプゴールドIIIが、515万4400円で用意されている。このアルファードをKINTOを利用して5年間使うと、月々の料金が7万9860円で申込金は請求されず、5年間の支払い総額は479万1600円だ。bZ4X・Z・2WDの場合は、5年間のリース料金が前述の591万80円だから、アルファードに比べると約112万円高い金額を支払う。
bZ4Xの姉妹車になるソルテラは、買い取りも可能だ。ET-SS・2WDの価格は前述の594万円で、経済産業省による補助金の85万円を差し引くと509万円になる。bZ4X・Z・2WDの515万円に比べて6万円安い。
ソルテラを残価設定ローンで購入するときは、経済産業省による補助金が、ユーザー宛に振り込まれる。つまりET-SS・2WDであれば、車両価格の594万円で残価設定ローンを組み、ユーザーは月々の返済を行う。それとは別に、85万円の補助金が交付される仕組みだ。
従って金利は補助金額を差し引いた509万円ではなく、車両本体の594万円に掛かる。補助金の交付を受けても利息は安くならないから、ソルテラを買うなら、ローンは割高で現金購入がオトクという見方が成り立つ。
■電気自動車のお買い得度は「サクラ」と「eKクロスEV」が有利!?
そのいっぽうで、軽自動車のサクラやeKクロスEVは、割安感が強い。ソルテラやアリアに比べて車両価格が安い割に、補助金の交付額はあまり下がらず、軽減される比率が増えるからだ。ソルテラET-SS・2WDの車両価格は594万円で、経済産業省の補助金は85万円だから、補助金は車両価格の14%だ。
その点でサクラの中級グレードになるXは、車両価格が239万9100円で、補助金交付額は55万円だ。そのために補助金交付額は車両価格の23%に達する。そして上級グレードのサクラGは、車両価格が294万300円だが、補助金交付額はXと同じ55万円だから、Gの価格に占める補助金の比率は22%に下がる。
このように補助金の交付を前提にした電気自動車の買い得度は、ソルテラやアリアのような上級車種よりも、ベーシックな軽自動車サイズのサクラやeKクロスEVが強い。さらにサクラやeKクロスEVの中でも、低価格なサクラXなどは一層買い得になる。
この「低価格車になるほど買い得度の強まる補助金のカラクリ」は、経済産業省の補助金だけでなく、自治体についても当てはまる。例えば東京都で登録(軽自動車は届け出)する場合、経済産業省とは別に、45万円の補助金も受け取れる。この交付額も、ソルテラ、サクラ&eKクロスEVともに45万円で同額だ。
従ってサクラXの場合、車両価格は239万9100円だが、東京都であれば「経済産業省の補助金:55万円+自治体の補助金:45万円=100万円」が交付される。そうなるとサクラXを実質139万9100円、つまりデイズにノーマルガソリンエンジンを積んだX(138万500円)と同等の金額で手に入れられるのだ。
以上のように電気自動車では、補助金額を単純に画一化した結果、軽自動車が一番オトクになる。これからサクラとeKクロスEVは好調に売られ、アリア、ソルテラ、bZ4Xなどは伸び悩む。良し悪しは別にして、日本はますます「軽自動車の国」になっていくわけだ。
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