まとめ
- 日本人の約4人に1人はニッケルや金にアレルギーがあります。
- ヨーロッパや中国では装飾品などへのニッケル使用に制限があるが、日本にはありません。
- ピアスなどのアクセサリーは「ニッケルフリー」の製品を選ぶと安心かも。
「ピアスやネックレスを付けている部分がかゆい!」とお困りの方はいらっしゃいませんか?
もしかしたらそれは「金属アレルギー」のせいかもしれません (参考文献1) 。
皆さんも一度は「金属アレルギー」という言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、どの金属にかぶれることが多いのか、どんな製品にどの金属が含まれているのか、ご存知の方はそう多くないはず。今回はそんな「金属アレルギー」について詳しくご説明していきます。
この記事を書いた医師の名前
やさひふ
Yasahifu
医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士
Lumedia 編集長。怪しい医療情報に惑わされる患者さんを多く見た経験から Lumedia の立ち上げを決意。
皆さんのすこやかなお肌を守るため、Twitter で科学的根拠に基づいたスキンケア情報発信中。
ニッケルや金でアレルギー反応陽性 (+) の方が多い
まず、主な金属に対してアレルギーがある方の比率を見てみましょう。日本接触皮膚炎学会による2016年の調査では、パッチテストという検査で陽性 (+) と判定された方は次の通りでした (参考文献2) 。
ニッケル 24.8%
金 23.2%
コバルト 7.9%
水銀 5.3%
クロム 2.3%
ニッケルや金については、だいたい4人に1人はアレルギー反応陽性 (+) と判定されるのですね。日本人にとって、かなり身近な症状だと言えそうです。
ニッケル・金を含む製品とは?
さらに気をつけたいのは、ニッケルと金は特に女性の方でアレルギーが多いことです (参考文献2) 。
いずれも女性が身に付けることの多いイヤリング等の装飾品などに含まれまる金属なので心配ですよね。
具体的に金やニッケルを含みうる身の回りの製品としては、次のようなものが挙げられます (参考文献3) 。
ニッケル
装身具 (バックル/ガーター/腕時計/時計バンド/イヤリング/ネックレスなど) 、ニッケルメッキ、塗料 (ペンキ/ニス) 、陶磁器、セメント、乾電池、磁石、ビューラー
金
貴金属、金メッキ、金歯
アレルギーをお持ちの方は、こうした製品にニッケルや金が含まれていないかを確認する必要があります。ご自身に合わない金属が入っている製品には触らないように気をつけましょう。全ての製品との接触を無くすのはなかなか難しいですが、特に「暑い季節に長時間接触する」「皮膚が荒れている部位に合わない金属が接触する」ことはリスクが高いので避けるべきです (参考文献3) 。
推奨されるニッケルアレルギー対策
日常的に使う製品にはニッケルが潜んでいるかもしれないことを確認しました。では、ニッケルアレルギーをお持ちの方はどのような対策をとることができるのでしょうか?
アメリカ皮膚科学会は、ニッケルアレルギーの方向けに次の対策を推奨しています (参考文献4) 。
- ピアス/ネックレスなど
⇒ニッケルフリーや低アレルギー性の製品などを選ぶ
- ベルトのバックル/ブラジャーのホックなど
⇒プラスチックの製品などに変える/透明なマニキュアを塗って肌との間にバリアを作る
- ニッケルを含む電子機器
⇒スマホ/ノートパソコン/タブレット端末等に保護カバーをかける
- ニッケルを含む家庭用品
⇒チタンのメガネフレーム/ステンレスのカミソリ/シリコン取っ手付きのフライパン等へ変更
以上の点に注意することで、ニッケルアレルギーの方は肌荒れなどの症状が軽減するかもしれません。参考になると嬉しいです。
日本でニッケルの使用は制限されていない
ちなみに、EU (ヨーロッパ) や中国では「ニッケルアレルギーを減らそう!」と、装飾品や生活用品に含まれるニッケルの量に制限がかけられています (参考文献5) 。特にEUでは「ニッケルの規制が始まってからニッケルアレルギーの方が減った」という成果がすでに報告されています。ニッケル規制がされていない日本やアメリカではニッケルアレルギーは減少していませんから、「日常生活でニッケルに触れる機会が多いとニッケルアレルギーになりやすい」のは確かなようですね (参考文献2) 。
日本は諸外国と比べると規制が遅れているので、ニッケルを多量に含む製品が身の回りにあふれています。私たち消費者は自分で気をつけないといけません。
なお、ニッケルは汗に溶けやすく、溶けたニッケルの成分が皮膚から吸収されるせいで金属アレルギーを発症しやすいと考えられています。対照的にステンレスやプラチナは汗に溶けにくいです。つまり、ニッケル製の代わりにステンレス製やプラチナ製のピアスなどを選んで身につければ、金属アレルギーになるリスクは低めだと思われます (参考文献6) 。ピアスを楽しみたい方は、このことも頭の中に入れておくと良いかもしれませんね。
お困りの場合はいつでも病院を受診して、アレルギーに詳しい医師に相談してください。皆さんが「ご自身にピッタリの」アクセサリーを見つけられることを願っております。
参考文献
COI
本記事について、開示すべき COI はありません。
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