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 トラックの荷物には、ほとんど「必着時間」という配達期限がある。ある程度余裕を持たせているものもあれば、ほんとうに間に合わなければ困るものもある。

 たとえば、工場の装置や部品、原料など、間に合わないとラインが止まってしまうもの。建築現場の工期に合わせた資材など。また、航空貨物などの場合は、荷物が飛行機に乗り遅れてしまうと大損害が発生する。

 事故や車両故障に起因する延着というのは運送会社にとってあってはならない事だが、完全にゼロにすることもまたむずかしい。

 いざというときの車両故障に備えるにはどうすればいいのか。トラックジャーナリストであり現役トラックドラバーの長野潤一氏が考察していく。

文/長野潤一 写真/フルロード編集部・長野潤一
*2016年3月発売「フルロード」第20号より


■トラックもコンピューター制御の時代

 トラックの故障を防ぐには日常点検が重要だ。また、長距離走行時には、休憩のたびに一回り点検をして、タイヤ、ホイール、オイル漏れ、異音、異臭などをチェックすることも重要である。

 しかし、最近のトラックはコンピュータ制御のため、警告灯の点灯などのほとんどは運転手が見ても修理のしようがない。そのため、3カ月点検整備(軽貨物を除く事業用貨物と、GVW8トン以上自家用の法定点検)は入念にしておく必要がある。

 それでもコンピュータ警告は突如やってくる場合がある。特に365日酷使しているクルマならなおさらだ。DPF(DPD)の燃焼など、環境対策の装置に異常が出ることもあり、また「エンジンチェック」のランプがつくこともある。

 警告ランプが点灯しても短距離ならば走れることもあるが、放置して走行すると故障が進み、莫大な修理費が必要になることもある。

 車両のコンピュータ(ECU=ElectronicControlUnit)から発せられる「故障コード」は、修理工場などにある専用のスキャンツールに接続しないとわからない。

 しかしながら、いすゞギガに標準装備されたテレマティクスシステム「MIMAMORI」など、稼動している車両の状況把握がデータ通信により可能となった。今後、こうした方向は進んでいくだろう。

 また、エンジン、ミッション、駆動系、電装系、タイヤバーストといった物理的な故障もあるが、できれば高速本線上での停止は避けたいところ。運よくパーキングエリアかインターチェンジ、非常駐車帯までたどり着くことができればよいのだが……。

■最優先は二次的事故の回避 直らなければ荷物の積み替え

 故障の際の対処だが、まずは二次的な事故を防ぐことが最優先。高速道路での故障の場合は、非常電話または道路緊急ダイヤル(♯9910)に電話し、車種、キロポストなどの一報を入れる。

 道路管制センターは交通管理隊を出動させるとともに、後続車に知らせるために情報板に表示を出してくれる。同時に、最寄りのレッカー業者を紹介してくれるが、料金等はレッカー業者との直接話し合いになる。会社で契約しているレッカー業者があれば、そちらを利用してもよい。

 いずれにしても、ドライバーが決めるのではなく、自分の会社にまず報告し、会社に手配を頼むとよい。その後も、全て会社の指示に従う。ドライバーは情報を的確に会社に伝える必要がある。

 また、故障が確定した時点で、会社は荷主にすぐに事実を報告する必要がある。悪いこともすぐに伝える、それが信頼を得る方法である。荷主の側からも荷物の緊急度に応じて、指示があるはずだ。

 さて、レッカーでひとまず安全な場所まで移動した後の話であるが、通常は修理対応可能なディーラーか修理工場まで運んでもらうことになる。

 クルマがすぐには直らない、あるいは荷物が絶対延着できない場合には、応援の車両を用意して荷物の積み替えが必要になってくる。積み替えが可能なものと不可能なものがあり、また駐車場のスペースによる可否もある。

すぐに直らず積荷が残っていた場合は応援車を送り、迅速に積み替えを行なわなければならない

 手積みのケース物の場合は、観音扉を開けて車両後部どうしを合わせ(いわゆる「ケツ合わせ」)、大型車でも1~2時間程度で積み替えられる。しかし、道路上では12m車のUターンは厳しいため、倉庫や駐車場のような場所が必要になる。

 ウイング車でのパレット物の場合は、積み替えにフォークリフト(1.5~2t程度)が必要になる。フォークリフトは自社にあっても、運搬にはセルフローダーが必要でなかなかむずかしいところ。

 昼間ならば、フォークリフトのレンタルサービスを頼むことができる。また、レッカー業者がフォークリフトを持っている場合もある。積み替えは、ディーラーや修理工場の敷地内なら許可を得ればOKであろう。

 また、パレットには二方さしと四方さしがあるが、四方さしなら車両後ろ側からもさせるので、応援車にハンドリフトと鉄板を積んで行き、エアサスで傾斜を調節してやれば、「ケツ合わせ」で人力による積み替えも可能である。

 積むときから、どういうパレットなのか見ておくことも必要だ。また、最近は路線系の運送会社でも、床全体が電動で前後に動くオートフロアーが増えている。故障車、応援車ともにオートフロアーでパレット積みの場合は、車高を調整してスイッチ操作で積み替えということも可能。

 だが、バラ積みの場合は車両の継ぎ目を荷物が乗り越えられないため、人手による積み替えが必要となる。トレーラの故障の場合は、ヘッドを交換しそのまま目的地まで走行ということも可能だ。

■いざというときに役立つ会社同士のネットワーク

 さて、応援車を手配するといっても、たとえば東京―大阪間を走っている場合など、よほど大きい運送会社でない限り、すぐに近い場所から応援車を手配するということはできないだろう。

 そんなとき役に立つのが、運送会社間のネットワークだと思うので提案したい。運送会社は圧倒的に中小企業が多いわけだが、そんな中でも効率的に荷物(帰り荷等)をやり取りするための運送会社どうしのネットワークがある。

 たとえば、JL日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会などがそれだ。関東、中部、近畿、あるいはそれ以外の地方といった枠を超えて、何度か取引をしているうちに信頼関係ができて来る。

 そこで、緊急時にも協力しあうという約束をあらかじめしておけばよいと思うのだ。運送会社の経営者や配車係はたいてい24時間携帯電話で対応可能なもの。

 運悪く、トラックやドライバーがあいていないということもあるかもしれないが、数社と協力関係を結んでおけば、自社のトラックを今から出していては到底間にあわないという場合でも、だいぶ心強いはずだ。

 トラブルがあった際は、まず荷主に現状を正直に報告し、物流企業として協力して打開策を探って行くことが必要だ。数千回か数万回に一度起こる故障かも知れないが、それすらも克服して定時にモノを届けなければならない、そんな時代に来ているのかも知れない。

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