公益財団法人がん研究会 有明病院(がん研有明病院)と Google は AI を活用した乳がん検診の研究に向けて共同研究契約を締結しました。
Google は、これまでに米国と英国の専門家と共同で、検診用マンモグラフィから乳がんを特定するための機械学習モデルを開発し、2020 年に学術誌「Nature」に発表しました。今回の共同研究では、この機械学習モデルの有効性を検証し、日本における乳がんの早期診断と疾病管理の発展を目指します。
乳がんは、日本で最も罹患率の高いがんの一つであり、日本では毎年約 9.5 万人、世界では約 230 万人が診断されています。一方で、乳がんは、早期発見によって、命を落とす可能性が非常に低くなることが報告されています。このことから、乳がん検診プログラムを通して、乳がんを早期にかつ正確に診断することは、効果的な治療を提供するために重要な要素です。しかし、日本では検診率が 45% 程度と低く、改善には、実際に受診する人数を増やす施策だけでなく、それを受け入れるためのマンモグラフィ検診における医療基盤の拡大が必要となります。AI を用いた乳がんスクリーニングシステムは、乳がん検診プログラムと医療基盤に貢献し、早期での乳がんの診断に役立つと考えられます。
今回の共同研究では、2007 年から 2020 年の間にがん研有明病院乳腺センターおよび健診センターで撮影され、適切な匿名化を施し個人が特定不可能な約 2 万人の女性のマンモグラフィを使用し、機械学習モデルのパフォーマンス分析を行います。これらのマンモグラフィ画像は、本共同研究での利用のみを目的として、高水準のセキュリティを有する Google Cloud に暗号化した上で保管されます。
本共同研究に関して、内閣府の AI ホスピタルプロジェクトを率いる公益財団法人がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長 中村 祐輔氏は、以下のように述べています。
「新型コロナウイルス感染症の影響でがん検診率が低下してきています。乳がんは早期に見つかれば治癒する確率が非常に高いがんです。がん検診に AI 技術を利用することは、多くの方が検診を受けても、診断の精度を保ちつつ、放射線科診断医の負担を軽減することにつながります。Google と協力して、この取り組みを円滑に進め、全国どこにいても乳がんで命を落とさない未来を創造できればと考えています。」
Google は、本日発表した共同研究が、日本、そして世界の乳がんの早期診断と疾病管理の発展に貢献するよう願っています。