北海道知床半島沖で23日、乗客・乗員26人のいる観光船が遭難し、翌日までに10人の死亡が確認され、子ども1人が救助されたものの、意識不明の重体となっていた。その子どもも25日朝になり、死亡が確認され、犠牲者は11人となった(25日午前11時時点)。
事故にあった船は、地元の船会社、知床遊覧船(北海道斜里町)が運営する65人乗りの「KAZU 1」(19トン)。同社のサイトによると、知床半島沿いに3つの周遊コースがあり、「ワンシーズンでヒグマに出会える確率は94%」(サイト)などとアピールしていた。事故当時は波が高く、報道陣の取材に応じた地元の漁協関係者によれば、出港しないように忠告したが、船長は「波が高くなったら港に戻るから大丈夫」と言ってそのまま出発してしまったという。
一方、同社の安全管理や企業体質に問題があった疑いが強まっている。昨年5月には、海面に浮いたロープとの接触で乗客3人が軽傷。翌6月にも座礁事故を起こしていた。
そうした中で、行方不明中の船長がフェイスブックで今年3月、職場について「ブラック企業」と評する意味深なコメントをしていたことが注目されている。
問題の投稿は、自らの若い時分からの歴代の免許証を5枚並べた画像をアップし、アカウントのカバー写真に使い始めていた時だった。これに知人が「人相が変わって来た!笑 北海道での仕事は、大丈夫ですか?」と近況を尋ねたのに対し、船長は「ブラック企業で右往左往です」と返信した。知人は「船関係のいい仕事ありますよ。クルーザーの貸切船長ですが」と転職を勧めるように応じていた。
フェイスブックのプロフィールによると、船長は埼玉県内の高校を卒業後、水陸両用車の導入を支援するNPO法人や訪日観光客専門のバス会社などを経て、現在の職場で働き始めていたようだ。スポーツ紙のネットニュースでは船長のコメント部分のみがクローズアップされたが、フレンドとのやりとりを見る限りは、勤務先でかなり悩みがあったようだ。
実際、報道では、5人のスタッフが会社を相次いで離れていたとされる。読売新聞は24日深夜、元船長の話として、会社側と人員整理で揉めていたと証言を報じている。コロナ禍でこの2年、知床地域では、観光客数が激減してきたことから同社の経営はかなり苦しかったと見られている。