トラックドライバーさんは、日常さまざまなコワい目に遭っていると思います。やはり交通トラブル系が一番多いと思いますが、中には心霊体験なんていうそっち系のコワ~い話も……。
さて、今回ご紹介するのは、女性ドライバーの迦月(かつき)さんの経験です。迦月さんがいうように確かにクルマが突然動かなくなったら、そりゃコワいですよね。
文/航空貨物ドライバー迦月さん 写真/フルロード編集部
*2019年6月発行トラックマガジン「フルロード」第33号より
■いきなり故障で動けなくなる恐怖
航空貨物ドライバーの迦月です。この仕事で一番怖いことって「走っていて突然クルマが動かなくなる」が最たるものじゃないでしょうか。
今は排ガスをはじめいろんな規制で、極端に古いクルマはあまり見なくなったから以前ほどではないと思うんですけど(特に規制の厳しい都市部)、よく「支払いが終わる頃からあちこち調子が悪くなる」と言われるように、古いトラックはいきなり故障で動けなくなる。
あの恐ろしさって、ある程度年数が経ったトラックに乗っているとたびたび経験しますよね。
私が海コントレーラに乗り始めた頃は、まだそんなに規制がうるさくなる前で、メーターが一回りしたヘッドに乗っていた時は、もう故障が出るわ出るわ! 突然動かなくなるという恐怖が、いつもついて回っていましたよ。
オイルのパイプが折れてそこいら中にオイルを撒き散らかして動かなくなる。エアのホースが裂けて一気にエアが抜けて動かなくなる。ラジエターの水がサブタンクに逆流してオーバーヒート状態になる。……といった具合に、あっちを直しても今度はこっちが出るというのが日常茶飯事。本当に参りました。
クルマが比較的新しいからといっても油断はならず、今乗っているクルマでもリコール絡みの原因で2回エンジンが突然お亡くなりになる経験をしています。
突然イヤな音がしたと思ったらインパネの警告灯が赤く点灯する。どんどんスピードが落ちて行って……という、あの恐怖感。乗用車サイズでも充分イヤなのに、乗っているクルマがデカかったら瞬間的に顔にタテ線降りてきますよね(笑)。
とにかく、なんとしてもクルマを路肩に寄せて周囲のクルマに迷惑がかからないようにする。この涙ぐましい努力をトラックドライバーの皆さんは誰しも経験しているんじゃないでしょうか。
私もこの仕事はそこそこ長いんで何度も経験しているんですけど、ただせめてもの救いが、出張修理ではどうにもならない、ディーラーに長期入院するようなトラブルが、空車回送の時だったってことです。
大型のフォークリフトでないと降ろせないような機械ものを積んでいると、替えのトラックを出してもらったって、まともに積み替えもできないじゃないですか。あの時のことを思い出すと、今でも冷や汗がでる思いですね。
■山道で海コントレーラがジャックナイフ状態の恐怖
あとは……、今思い出したんだけど、やっぱり海コン時代のことです。私、神奈川県の津久井(現在は相模原市に編入)のR412で、ジャックナイフ状態から立て直せなくて事故を起こしたことがあるんです。
ただその事故の原因っていうのが、その場所で以前あった事故の後処理が甘くて道路に油が残っていた状態だったらしく、それが降り始めの雨で浮いて来ていたんです。
事故当日、同じ配達先に向かう職場の仲間が、何台か同じルートを通っていて、みんな同じようにジャックナイフを起こしました。そこから立て直せなかったのは海コン2年ちょっとの私の未熟さゆえです。
その時の様子は、立て直せないまま右のフェンスにぶつかり、さらにその先の左側のガードレールを乗り越え、後ろのシャシーはくの字状態のまま道路を塞いで止まりました。
あの辺の地理を知っている人はわかると思うんですけど、ちょっとした山道で、左側は相模湖に続く崖状の林ですね。コンテナは空でしたけど、それでもそんな簡単には止まれなくて、ガードレールを超えて電柱に激突。
ヘッド左の後輪は大木をなぎ倒してタイヤを乗せた状態でようやく止まりました。ガードレールの外側にある電柱が目の前にあったんですよ。実入りのコンテナだったらこれでも止まらず、下まで落ちたかもしれません。
そしてなにより恐ろしいのが、道塞いで通行止め状態になった時に、正面から来て先頭に止まった対向車が重トレだった事です。タイミングが悪かったら重トレと正面衝突で、お互いにあの世行きでしたね。
そんな事故でも私自身のケガは大したことはなく、肩の亜脱臼くらいで済んだのですけど、道は塞いじゃってるし、あの辺りって迂回しようが無いんですよ。重トレなんて、私がどかない限り動けませんから……。
重トレのドライバーの方が様子を見に来て、私は「うわぁー、ごめんなさい!」って思ったんだけど、「大丈夫ですか!?」って声かけてくれて優しかったです、はい(笑)。
そして当時、何時間も通行止めくらったドライバーの方や、八王子方面へ迂回せざるを得なかったドライバーの皆様方、本当に申し訳ありません。
ほかにも裾野(静岡県ね)あたりで、重量コンテナでブレーキ焼いちゃって効かなくなった話とか、今思い出しても怖い話っていくつもありますけど、思い出すごとに頭抱えたくなるんで、このくらいにしておきましょうかね。
ちなみにその津久井の事故現場は、当時の職場の仲間からは「迦月街道」なんて呼ばれました。私がなぎ倒したガードレールは真っ白でキレイな新品に替えられましたけど、ほどなくして新品だったガードレールもベコベコになり、さらにまた新しいのに替えられ、道路には注意を促す赤い斜線のラインが入ったりで、私が事故を起こした痕跡はすでに微塵も残っておりません。
今でもあの道はたまに通りますけど、元々事故を起こしやすい場所だったのよねと思いつつ、今回の私の話は終わりにしようと思います。
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